ずっと、変顔の女
掲載日:2021/12/08
「写真、撮ろうよ!」
僕は、勇気を出して言った。
友達に、頼まれたからだ。
「いいよ」
「ありがとう」
彼女になる、一歩手前。
そんな、美女だ。
そんな美女と、一緒に写真を撮る。
でも、本当に美女なのか。
正直なところ、よく分からない。
なぜなら、常に、顔が疲れてしまうほどの、本格的な変顔をしているからだ。
隙なんてない。
いつ見ても、クシャッとしてる。
シワが心配になるレベルで。
「じゃあ、撮るよ」
「うん」
「3・2・1・ハイッ」
「撮れた?」
撮る瞬間、彼女の顔が、一瞬だけ普通に戻った気がした。
横目ではあるが、窮屈そうな顔が、一瞬だけ和らいだ。
そう感じた。
写真を撮るときに、変顔になる人はいる。
でも、彼女はその逆だ。
ハテナが、頭を駆けめぐり続けた。
変顔は、明らかに作ってる。
楽そうではない。
だから、あの変顔を、正常顔とするのは、やや無理がある。
余計に、分からなくなってきてしまった。
撮った写真に、目を移す。
「私、キレイに撮れてるね?」
「うん。そうだね」
そこに映っていた彼女の顔は、いつもより、ほんの少しだけ、マイルドになって見えた。
ずっと変顔でいる彼女の、素顔をまだ僕は知らない。




