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899話 流れる自販機




 後を追ってくる討伐軍&"口裂け女"が、自分と同じ目に遭うことを期待して、不衛生な環境に耐え先へ進んだ闇神。


 しかし狙いとは裏腹に、彼等はスカベンジャースライムに護られて快適な移動を実現してしまい、苦労して進んだ自分より早く"地獄の玄関"を潜り抜けた。



 討伐軍の不幸を心待ちにして地獄に耐えていた闇神は、その様子を透視してブチ切れたが、あまり息を荒げると不潔な空気が口内に入りこむ。


 また地団駄を踏んだところで、地面を流れる糞尿が跳ねて服が汚れるだけなので、怒りで狂いそうになりながらもその狂気を抑えるしかない。



「フゥ……フゥ……フシュゥ…………」


 それに加えて闇神の前には、新たな「不愉快ポイント」が出現した。


 地下へ降りる階段の代わりに設けられた、糞尿スライダーでよく見えない下階へ落ちていく、ワクワク感ゼロのアトラクションだ。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


外部からお越しのお客様は、我々が用意した自販機ボートに乗り、このスライダーをくだってください。


自販機ボートの利用料金は原則タダですが、もし何らかの理由でご利用が難しい場合、有料の代替ボートも用意してございます。


こちらは整備費等でレンタル費用が高額になっているため、可能な限り自販機ボートの利用を推奨いたします。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 使える訳がない!


 闇神の目の前を流れる自販機ボートには、クッキリと「メグミの過労カウンター攻撃」が刻まれており……


 もし闇神が乗ったら、糞尿スライダーで川下りしている最中に過労カウンター攻撃が炸裂するという、地獄の展開になってしまう。






「そもそも、何でこんな所に自販機があるんだよ! おかしいだろう!!」


 闇神の言い分はもっともだが、彼が気付いていないだけでココは「<恵のダンジョン>内部」なので、自販機くらい普通にある。



 そして「自販機ボート」と銘打っているが、実際はただ「比較的薄っぺらい自販機を寝かせたモノ」を、ボート代わりに使っているだけなので……


 システム的に、メグミに負荷がかかることはないのだ。



 だが過労攻撃を近距離でくらう可能性がある闇神は、度重なる地獄を見て自販機にトラウマを抱いており、そこに乗る勇気など持ち合わせていなかった。


 よって代替品の「ボロいボート」に高額課金して、先へ進むしかなく、諦めて金を払い乗りこんだわけだが……全くと言っていいほど整備されていない。


 そもそも材質に難があり、自ら結界でガードしないと糞尿が染みこんでしまうため、快適な川下りなどできない有り様だ。



「ふざけんなっ! 何処の何奴だ。ボッタクリ料金をむしるくせに、藁のボートしか寄越さないゴミ野郎はっ!!」


 過労クリエイターとして狂い咲き、現在は限界突破がたたって爆睡中のメグミである。



 そもそも彼の脳内では、「金属の自販機に乗れば安心・安全な川下りができるんだから、問題ないでしょう」で思考が完結しており……


 代用ボートなど「闇神以外誰も使わないオモチャ」でしかないため、ダンジョン在住の子供達が編んだ「拙い藁ボート」を、オマケ程度に置いただけ。



 ついでに金をボッタくる仕組みも、用意はしたものの……闇神は見るだけでイラッとして利用を避け、代わりに召喚獣を呼び出す……


 と推測していたので、まさか彼が大真面目に藁ボートに乗って川下りするなんて、思ってもいなかったのだ。






 なお……闇神が召喚獣を呼び出して糞尿スライダーに潜らせ、自分の身の安全を確保しなかったのは、「出来なかった」からに他ならない。


 彼だって、つい先日まで栄華をほこった上級神だったわけで、当然「下僕として飼っている召喚獣」もいたのだが……


 その子達の多くは地獄世界特化型であり、瘴気をエネルギー源にしているため、その濃度が低い下界の環境には適応不可。



 また戦力増強のために、召喚獣へのアクセスを許していた子神達が、全員闇神から離反したため……


 何が仕掛けられているか分からず、安全性の確認が済むまでは気軽に呼び出せないという、二重苦状態なのである。



 とはいえ……コキ使える召喚獣がいなくても立ち回れる、パワーと器用さをもつ闇神は、結界を重ねることで何とか藁ボートの脆弱性を補い……


 上から降ってくる「誰も乗っていない自販機ボート」を避けながら、辛うじて糞尿スライダーを下り終えた。



「うっ、クソッ……。無事、終着地点にたどり着きはしたが……ここは何処だ? 下界とは、こうも腐ったゴミ処理場じみているものなのか?」


 役目を終えた藁ボートは、すでにバラバラと崩れて糞尿沼に沈んでしまったが、闇神本体は(リソースをムダに消耗しただけで)まだ無傷。



 そして闇神が玄関から一段階奥へ潜ったことで、地獄世界との距離が開いたことを察した討伐軍の上級神達は、闇神領の本格攻略に乗り出す。


 討伐軍と銘打って中級神を送りこんでいた、これまでの「手抜きモード」から、自分達が直接現地へ行く「乗っ取りモード」へ切り替えたのだ。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
召喚獣使えばメグミのスライダー不要になるなら、スライダー無しor結界か何かででっち上げたスライダーモドキで充分だったんだろうなぁ
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