903話 自らの足で
この結論が出たとき、討伐軍の上級神達は全員冷や汗をかき押し黙った。
中へ入って直接殺害するパターンは勿論のこと、地獄世界との狭間で待ち受け、<サルトー区・ポルカト界>から逃げ帰った闇神を討つ。
こっちのパターンでも、付近はゴキブリがカサつく汚空間であり、そんな所で待ち伏せしたら自分達が嘔吐地獄に陥るからだ。
「そもそもの話だが……下界というのは、彼処まで汚いものなのか? 私は昔、下界に制裁を加えるべく干渉した事があるが……あそこまでじゃなかったぞ」
「下等生物が住んでいるわけですから、獣臭がする穢らわしい空間なのは当然として、<サルトー区・ポルカト界>が特別汚いんじゃないでしょうか?」
「闇神派閥の全員が引き受けるのを嫌がり、闇神まで匙を投げて自治世界にした程の、赤字垂れ流し・不採算世界だからなぁ〜」
「まるで、肥溜めを世界レベルにしたような空間だったぞ。いくら多大なリソースを奪える目処が立つとはいえ、あんな汚空間には入りたくない!」
散々な言われようだが、<農民><小鬼>同盟がモンティートの巨大ダンジョンではなく、<恵のダンジョン>を矢面に立たせた理由自体……
圧倒的に「臭く・汚く・危険だから」であり、「こんな地獄が長々と続く」と闇神を勘違いで絶望させ、早々に引きあげさせるため。
つまり圧倒的汚物感で生理的嫌悪を引き起こすから、選ばれたのであり、上級神達の罵倒三昧はある種"本望"なのである。
もっとも……その言葉を一番初めに聞いて、喜びと悲しみで心を引き裂かれるべきメグミは、過労極まってシャットダウンしたため……
今は別室でサーシャのリラクゼーションを受け、再起動を試みられているところだが。
「どうする? 現地へ行くか?」
「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」
「それとも、現場で戦っている中級神共と<農民><小鬼>の奴等に、強力な加護を与えて援護する……とか」
「ちょっと待て、それはさすがに止めよう。"お返し"を押し付けられたら、ものすごく厄介だ!」
なんとか「最悪の二択」から逃れるため、現場で戦っている戦士達にケタ違いの加護を与えて、自分達が直接手を下さずとも闇神を滅ぼす。
その可能性を上げようと、提案した神もいたが……冷静さを保っていた神にストップをかけられた。
なんせ<農民><小鬼>同盟には、「喜ばれる」と思って<働神の加護>をばら撒く、特級呪物神が在籍しているのだ。
彼に「お礼の機会」なんて与えようものなら、プレゼントされた加護で一層強化した、封印必須な「呪符(本人にとっては加護札)」を送ってくるに違いない。
何より厄介なのは、その呪符を「要らねぇよ」と叩き返せないところ。
一部のキチガイ以外、基本的に労働は「やらずに済むなら避けないもの」であり、討伐軍の上級神達もここぞとばかりに下に押し付けている訳だが……
道徳的には「労働=素晴らしい社会貢献活動」とされており、数多の部下を働かせている手前、堂々と「働くわけねぇだろう」とは言えないのである。
結果として、加護の授与でリソースを消耗させられた挙句、近くに置きたくもない呪符が返礼品として返ってきて、それに感謝の意を示さざるをえない。
そんな結末がおとずれ、現場の連中に加護を与えたところで上級神の闇神を殺せるとも思えないため、「骨折り損のくたびれもうけ」になってしまうのだ。
そして……今まで下にばかり苦労させていい思いをしてきた討伐軍の上級神達が、「避けようのない地獄」に直面して閉口している頃……
その地獄を生み出した<恵のダンジョン>の再奥では、サーシャがアロマオイルを焚いたり<十色の湯>で半身浴させて、メグミの再起動を試みていた。
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〜十色の泉〜
乳白色で美しい10の冷泉が、枯れる事なく湧き続ける泉。
色は付いているが飲むこともできる。
・桜の泉(思い人と一緒に飲むと恋が実る)
・紅の泉(精力増強作用がある)
・山吹の泉(肩こり・腰痛を回復させる)
・山梔子の泉(MPを微回復させる効果がある)
・白花の泉(HPを微回復させる効果がある)
・青竹の泉(フレッシュな気分になれる)
・若梅の泉(頭の回転がはやくなる)
・常盤緑の泉(目の病気に効く)
・露草の泉(リラックス効果がある)
・葡萄の泉(香り高く美味しい)
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「う〜ん。むっつりスケベのメグミ君なら、<紅の泉>で一撃だと思ったんだけどなぁ〜。飲ませ方が甘かったか」
手法にやや難があるものの、これまで何度も「死の淵を彷徨ったメグミ」を復活させてきた実績が、サーシャにはあるので……
モンティート達も口出しはせず、「結果さえ伴えば過程は問わない」と、徹底スルーを決めこんでいる。
そしてサーシャ独自の過激療法で、男としての本能を刺激され続けたメグミは、過集中で精魂尽き果てたシャットダウン状態から徐々に浮上。
ボンヤリと意識を取り戻したときには、サーシャに据え膳されているという、「いつものパターン」で再起動した。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






