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939話 要るけど要らないプレゼント


〜メグミside〜




 眉を顰めて、スカベンジャースライム内部の匂いをクンクン嗅いでいた上級神達は、諦めてスライム内に結界を張り……


 部下の<ピー>で生臭くなった中古スライムを、乗り物として使うことに決めた。



 しかし耐え難い屈辱なのか、スカベンジャースライムが動き始めてもなお、少しでも環境改善する糸口を探している。


「ふむ。折角だし、課金提案をしてみるかな」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


スライムバスをご利用くださり、誠にありがとうございます。


このバスは、外の肥溜めから身を守りつつ安全に進める、討伐軍の神様専用の乗り物となっております。


ただ、大変申し訳ないのですが……突貫工事でダンジョンを創ったとき予算を全て使い切ってしまい、財務状況が厳しいため……


スライムバス内の居心地については二の次で、安全性の確保を優先しております。


もし上級神様の格に相応しいプライベート空間の確保をお望みの場合は、こちらのカタログから簡易神殿をお選びいただき、個別でご購入ください。


スペースに限りがあるので全員分は無利ですが、費用面の問題さえ解決すれば、可能な限り皆様の心に寄り添い、快適なバスの旅をお届けする所存です。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






 いわるゆ、「特別扱いを金で買うプラン」の提示……特殊な状況を利用した、ボッタクリ戦法である。


 マサルが日本で暮らしていた頃、空を飛んでいたという"飛行機"の利用者の中にも、同じ目的地へ行くだけなのに10倍の金を払う猛者がいたらしい。



「"ファーストクラス"って言うんだよ。地上なら3万円で食える飯を上空で満喫し、一般人の6倍のスペースで数時間寝るためだけに、大金を払うシステム」


「レストランとかでよくある、"貴族席"に近い概念だね。僕が住んでいた国にも、チップをはずむ貴族しか入れない銭ゲバ仕様の個室とかあったよ」



 目的地へ行くだけ……飯を食うだけなのに……なぜか知的生物はその過程に特別感を求め、他者より有利に立ちたがるのだ。


 特に、同格のライバル認定していた奴が自分よりいい思いをしていると、自分が損したわけでもないのに悔しくなる。



「見栄とわずかな快適性のために大金を支払うなんて、僕には考えられないや」


「安心しろ。俺も、綺麗なお姉チャンを求めて娼館巡りをしたとき以外、僅かな差のために金を払おうなんて思ったことねぇ」



 チン騎士勇者なのは相変わらずだが、案外庶民派のマサルが「金持ち生粋の課金システム」について指南してくれるため、サクサク仕事が進む。


 僕が渡したカタログに載っていたのなんて、ただ美しい布で作られただけのテントなのに、アッと言う間に購入可能枠が全て埋まったよ。






「くくくっ、エゲツねぇなぁ〜。10神中8神しか個室テントにありつけないうえ、大きさとか場所にも格差がある。こりゃあ、中でモメるわ」


「早速、嫌味合戦が始まったね〜。ギリギリ"一人用テント"を確保できた神様も、設置場所が"中級神達のオ○ニールーム"跡地だから、不満タラタラだし」



 特に押し売りした訳でもないのに、見栄の張り合いで、高級ベッドやソファーが飛ぶように売れていく。


 上級神達の降車後、スカベンジャースライムに食わせれば"お片付け"は簡単だし、定価の10倍近いボッタクリ価格でも買ってくれるのだから……


 コチラとしても文句はないけど、思わず「正気?」って言葉が飛び出しかけたよ。



「気を利かせようとしたものの、頭が悪すぎて適切なスペース配分まで考えが回らなかった……と解釈される点が、秀逸だな。で……そろそろ行くか」


「うん♪ 上級神達のギスギス感が一段落したら、さっき闇神が出した"下痢便"を、"出来立てホヤホヤ"の状態でスカベンジャースライム内へ差し入れる」






 一応、建前はちゃんとあるんだよ。


 長らくの間、地獄世界の最大派閥主として君臨してきた、上級神<闇神>のDNAデータなんて、ほんの少しであっても採取困難だし……


 呪術で使う供物として捧げるのに充分な量を確保するのは、不可能に近い。



 だけど、この下痢便には腸壁の細胞が含まれているから、DNAデータとして使えるし、供物にできるだけの量もあるのだ!


 「臭い・汚い・キモイ」ことを除けば、闇神にトドメを刺したがっている上級神達にとって、非常に喜ばしい"差し入れ"と言えるだろう。



 ただ実際のところ、攻撃材料にできるからといって、"密閉空間"に"ウンコの差し入れ"なんて要らないじゃん?


 特に、ボッタクリ価格で買い揃えた布製品を保有している神々にとって、耐えがたいニオイがついてしまう汚物爆弾投下なんて……


 ありがた迷惑以外の、何ものでもないよね〜。



 そして……もしそうなったら、先程まで自分用のテントを確保できずヒエラルキー下位扱いされていた、不遇な上級神達は……


 "勝ち組"になったはずなのに、それが逆に自分の首を絞める結果となった、高額課金者達をあざ笑い、スライムバス内の空気はさらにギスギスするのだ!

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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