943話 献策させていただきます
〜アスタリアside〜
討伐軍・上級神達の波状呪術攻撃は素晴らしかったのだが、闇神の優れた防御力によって、2つ目の呪い以降は全て防がれてしまい……
それがお決まりの"仲違い"に繋がって、現在またスカベンジャースライムの中でモメている。
さすがに大暴れして、乗り物兼バリアのスカベンジャースライムが壊れると彼等自身が困るため、殴り合いや魔法の撃ち合いには発展していないが……
この様子じゃ、闇神を葬ったあとも地獄世界は荒れて、戦国時代の様相を呈するでしょうね。
『チッ! 下手くそかよ。これだけ効果的な供物がある状況でヘロヘロの闇神に防がれるとか、それでもテメェ等……上級神か?』
『仕方ないだろう。一発目の着弾は無警戒で済むが、闇神レベルの術者に二発目以降を当てるのは困難だ。単に、攻撃順による違いでしかない』
『そうだ! そもそもの話……お前の呪術がもっと効果的だったら、闇神が大ダメージを受けて防御に回す余裕もなくなったのに……!』
『唯一成功した呪術がゲロ便生産じゃなぁ〜。不快感満載の呪いには違いないが、物理的なダメージは少ないから、咄嗟の防御が間に合っちまう』
上級神達がこれだけモメているのには、実力差や呪術の得意・不得意……そして、どれだけ呪術にリソースを注いだかが、大きく異なるからだ。
唯一、闇神にダメージを与えられた「一時的に、消化物の進行方向が逆転する呪い」は、呪術が得意な上級神が充分なリソースを注いで生み出したもの。
供物の下痢便も、一番固形物の量が多く腸壁細胞が最も含まれているものを使って、なおかつ術の特性を"スピード特化"に振り切っている。
その代償として「直接的な殺傷力」は抑えざるをえず、一見すると「子供が考えたイタズラ」みたいな呪いになった訳だが……
「(スピード特化であの効果を出せれば、充分よ。警戒薄めだったとはいえ、常時張られていた結界を一瞬で切り裂いての着弾だし)」
だがそれでも他の神々から見れば、「一番手と最上供物を譲ったにも関わらず、この程度の成果。しかもソレを鼻にかけて自慢気」と映るわけで……
反発は避けられず、攻撃に成功した神が「数的に少ない=マイノリティー側」という事もあり、功績を認めず責める方向へ話をもっていこうとしている。
だが当然、一発目に着弾させた神は「頭一つ抜けて上手い呪術者」なので、反撃もすさまじい。
『ふざけんなっ! 一発目の役割は、闇神が常時展開していた防御結界を貫き、僅かでもダメージを与えること。それ以降はテメェ等の仕事だ!!』
この主張は本当に"その通り"であり、波状攻撃にも関わらず二撃目以降が決まらなかったのは、間違いなく"それを撃った神々自身"の責任。
防御結界の構築スピードを見る限り、闇神がダントツで呪術に秀でているため、そうなってしまうのも仕方ないのだが……
自らの責任を棚に上げて初動を成功させた神を責めるのは、お門違いだ。
このままだと話が長引くので、適度な場面で「仲裁に繋がるメッセージ」を送ろうかと、思案していたところ……
メグミ君が容赦なく"追加の差し入れ"を送り、彼等の口を物理的に塞いだ。
「(箱に入っているとはいえ、あのゲロ便……相当臭いそうね。口論すると呼吸も荒くなってアレを嗅いじゃうから、黙るしかない……のか)」
そして間接的な、「呪術攻撃、もう一発ヨロシク」要求。
供物として有用なモノを、この状況で捨てるわけにもいかないし……ご愁傷様デス。
『ハァ〜。こんなの、もはや"闇神"じゃなくて"糞神"だろう。糞攻撃しか、してねぇじゃねぇか』
『たしかに、ある意味強烈な攻撃だよな。いっそのこと、<糞神>に改名したらいいのに』
味方内で向けあっていたヘイトのベクトルを、半強制的に闇神へ向けさせられた上級神達は、ゲロ便のあまりの悍ましさに目の光を失い……
ついには闇神の名前を貶めることで、ままならぬ現状にイラつく心を慰める、三流サラリーマンのようなムーブをかましだした。
「だけど、案外ソレって有効打になるんじゃない? 強制改名される呪いでもかけて<闇神>を<糞神>に変えれば、神としての特性にも影響が出るはず」
元々その気はあったものの、<働神>になって以降、より社畜思考とありがた迷惑な布教活動が増した、メグミ君がいい例だ。
基本的に名は「その神の本質」を表わしているため、強制改名で本質を<闇>から<糞>に変えることができれば、闇神が受けるダメージは計り知れない。
そしてコレは呪術的な観点から見ても、「直接命を奪うようなもの」じゃないうえ、闇神の本質を突いている名称だから、必要とされるコストが少なく……
実力者が仕掛ければ、スピード特化にも持っていける類の呪いだと思う。
「ダメ元で、献策してみようかしら? どの道、あの"ゲロ便"を使う必要がある訳で……ふふふふふっ♪」
私の名前でメッセージを送ると、文面"ウンコ乱発"で女としての社会的命が終わっちゃうから、この先は全部モンティート先輩に押し付ける!
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






