920話 チームワーク崩壊
そして、この自販機の真に恐ろしいところ……それは無生物ゆえ、気概とかそういうのではなく……言葉通りの意味で、24時間働けるのだ。
マナの充電さえ途切れなければ、24時間・365日<清く・正しく・健やかに>無限労働でき、生物と違って壊れることもない。
加えて、もし闇神に労働機能を損なうようなダメージを与えられても、メグミがその機体を一旦消して再出現させると、ピカピカの新品に戻る。
つまり闇神は、ガチで「無限湧きする特級呪物」に追い回されるハメになり、死ぬか<恵のダンジョン>を出るまで無休を強いられることが確定した。
「というかさぁ〜、あの特に積極的な自販機君……闇神に精○剤を買わせようと、モニターでCMを流して押し売りしているけど……無理だよね?」
「システム的に闇神は課金不可能なので、たとえ欲しかったとしても買えませんね。でも、良いんじゃありませんか? アイツ、嫌がっているみたいだし」
「そうだね。状況的に100%使えないエロ商品を、ボッタクリ価格で押し売りされるのは、闇神のメンタルに刺さりそうだし……このまま放置で」
「了解です! あっ、ついでに大人のオモチャの押し売りも始めた。それで闇神の偽造BL動画を流すあたり、あの自販機達……分かっているじゃん!」
年頃の乙女であるサーシャが側にいるにも関わらず、モンティートとメグミによる「シモ発言乱発」は続く。
サーシャ自体は一切不快感を抱いていないため、止めることもないが……彼等は忘れていた……この場に、もう一人"乙女?"がいたことを。
<−−− ゴツンッ! ゴツンッ! −−−>
「「痛ったぁ〜〜〜!!!!」」
「は〜い。モンティート先輩もメグミ君も、くだらない会話をしていないで仕事しなさい! 次やったら、<働神の加護札>を貼り付けるわよ!」
「ひえっ!? やります! 精一杯、働かせていただきますぅ〜〜」
「ちょっと先輩、なぜ急に僕から距離を取るんですか! というか、加護の発行元である僕に札を貼っても意味ないですよ? もちろん、仕事は大歓迎ですが」
幸いなことに、自販機と違ってメグミの肉体は金属製ではなく、「呪いカウンター付きの魔法陣」も付いていないので……
アスタリアの拳骨一発で、モンティート共々"強制リセット"させられた。
実際のところ、神であるメグミと魔王でしかないアスタリアの格差は大きく、ナックルダスターを装備して拳骨を落としたところで効いていないのだが……
強い女性にシバかれたら、とりあえず頭を下げて殊勝にするのが、長生きするための処世術である。
だが……働神の暴走以外はある程度止められる、ストッパーが存在する<農民><小鬼>同盟と違い、討伐軍の首脳陣には"姉御"がいなかった。
それゆえ監視中にいきなり車輪を生やして動き出した、「もはや自販機と呼べないナニカ」を見て、驚きのあまり腰を抜かし……
それまで安全地帯だと思い居座っていた、自販機が沢山置いてある闇神領の中心部から、逃げ延びるために全力ダッシュ。
仮に闇神領の自販機が"起動"しても、ライバルでもある他の上級神を生贄にして、自らは生き残れるよう……
各々全力を尽くして、後で言い訳ができるやり方で互いの足を引っ張り、自分が最後尾にならぬよう立ち回っている。
『おぃっ、なぜ皆急に走り出したのだ!?』
『そういう御主も、誰よりも速く走っているではないか!』
『この大事なときに後々のことも考えず飛行魔法を使っている、貴様に言われたくないわい!』
『なにをぉ〜〜!?』
仮に闇神領の自販機が覚醒して追ってきたとしても、それらの機体に彫られた魔法陣は「闇神に対してカウンター攻撃を放つもの」なので……
討伐軍の上級神達が被害を受けることはないし、何より「チームワーク何処へいった?」という話だが……仕方ない。
彼等にとって心底狂っているメグミは、「得体の知れない悍ましい存在」であり、無害だと思って利用していた彼傘下の機械が、突然動き出したのだ。
これで冷静さを保てというのは、無理な話である。
とはいえ、この動きは討伐軍にとって悪い話でもなかった。
後々の言い訳ができるよう、上級神全員、「闇神領・中心部から移動する大義名分」を掲げなければならないため……
自然と「<恵のダンジョン>と繋がっている転移ポイントへ行き、弱りきった闇神討伐に繋げる」方針となり、元邪神領がある方角へ動いたから。
たとえ「バルサンを焚かれたゴキブリが、なりふり構わず逃げる構図」そっくりでも、討伐軍トップの戦力を誇る上級神達が現場へ向かったのは事実。
転移ポイントに近付いたところで、汚臭&虫のメンタルブレイク攻撃をくらい、足を止める可能性が極めて高かろうと……
一度"大義名分"を掲げてしまった以上、言葉を取り下げてライバルに「口先だけで結局やらないチキン」と揶揄されぬよう、最終的には有言実行するだろう。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)