885話 オオカミ糞神
〜マサルside〜
モンティート先輩が、"爆弾"としてメグミに贈らせた「働神の加護」を、仲介した中級神<エース>に押し付けて、無理やり付与させたかと思えば……
地獄世界で戦っている神々にもその様子を中継し、「もしナメた働きをしたら、即刻この呪いを押し付けるから」と脅しをかけた、討伐軍の上級神達。
ここまでは、鬼畜上司の鏡である奴等だからまぁ想定内だったが……そこから先の展開が、カオス過ぎた。
なんとその様子を見ていた闇神が、「討伐軍から構成員を引き抜くチャンス!」と勘違いして、大声で「鞍替え歓迎アピール」を始めたのだ。
『皆の者、よ〜く聞け! もしウチの派閥に鞍替えすれば、そんな罰ゲームみたいな呪いを付与される心配なく働けるぞ!』
たしかに考えてみると、闇神は自販機に名指しで「カウンター攻撃の刻印」を彫られて酷い目に遭い、働神(=メグミ)の脅威を実感していた。
それゆえ現在進行形でその危機に晒されている、現場の中級神達が恐れ慄いたことも察せて、素早い動きができたのだろう。
とはいえ……こんなオオカミ少年発言で、討伐軍の現場部隊が闇神になびくわけがない。
多少瑕疵があったにせよ、闇神は部下に「鬼畜な呪い」を彫りこむどころかその命と私財を丸ごと奪い、派閥を瓦解させたばかりだから。
『もし今ウチに鞍替えすれば、管理世界も選び放題! 上級神候補の中級神として、エリート生活を約束してやる!!』
『誰が、そんな口約束を本気にするか! ホラ吹き野郎、バカも休み休み言え!!』
結果として、日本で暮らしていた頃よく見た……選挙の時だけ綺麗事をほざく議員候補者と、それにヤジを飛ばす有権者のような構図となり……
モニター越しでしか現場の様子を把握できない、遠く離れたこの地でも、現場の空気が冷え冷えしているのが分かる。
「でも、不思議だよね〜。なんでメグミ君の呪い……ゴホン、間違えちゃった。加護って、格上の神様に対しても効くんだろう? 普通、効かないよね?」
「そりゃあ、本人が"呪い"じゃなくて"幸せになれる加護"だと、本気で思い違いをしているからだろう。幼精霊に祈られても元気になるのと、同じ理屈だ」
幼精霊は本当に幸せを運んできてくれるのに対して、メグミは「労働能力アップ」という名の「過労地獄切符」を押し付けてくるので……
パッと見じゃ理屈が分からねぇし、サーシャちゃんが不思議がるのも無理ねぇが、本人が「幸せを運ぶ加護」だと認識していると大概通っちまうんだよ。
もちろん攻撃の側面がある「自販機に彫ったカウンター刻印」は、発動条件付きだが、加護札に関しては「メグミの心がこもった祈り(笑)」だから……
張り付けられたら、中級神どころか上級神でも解呪には苦労するだろうし、そのまえに内側から社畜野郎につくり替えられて、神生終わる可能性が高い。
「モグモグモグ……。ねぇマサル、僕のこと何か言った? あとサーシャとの距離が近いから、あと10cm離れてちょーだい!」
「はいはい、了解で〜す。(聞かれて、当てつけに俺まで加護札の餌食になるとか、マジで勘弁だし……ここは従順になるしかねぇな。あの札は凶器だ!)」
しかしまぁ、いずれは札が余って「過労=神生の潤い」と洗脳された被害者共に、上級神達も囲まれ……
悪意なく「加護ラーの仲間入り」を勧められて、トリップさせられるルートが見える。
そして……数多の神に加護を与えて貢献したメグミの神格が高まり、より高位の社畜神になって、ありがた迷惑な加護をまた無自覚にバラ撒き……
うっ、寒気がしてきた!
考えたら負けだ。
まだ俺はあのゾンビ札に汚染されてねぇし、闇属性の札なら聖結界で弾くって手段もあるから、余計なことを考えてキン○マ縮みあがらせるのはよそう。
『もし今私に協力すれば、そんなふざけた加護をバラ撒くクソ魔王<メグミ>を、共に惨殺することもできるぞ!』
『そりゃあ殺せるかもしれねぇが、テメェに与したところで体よく"肉壁"としてすり潰されるのがオチだ。それくらい、分かっているんだよ!』
『私の派閥にくれば、最高幹部のイスを約束するぞ! 後から来た"見る目がない虫ケラ"を踏み潰して、服従させられるパラダイスだ!』
『テメェに与するくらいなら、何もない虚無空間で自ら旗揚げするわ。最高幹部って、そりゃあ……他に誰もいなきゃ、必然的にNo.2確定じゃねぇか』
『むしろテメェが自販機に跪いて<働神>の派閥に入り、そこの最高幹部として働けばいいんじゃねぇか? きっと、悪意なく加護を盛ってくれるぞ』
『ふざけるなっ! 誰が、あんな鬼畜野郎の下になど入るか! この私を誰だと思っている。上級神の中でも、特に強い力をもつ闇神<スティグマ>だぞ!』
『過去の栄光、乙』
しかしまぁ、ものの見事に誰もなびかねぇな。
闇神と討伐軍の上級神達……どちらの上司っぷりもクソだが、ここまで信用できないオオカミ少年スピーチをかまされちゃ…………お察しだ。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






