882話 感謝の印(笑)
ウンコ製造機扱いされて憤慨するメグミを華麗にスルーして、モンティートは中級神<エース>への返事をしたためた。
たとえ本人が無自覚だろうと、加護(という名の呪印)を振りまくメグミは厄災であり、その嫌がらせ効果も確かだからだ。
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ご温情を賜わりました事、感謝の極みでございます。
そして収入格差の結果とはいえ、ご助力いただくにも関わらず満足なお礼ができず、誠に申し訳なく思っております。
無い袖は振れないし、借金や借りをつくる余力もないので、リソースや金銀財宝での支払いは不可能ですが、コチラにも誠意を見せられる手段がございました。
我等の中で唯一神格をもつ魔王<メグミ>が、「どれだけ根を詰めて働いても過労死しない加護」を授けられるため……
それを封じた加護札を10枚献上させていただき、僅かではございますが、皆様に貢献したいと存じます。
魔王<メグミ>の加護は癖が強いため、多少副作用が出ることもございますが、「無限に働ける」というメリットを踏まえると我慢できる範囲かと。
皆様の一助になれば幸いでございます。
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そして「加護渡したい病」のメグミに加護札をつくらせ、手紙に同封したうえで……
トリップ中のメグミ・スティーブ・カルマの映像データも、「副作用中の様子。参考例」という名目で添えて、送りつける。
何も知らずその書簡を受け取り、上級神がキレ散らかさぬようオブラートに包むために、中身を確認した中級神<エース>は……
キチガイ道を極めたとしか思えない、トリップ中のメグミ・スティーブ・カルマの映像データを見て、ストレスで食べたばかりのステーキを吐き戻した。
「ちょっと待て! 何をどうしたら、感謝の印という名目でこんな呪符を贈ろうと思えるんだよ!? 奴等、頭が沸いているんじゃないか!?」
自分でそう言ったところで、中級神<エース>はモニターに映っている「ガチで頭がブッ壊れたトリップ映像」を、再度見てしまい……
悪意をもって嫌がらせをした訳ではなく、「無自覚に迷惑をかけるタイプの厄災」である可能性が高いことを、悟らされた。
実際のところ、「無自覚な厄災」体質なのはメグミだけであり……それを利用したモンティートは、迷惑行為だと理解したうえでやっているのだが……
そんな事、遠く離れた場所にいるエースが知る由もなく、ただただ肩を落として「こんな疫病神案件、どう伝えればいいんだよ」と涙を流す。
一つの解決策として、中級神<エース>自身が、「上司に付与する前に安全かどうか確かめたい」と人柱になり……
加護札をもう一枚もらってトリッパーになれば、ストレスなど頭の中から消え去るので、(被害を受ける上級神達以外)全て上手くいく。
しかしエースも、上級神程ではないにしろ自分本位な性格であり、本当の意味で身を犠牲にする「捨て身の策」をとり、打開の術とする勇気はなかった。
モニターにデカデカと映る、イっちゃった表情でヨダレを垂らし、「仕事こそ我が人生!」「至高の時!」と吠えまくるメグミを見て……
「自分もこの加護を授かり、(他の全てを捨てて)仕事に打ちこみたい」と思うマゾヒストは、殆どいないだろう。
「ハァ〜。仕方ない。スルーする訳にもいかないし、"メグミ達がどれだけ愚かな生物か"注釈を入れたうえで、上級神様方へ転送しよう」
悪意をもって加護札(笑)を送りつけたのなら、「上位者に対する敬意を欠いた」として、相応に罰することもできるのだ。
だがメグミ達は、自ら加護を受け入れたり<働神>そのものになってしまった、マジモンの狂人である。
そういう悪意のない相手に対して、「何が悪いのか」説くのはほぼ不可能であり、相手が「関わるしかないビジネスパートナー」だと詰む。
またストレスを抱えつつも、中級神<エース>は僅かに「とはいえ、あの"働かないジジィ"共が<働神の加護>を授かったら、面白いかも」と考え……
あくせく働きトリップする上司達の姿を思い描いて、吹き出してしまった。
「さて……上級神様方は、どうやってこの難局をさばかれるのか。どのような結果になろうと、一介の中級神でしかない私には無関係。私は、彼等の礼を受ける謂れなどないのだから」
すっかり胃の内容物を吐き出してしまい、一周回って面白くなってきた中級神<エース>は、書簡転送後……高みの見物を決めこんだ。
ゲロ臭い口内が現実を突きつけてもなお、自販機でクスリを買い大量服用して気分を高揚させ、「自分には無関係」と唱え続ける。
「私は所詮、こんなそんな役しか任されない"干され神"〜。加護とかお礼とか、そんなの一生縁なくてOK! 細く長〜く生きていく〜〜♪」
しかし、彼は忘れていた。
彼の上司である上級神達は、「自分にとって不都合なこと」を目下の者に押し付ける天才であり、メグミに匹敵する"厄災"であることを。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






