949話 唯一平気な者
初めて"ニオイ系"で防衛に回らされたため、困惑中のメグミはさておき、<闇神>→<糞神>化の影響は討伐軍にも及んだ。
敵の行動を把握するべく常時探知していた中級神が、突然鼻を抑えてうめき始めたのだ。
「臭いっ! 臭いぃ〜〜〜〜〜っ!」
彼等は闇神の隣のミッションルームにいるため、壁に穴を開けたら、物理的に臭うのも仕方ない。
しかし残念ながら、壁に穴はないし欠陥工事で隙間があるという訳でもないので、純粋に「闇神の"汚臭バラ撒き能力"が上がった」だけである。
「どうした!? しっかりしろ!!」
「ダメだ……。鼻の穴に栓をして、防臭結界もかけたのに……糞のニオイが脳を焼く…………! この臭さっ、耐えられない!!」
そう述べた哀れな監視者は、闇神の探知を続けられなくなり、白目をむいて口から泡を吹き気絶した。
ついでに下半身の穴から糞尿まで漏れてきて……<糞神>に感染した<リアル糞野郎>となり、心配される立場のはずが仲間に距離をとられる。
「うわ、臭っ!!」
「お前まで漏らしてんじゃねぇよ! おぃ、冗談じゃねぇって。この部屋、閉め切りなんだぞ!!」
「解放されている方がヤバイだろう! 隣に闇神いるんだぞ!」
「そうだ。窓付きだったら、別の意味でヤバイ! たぶんコイツの糞以上に臭うもんが、窓を経由してコッチへ流れてくる」
いい歳した大人に漏らされてパニック状態に陥った中級神達だったが、彼等がいるのは、悪臭ダンジョンとして有名な<恵のダンジョン>。
すでに糞尿沼でよりヤバイ「大人の糞」のニオイは嗅がされたので、その中を走らされた闇神程ではないにしろ、悪臭には耐性ができていた。
逆に言うと……耐性持ちですら耐えられないウンコ臭を、直接接触した訳でもないのに放つ、闇神の悪臭体質のヤバさよ。
強制改名で体質に目覚めた直後でコレだから、元から才能……という名の「汚臭体質」は持ち合わせていたものと思われる。
防御力の低いメグミ達や中級神ほどではないにしろ、<糞>の脅威は、スカベンジャースライムの中にいる上級神達の元にも届いていた。
「誰だよ、密閉空間で屁をこいた奴は? ただでさえ闇神の糞で臭いんだから、屁でトドメ刺しにくるな」
「そもそも、上級神なんだから屁なんてこくなよ。そういうのは、下賎な者と闇神だけの汚活動だぞ!」
酷い言いようだが、実際……上級神は屁も糞も出さずに体内でエネルギーを消費し切れるため、無理難題ではない。
じゃあ、なぜ闇神がブリッているのかって?
あれは「体内に入れちゃダメな汚料理を下からブチ込み、ケツに火がついた結果」だ。
闇神だって、通常は「男としての活動中に<ピー>する」以外、屁も糞も鼻水も出さない。
しかし……特にブリる理由もない上級神が密閉空間で屁をこくのは、恣意的な公害であり迷惑行為と言えた。
もちろん実際のところ、味方を後ろから刺す気満々のクソ神はいても、リアルにブリる糞神はいないため、ただの冤罪である。
そして幸か不幸か、サボり癖があって闇神の監視を他者任せにしていた神がいたことで、「臭いの源」はスライム内にいないと判明。
「なんだ。ついに遠方からの監視でも臭うようになったのかよ。あのウンコ神……マジで臭ぇな」
監視による二次被害は避けられた神々も、メグミのありがた迷惑な献上物のせいで、闇神のウンコ臭は嗅ぎ慣れているため、ここぞとばかりに罵倒。
それから、耐えられない程ではないが臭い闇神の監視係を誰にするか、再度"押しつけ合い"が始まった。
では諸悪の根源である「存在ウンコ」の闇神が、このリアクションを受けて何を思ったかというと……普通に歓喜。
彼は根っからのサディストであり、すでに「自分の糞を嗅がれるのを恥ずかしがるフェーズ」は乗り越えたので、仕掛けが上手くいき「ザマァ」と内心喜んでいる。
もちろん、表に感情を出すことはない。
そんな事をしたら「意図的にやった」のがバレて、真面目に対策を練られてしまうからだ。
「(くくくくくっ! 爽快、爽快〜。私だけ、理不尽に苦しむ展開が続いていたからのぉ。ここら辺でバチが当たらなければ、不公平だろう)」
大人が自ら糞のニオイを嗅がせる方が余程理不尽だが、そんなこと闇神は気にしない。
メグミが労働教に目覚めたように、闇神もまた糞教への目覚めが控え、羞恥心が薄れているのだ。
では、この開き直った闇神に太刀打ちできる猛者はいないの?
いや……一人だけいる。
生きていた頃から、闇神の臭い<ピー>を嗅がされまくって汚物耐性を極め、ゾンビになった現在……
彼への恨みでさらに耐性が強化されている、"口裂け女"が。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






