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いや、ここどこだよ

 その日は何でもない日だった。

 朝から通勤電車に揺られて、嫌々会社に行って仕事をして。

 上司に怒られて頭を下げて。

 夜8時を回ってやっと会社を出て駅に向かっていた。

 そんなはずだった。


 それなのに、目の前の光景は何だろうか。

 豪奢なインテリアの数々が置かれ、高い天井のある部屋の中で、私こと真中マナカ リンはたくさんの男性に囲まれていた。

 その男性たちはいわゆるRPGに出てきそうな格好をしていて、皆金髪に青い瞳、白い肌をしていた。

「やっと召喚に成功したぞ!」

 そんな声が上がったと思えば、私を見た人々はピタリと声を止めた。

「え、女?」

 どよどよと辺りがざわめく。

「え、なに」

 呟いた私の声など誰にも届かず、ざわめいたまま、1人の男性(30代くらいだろうか)が近づいてくる。男性の役職は騎士だろうか。腰に剣も差しているし、そんな感じがした。

「黒髪、黒目、黄色い肌、まあ条件は満たしているな」

 高圧的な態度で私を見やる目に、私はゾッとした。

「隊長、結果が出ました」

 20代くらいの占い師のような見た目の男性が水晶玉のような物を見ながらそう言うと、私の前の男性が振り向いた。

「そうか!で、どうだ?結果は」

 少し輝いた目で隊長と呼ばれた男が聞くが、占い師のような男性は首を横に振った。

「無と出ました。おそらく、チートスキル無しでしょう」

 はあああーと隊長は長い溜息をついた。

 そして、再び私に目をやった。

「おいお前」

「は、はい?」

「どう責任取ってくれるんだ」

「は?」

 私が怪訝そうな顔をすると、隊長はイラついたように舌打ちをした。

「ふざけるなよ!この召喚にどれだけのコストと時間がかかったと思っている!勇者となるチートスキルを持つ人間を召喚するためのたいっせつな儀式だったんだぞ!?だというのに、お前のような何も持たない女が勝手にしゃしゃり出てきて迷惑だって言っているんだ!」

 いきなりの怒声に私は思わず身体が硬直した。

 理不尽すぎる。

 それに何だって?召喚?

「元いたところへ帰してください」

 やっと絞り出した声は、隊長の鼻息1つで片付けられた。

「お前を叩っ斬ってやれば、少しはスッキリするかもな」

 隊長は腰にぶら下げた剣を引き抜こうとした。

「まあまあ待ちなさい」

 隊長の肩にぽんと手を置いて制したのは初老の男性だった。役職は僧侶だろうか。わからないけれど。あんまりRPG詳しくないんだよね。

 僧侶は何やら隊長に耳打ちをし、隊長はうんうんと頷きながらこちらを見てニヤニヤしている。

 気持ち悪い。

 隊長は先ほどと打って変わってニコニコと私に手を伸ばすとこう言った。

「先ほどはすまなかった。急にこんなところへ呼んで申し訳ない。もてなすからこちらへ来てくれ」

 ぐいっと私の手を引っ張る力に、拒否権がないことがわかった。



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