934話 そこが何処か思い出せ!
メグミは「厄介な人材が、募集してもいない採用面接にやってきた」程度の扱いで流したが、彼等の直属の上司である上級神達はそうもいかなかった。
精神的に追い詰められての発言とはいえ、これは明確な"裏切りの予兆"であり、こんなものを許してしまっては派閥が立ちゆかないからだ。
「今すぐ全員に<働神の加護>を強制付与して、闇神に特攻させ消すべきだ! 闇神とて、自分のことを"ウンコ上司"呼ばわりした連中に容赦はするまい」
「いや、<働神の加護>はマズイだろう。その時点でメグミの息がかかる事になり、働神の管理下に置かれるも同然! 奴等の裏切りを助けるようなものだぞ」
「だからといって、あそこまで疲れているタイミングで出た言葉は間違いなく"本音"。つまり奴等は戻ってきても造反予備軍であり、派閥には置けないゴミだ」
「それは俺も分かっている。あのクズ共は、遺恨を残さぬためにも<恵のダンジョン>内ですり潰さなければならない。だが、何事にも順序があるだろう」
「しかし、あんな事を言われて許せるわけが……っ!」
「堪えろ! 俺だってムカついているし、今すぐ直接出向いて制裁を下したいが、<恵のダンジョン>到着までにはまだ時間がかかる。現実を見ろ!」
全員「一方的に部下に裏切られた哀れな上司」気取りで、被害者ムーブをかましているが、ただの自業自得である。
だがそれに気付かないからこそ、ここまで成り上がり……そして現在、糞まみれの闇神と比較されるハメになっているわけで……ツッコむ意味はないだろう。
「お前達、少しは冷静に考えろ! そもそもの話、あのクズ共を<恵のダンジョン>内で粛正するのは無理だ」
「「「「「「「「「何故っ!?」」」」」」」」」
「<恵のダンジョン>は、働神<メグミ>の腹の中だぞ? そんな所で奴等を始末したら、奴等の魂を構成するリソースが全てメグミのものになる」
「「「「「「「「「あ……っ! それはマズイな」」」」」」」」」
怒り狂っていたせいで、冷静な者に指摘されるまで気付かない神々もいたが……そうなのである。
中級神達が今いる場所は、働神<メグミ>が管理する<恵のダンジョン>の中であり、そこで死亡した者のエネルギーはメグミに回収されてしまうのだ!
ゆえに気軽に粛正なんかしたら、彼等のリソースを棚ぼたゲットできたメグミが、ますます富むだけであり……
怒りに任せて粛正した上級神達は、合法的にメグミにリソースを奪われて、一方的に損をするハメになる。
「メグミと交渉して、奴等のリソースをこちらに渡すよう迫れば……いや、ダメだな」
「あぁ。無理に決まっているだろう。よりリソースを取り込んで狂い咲いたキチガイから、大量の"お詫びの品"……と言う名の"呪符"が届くだけだぞ」
もしメグミが話の通じる相手だったら、上級神達もいつものように高圧的な態度で強気に迫り、お得意の搾取パラダイスを繰り広げただろう。
しかし根本から狂っているうえに、殺傷力抜群な労働布教癖を併せ持つキチガイ相手に、交渉でどうにかなる……と思える"頭お花畑"は流石にいなかった。
「ハァ〜。八方塞がり。結局、俺たちはどうするべきなのか」
「とりあえず、<恵のダンジョン>に向かいつつ考えよう。リソースの行方を抜きにしても、今"足止め役"を担っている中級神共を殺すのはマズイ!」
「そうだな。直接出向いて我々が闇神にトドメを刺し、そのうえであのクソ共を誅殺して、ダンジョンに吸い取られる前にリソースを回収するべきだ」
遠隔での報復が不可能と分かり、肩を落としながら「現実味のある解決策」を提示した、討伐軍・最年長の上級神。
しかし彼も、<恵のダンジョン>内がどれほど不潔で居心地の悪い環境かは、理解しているので……その表情は暗い。
「まさかとは思うが、我々も闇神と同じ"不潔飯"を出されるのでは?」
「それ以前に、肥溜めフロアをどうやって通過する? スカベンジャースライムに乗って進めば、直接的なダメージは受けずに済むが……」
搾取体質ではあるものの、全員バカではないため理解できてしまうのだ。
自分達が向かっている先が、「敵ではないものの、それよりヤバイ狂神の腹の中」であり、自分達が格相応の扱いを受けられる場所じゃないと。
なんせメグミは、敵である闇神はおろか……当初は格上だった中級神達にも、スカベンジャースライムしか与えないという塩対応をくらわせ……
不潔クッキング動画を見せることこそなかったものの、現在も"平等に"激辛料理を提供している。
そして、言い聞かせようにも根本から狂っていて話が通じない!
「ハァ〜。こんな事になるなら、闇神が<恵のダンジョン>へ逃げ込む前に決着をつければ良かった」
「そうだな。なぜ上級神たる我々が、肥溜めの中で戦わねばならぬのか……。後悔しても、し切れぬわ!」
毒をもって毒を制す。
死ぬほど「行きたくない」と思う現場へ部下を放りこみ、ちょっと悪口を言われただけで粛正しようとするような鬼畜には、狂神<メグミ>がお似合いだ。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






