第4章
それから僕達は週に1回は会うようになった。光希は大学のそばに一人暮らしをしていたので、僕がそこに通って会うようにした。僕は光希のマンガ制作をアシスタントのように手伝うこともあった。マンガを描くには、背景を描いたり、陰影、効果をつけるスクリーントーンを貼る作業など結構地味な作業があり、手間と時間がかかる。僕は、そういう地味な部分を手伝った。同じ部屋で二人で作業をしていると、一体感のようなものを感じた。「聡、今日は聡がご飯作って?」
「え? 昨日も僕だったじゃないか」
「だって聡の方が料理上手いんだもん。美味しい物が食べたいなあ」
「かしこまりました、お嬢様。今日は何をお召しになりたいですか?」
「うーん、美味しい牛肉!」
最初は本心を見せなかった光希も、打ち解けて僕には素の面を見せ、意外と子供っぽいところがあって可愛かった。部屋では光希がよくクラシック音楽をかけ、その美しい調べが響く空間は心地が良く、光希と共に過ごす時間は僕にとって充実したものだった。
その夏には光希のスパイ物、僕のファンタジー、それ以外の仲間の作品を集めて同人誌を発刊した。コミックマーケットにも出店した。そんなに売れることはなかったが、皆で作品を描きながら本を作ることは、自己満足な面はあるがそこにもちょっとした達成感があった。
「次は何を描くの?」光希の部屋に寝ころびながら僕は彼女に聞いた。
「うーん、まだ決めてないけど、もう1本、この前のスパイ物のシリーズを描きたいかな。聡は?」
「僕はまたファンタジーかな」
「次はいつ出すの、同人誌?」
「冬のコミケに向けて出すのがいいんじゃない?」
「そうだね」
「そうだ十一月にうちの大学の学祭があるから来ない?」
「何があるの?」
「先輩が美術をやっていて、その展示がある。後、ライブとかもあるし」
「楽しそうね。行くわ」