927話 バイトテロ
見ている側は、まだ「うわっ、キモ過ぎっ! 自分は絶対に、こんなクソ料理食べたくない!」と思うだけで、終わるだろう。
しかし目の前に大皿山盛りの激辛料理を置かれ、そのクッキング動画(笑)を見せられた闇神は、堪ったもんじゃない!
<−−− ホジホジホジ……ブチッ! −−−>
「ちょっと待て、食材の前で鼻をほじるな! おぃ、鼻毛を抜くんじゃない! はぁ!? 今抜いた鼻毛を、唐辛子の中に捨てたな! 私が食べる物だぞ!?」
食材の下拵えを任されたオークキングが、手も洗わぬまま野菜を切り始め、途中で鼻ホジからの鼻毛抜きコンボをキメた。
ちなみに……抜かれた鼻毛には、汚い鼻水がトロ〜リ。
そして拡大すると、毛根までしっかり付いている。
『オラは、キレイ好きなオークキング! デンタルケアは怠らねぇ!』
<−−− カリッ、カリッ、カチッ、カリッ…… −−−>
そして肉の下茹で中に、メグミの自販機で買えるデンタルフロスを使って、丁寧に歯垢を取り除き……それを下茹で中の湯で洗浄。
オークキングにとっては「どうせ捨てる水だから構わない」が、「下茹で中の肉を食わされる」と勘違いしている闇神は、クッキング動画を見て発狂。
「うがあぁぁ〜〜〜〜〜っ!!!? 歯垢は断じて料理じゃない! 熱湯殺菌されたとか関係あるか! そんなキモイもん、食えるわけないだろう!!」
発狂して喉がカラカラに乾いたところで、料理提供用の小窓が空き、水分補給用のドリンクが投げ込まれた。
もちろん、メグミが「労働教の布教活動」以外で敵に塩を送るわけない。
投げ込まれたドリンクは、"サルの絵"が描写された「なぜかフタを開けられた形跡があるバナナドリンク」という、飲めたもんじゃない代物になっている。
「ウッキィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
非言語による追撃の罵倒砲をくらい、発狂した闇神を嘲笑うかのように、クッキング動画は流れ続けた。
『オレ……昨日<ピー>してから、なんか股がかゆいンダ』
『それ、性病ってヤツじゃねぇノ? 俺もイマ、4つ持っていル』
下拵えの手伝いに来たもう一体のオークキングと、聞くだけで嫌悪感が湧き出る会話を、デカい声で唾をペチャクチャ飛ばしながら繰り広げ……
話の流れで、「かいぃ〜」と股を掻き出した。
「いや、さすがにあり得ないだろう。料理だぞ! 性病発症中の股を掻きむしった手で、野菜を触るなんて……ぬおぉ〜〜、チ○毛が付いている!!」
闇神だって上級神ゆえにやたらと丈夫だっただけで、オーク以上に女性を抱き潰しているのだから、他人のことをとやかく言えた義理じゃない。
しかしさすがの闇神も、生野菜にチ○毛が付いた状態でみじん切りの工程に入られたのは、許容できなかった。
そしてオークキング達のキモハラ攻撃は、股ボリだけじゃ終わらない。
『ちなみに俺は、肛門がカリフラワーになったゼ。これ、ヤバイ気がすル』
<−−− ボリボリボリボリガリガリボリボリボリ…… −−−>
尖圭コンジローマに罹ったとしか思えない告白をしながら、ボリボリと尻の該当部分を掻いた、オークキングは……
クンクンと匂いを嗅いだあと、洗うことなくその手で合挽き肉をこねてハンバーグを作り始める。
「ぬおぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!?」
闇神の目の前には、激辛スープの中央にデカデカと浮かぶハンバーグが。
実際のところそのハンバーグは、オートマタが衛生的な環境で作った「微妙にマズイだけの代物」だが、そんなこと闇神が知る由もない。
目の前にある激辛料理を入念に鑑定し、ヤバイ菌がいないことを確かめたとて、それが「衛生的環境で作られたから」か「熱で死に絶えただけ」か……
鑑定結果からじゃ分からないし、調べる手段もない「悪魔の証明」なので、「熱で死に絶えただけ」と結論づけるしかない状況である。
『そういえば、マスターが"豚足美味い"って言ってなかったカ? 豚足って、俺達の足だヨナ?』
『そうだナ。煮込むと、ダシが出て美味いらシイ』
『隠し味に、ちょっと漬けておくカ?』
『いいな。俺の足とお前の足……両方漬ければ、ブレンドされていい感じにしあがるゾ!』
たしかに豚足は美味い。
だがそれは、ちゃんとキレイに洗って徹底的に煮込んだ豚足の話である。
誰が好きこのんで、性病に感染するような不潔オークキングの見るからに汚い足など、"隠し味"として漬けて欲しいと思うだろうか?
顕微鏡で拡大したら、絶対に水虫菌がウジャっていそうな飯テロ攻撃だ!
「やめろぉ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
もちろん闇神の絶叫はスルーされ、クッキング動画の中のオークキング達は、笑顔で汚い足を"隠し味"として加えた。
こうなると、もはや主題の「激辛料理の大食い」なんてモノはどうでもよくなり……
地の底まで落ちた食欲をいかに取り戻して、目の前にある"料理"という名の"汚物"を完食するかが、課題となってくる。
「もう嫌だ……。家に……神殿に……帰りたい…………」
せっかく肥溜めから抜け出せたと思ったのに、次は「汚物を食わされるターン」が来たと悟り、メンタル崩壊した闇神は弱音を吐いた。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)