881話 準備は進む
〜メグミside〜
方針が決まってすぐモンティート先輩がやったのは、リソースの振り分け作業ではなく、魔王界からの賛同を得ることだった。
「一時的とはいえ、<サルトー区・ポルカト界>と地獄世界の繋がりを切るなんて、一介の魔王がやると後々追求されてしまう越権行為だからね」
「あー、たしかに。今のところ、僕等以外の魔王達は地獄世界で起きている戦争とか闇神襲来の件なんて知りませんが、いつ情報が伝わるか……って話ですし」
そうなると、勝手に<サルトー区・ポルカト界>と<恵のダンジョン>をすり替えた僕……および協力者の<農民><小鬼>同盟は……
他の連中から見ると、「投票による自治で決める」というルールを無視して世界を乗っ取ろうとした暴君、とも取られかねない。
さすがに事情を知ってもなお本気でそう思うバカは、いないと信じたいけど……
実質、魔王界のトップに君臨している僕等の足を引っ張るために、わざと"気付かないフリ"をして「情状酌量の余地ナシ!」と追求してくる可能性はある。
「しかも賛成多数に持っていく為の投票って、僕等だけが票を入れて数時間で終わらせる訳にはいかないでしょう?」
「それじゃ気付かない魔王も出るし、事後"実質強制だった"と言われかねないですもんね。だから、最初にやるしかないのか」
「そうそう。本当は賛同なんて集めている時間的余裕ないんだけど、絶対に外せないタスクなんで、仕方ないから最初に始めてギリギリまで時間を稼ぐ……と」
「お疲れさまです」
笑ってはいるものの、どことなく先輩が疲れているように見え、年齢と過労からくる疲労と判断できたので、<働神の加護>を渡そうかと提案をしたら……
一瞬「ものすごく嫌そうな表情」を浮かべたあと、作り笑いで穏やかに断られた。
「理不尽です! 先輩のためになると思って提案したのに〜!!」
「メグミ、お前……いい加減空気を読め。一生懸命頑張っているモンティート先輩に、疲れが出たタイミングで"罰ゲーム"を強要するな」
「酷いっ!!」
すでに限界突破しているスティーブとカルマには、そのまま黄泉の世界へ旅立たぬよう、"特製の加護"を渡せたものの……
他のメンバーは、普段なら何でも喜ぶサーシャ含めて、全員が疲労の色を浮かべていても、何故か加護の付与を嫌がる。
それどころか、基本ジャレついてくる配下のモンスター達まで、加護の話になった途端、物理的に距離をとるし……
まるで「限界を超えてモリモリ働ける」僕の素晴らしい加護が、「貰うと詰む呪い」みたいじゃないか!
「実際問題、呪いなんだよ。加護を押し付けられるか過労死するしか選択肢がなかった、スティーブとカルマの表情を見りゃ分かるだろう」
「……………………」
「メグミ君は、自分のダンジョンで闇神を迎え撃たなきゃいけない訳だし、貴重なリソースを加護に割くのは良くない。自分で大切に使ってね」
「モンティート先輩。今、もっともらしい事を言いつつ……明らかに、僕が加護を撒けぬよう圧力をかけましたよね?」
「あーうん、まぁね…………。(メグミ君の加護付与未遂の方が、脅し文句としてはエグいというか……。自覚なき過労マスターって、本当に怖いんだよ)」
その後も加護の話になる度に距離をとられ、同じ空間にいるのに僕の半径5m以内に(物理的に)人が居なくなる事態が、何度か発生したが……
それ以外の問題は起きず着々と準備を進められたので、とりあえず良しとしよう。
不満の吐露は、闇神襲来をしのぎ切って<農民><小鬼>同盟に平和が訪れてから、おこなえばいい。
<−−− ピロリロリーン♪ −−−>
「ぅん? メグミ君。中級神<エース>様から、いい知らせが届いたよ〜。ブチ切れていた討伐軍の上級神様達、諦めて折れたみたい」
「おぉ、マジか! エース様も散々罵倒されて辛いって、定期報告メールで愚痴愚痴言っていたし、お礼に"弱めの加護"を贈った方がいいかな?」
「いや、ダメでしょう! リソースのムダ遣いだし、愚痴がこぼれるほど働いている神様に<働神>を贈っても、"もっと働け"って嫌味にしかとられないよ」
むぅ、またサーシャに注意されてしまった。
<働神>になった影響か、頑張って働いている人を見るとつい応援の気持ちがわいて、加護をプレゼントしたくなっちゃうんだけど……
その度に拒否られて、スティーブとカルマにしか「護符印」をつけられていない。
「でも……そうか! 仕事を頑張っていない討伐軍の上級神達に、お礼がわりに加護を授けて、もっと真面目に働いてもらうというのも……」
「あっ、それ使えるね。一応"謝礼を出す意思"は伝わるし、絶対断られて無償で護ってもらえる展開になるから、お礼メールでその爆弾を投下しておこう」
え〜っと、モンティート先輩……断られる前提で加護付与の話って、もはや「特級呪物扱い」じゃないですか!
それって、「名ばかり下級神ごときの加護など要らん!」と拒否される想定ですよね?
僕の加護が「贈答品用の箱に入ったウンコ」扱いされて、「擦りつけられたくない」から丁重に拒絶……みたいな残酷なこと、考えていませんよね?
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






