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893話 迎えの使者




 汚物フレーバーのO・MO・TE・NA・SHIと、「激臭足のニオイ」香水の追撃をうけ、あまりの気持ち悪さにゲロってしまい体力を消耗したものの……


 目的地である、「<サルトー区・ポルカト界>との接合点」はすぐそこ。


 ゆえに闇神は気力を振り絞って歩みを進め、ヘロヘロになりながらも、邪神が管理していた区域への侵入を果たした。



 鋭敏なままにしていると、また気持ち悪くて吐き体調を崩してしまうため、嗅覚は麻痺させているが……


 それでも何故か、ニオイが目に沁みる。


 そして時折、地獄世界とは思えない羽虫の気配を感じ、「カサカサ……ゴソゴソ……」という音も聞こえてくるため、気が休まることはない。



「何だ、この音……ふむ。このゴミ虫が原因か? オエッ! 頭や背中に、ヘドロがベットリ付いていやがる! 何なのだ。一体どこで湧いた!?」


 闇神が目にしたのは、地獄世界で下僕として酷使させられているのとは違うタイプの、使い道皆無なゴキブリ。



 コイツ等も、アスタリアが「<サルトー区・ポルカト界>を地獄世界から切り離し、代わりに<恵のダンジョン>を繋ぎ合わせる作業」をおこなった際……


 一瞬だけ2つの世界が筒抜けになり、<恵のダンジョン>から放出されてしまった、哀れなゴキ達だ。






 メグミが生み出した<恵のダンジョン>産ゴキブリだけなら、100%統制がきくものの、<農民><小鬼>同盟はダンジョンで野生生物を飼う方針ゆえ……


 ダンジョン生まれではなく、外から連れてこられて中で何世代も交配させられ、<恵のダンジョン>に適応した野生ゴキブリも混ざっている。



 彼等はダンジョンの環境にこそ適応したものの、知能はダンジョン生まれのゴキブリ型モンスターよりはるかに低く、野生のゴキと大差ないため……


 数がいれば、こういう場面で外へ逃げ出てしまう個体も出てくるのだ。



 同種の生物がウジャウジャしている環境ではなく、広く見える世界を求めて、本能のままに世界をまたいだゴキブリ達。


 普通に考えれば、彼等が瘴気ムンムンの地獄世界に適応できるわけがなく、すぐに死んでしまいそうなものだが……


 現在は戦時中で、闇神やアスタリアが空間からリソースを回収しまくっていたので、瘴気も削られ「ギリギリ暮らせる環境」になっていた。



 それに加えて、地獄のような<恵のダンジョン>に放りこまれてもなお、何世代にもわたって進化を重ね、環境に適応したタフな個体ばかり。


 時間経過と共に死亡する個体も出るだろうが、<恵のダンジョン>から逃げ出してまだ時間が経っていない、今の時点では……


 全ての個体が元気にカサっており、興味のおもむくまま方々へ散って、腐った糞尿と病原菌を振り撒いていた。






 そしてこのゴキブリ達は、<恵のダンジョン>所属ではないものの、ダンジョン所属のゴキブリ型モンスターによって、ザックリ教育されており……


 「サイズの大きな生物を見たら、そいつに近寄ってパンツの中に潜りこみ<ピー>を狙う」という、鬼畜イズムを継承している。



 そのため実力格差などは一切考えず、闇神を見た途端カサコソと近寄り、慌てた闇神が飛んで逃げたら、同じように飛んで追いかけ「パンツの中」を目指した。


 上級神である闇神に病気をうつしても罹る訳ないのだが、たとえ病気に罹らずとも、バイオハザード・ゴキブリ達の気持ち悪さは健在。



 特に闇神は、その優れたスペックゆえ無意識のうちにゴキを鑑定し、そのステータスを(表面だけとはいえ)さらってしまったため……


 無数に表示された病原菌の類にゾッとして、モンスターですらないゴキブリを焼き尽くすために、上級魔法を放ってしまった。



「ハァ……ハァ……ハァ…………」


 人間の中にも、生物として明らかに小さくて弱いゴキブリに対して、見ただけで発狂して逃げ惑ったり、殺虫スプレーをかけまくる者がいるが、それと同じ。



 戦えば勝てると分かっていても、キモイもんはキモイ。


 種族間の優劣と、実際に戦いたいかは別問題なのである。






 だが……闇神にとっては悪夢そのものだが、襲いくるゴキブリを倒して歩みを進めた結果、彼は「ゴキ達が何処から来た」かに気づいてしまう。


 目的地である「<サルトー区・ポルカト界>への移界点」に近付くほど、汚物臭で涙が止まらなくなり、カサっているゴキブリの数も多くなったからだ。



 ここで「なぜ急にこんな虫が湧いたのだろう?」と考えて、<サルトー区・ポルカト界>が<恵のダンジョン>と入れ替わった事実に気づけたら……


 "怪我の功名"と言えたかもしれないが、そこは安定の「メグミ達のような格下ごときに、そんな事できない」という、無意識下の思い込みが邪魔をする。



 結果として、闇神は「<サルトー区・ポルカト界>と<恵のダンジョン>の入れ替わり」に気づくことなく、ただ「これから行く下界の悍ましさ」に怯え……


 「行きたくない。なぜ自分は、<サルトー区・ポルカト界>へ逃げこむという選択をしてしまったのだろう?」と、死ぬほど後悔した。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
闇神を追いかける他の神にもゴキが追いかけるのかな?
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