表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
880/960

880話 他者任せにしたツケ




 討伐軍に所属する中級神<エース>ですら方針転換に驚くほど、根っからの暴君であり搾取ムーブを極めた、討伐軍の上級神達。


 これでも、彼等が誅殺のターゲットにしている闇神<スティグマ>よりは、はるかにマシなのだが……


 一般的な価値観で見ると「どちらも酷い」ことに変わりはなく、その彼等が「争っている余裕はない」と諦めるほど、メグミ達の"返事"は秀逸だった。



『チッ! 下界で暮らすネズミ風情が、調子に乗りおってからに』


『だが、こう書かれては費用など請求できんぞ。それこそ"住む世界"が違うのだ。ネズミに貨幣経済を強要しても、適応できないだろう? そもそも話が通じん』


『くっ……!』



 そう……メグミ達は「弱者である」という立場をフル活用して、「扱うリソースの桁が違うから払えません」と断りを入れたため……


 本心から「格も扱うリソース量も違う」と思っている上級神達は、「追撃で脅しをかけて要求を通す」テンプレパターンを封じられてしまったのだ。



 格下ではあるものの、一応神界で暮らしており、世界を治める器量をもっている下級神までは、"知的生物"として認識しているが……


 それ以下になると上級神にとっては小物すぎて、ノミ・ダニ・ネズミと区別がつかなくなってしまう。






 実際のところ、<農民><小鬼>同盟は神関連でガッツリ稼いでおり、上納地獄にあえぐ一般下級神より裕福なのだが……


 「相手はノミやダニと大差ない格下」という先入観が、その経済状況を曇らせ、上級神達の目には返答の文言が「本当に貧乏で払えない」と映った。



『所詮、下級神が治めていた不採算世界で暮らす、矮小な魔王の集団だからな。上納に対応するのは難しいだろう』


『どう見ても勝てるわけがないのに自衛を決めこむほど、経済状態が悪いのか。ふむ……言われてみれば、奴等の側も戦費が嵩んでいるのやもしれん』



『矮小な存在とは思えぬほど、後方支援で激しい動きを見せていたからな。そうか、損得勘定や経理という概念を持たぬ下等生物ゆえ……』


『"儲け"という概念がないのかもしれません。あるいは、入ったものは全て使ってしまうクチか。いずれにせよ、すでに財布はスッカラカンなのでしょう』



 酷い言われようだが……稼いだリソースは、現在進行形でメグミおよび<恵のダンジョン>強化に使われているため、「払う余裕がない」のは本当である。


 その前に「(ロクに仕事もしない強欲野郎に)払う余裕がない」という、含みが付くわけだが、「圧倒的格下に呆れられる」なんて上級神達は想定していない。



 「圧政からの粛正祭りで部下に見限られ、派閥ごと爆散しかけている闇神」を目にしているのに、何故そんな事も理解できないのか?


 という疑問は浮かぶが、「自分だけは特別。自分は例外」なのは神様も同じであり、そういうメンタルだからこそ過酷な神界で壊れず生き残れたとも言える。






 だが今回ばかりは、搾取体質ゆえに何から何まで他者任せにした事が仇となり、メグミ達への"貸し"をつくるのは実質不可能になった。


 吹けば飛ぶような小物……と思っている彼等に"言い聞かせ"をしたところで、理解させるまでに時間がかかるうえ満足な報酬など得られない。


 そして"貸し"の概念を理解させるより早く、闇神が<サルトー区・ポルカト界>に到着し、彼等を皆殺しにしてしまうからだ。



『奴等の希望どおり、こちらは手出しせず勝手に自衛させますか?』


『そんな事できるか!? 秒で滅んで、後々のフォローで余計に戦費がかさむ!』


『自販機・不思議な草花・リソース泥棒・転移し放題……どれが欠けても、補填に相当量のリソースが必要になります。彼等の保護は必須でしょう』



『だが断られた以上、助けたところで恩には着せられぬぞ? しかも襲撃者は闇神<スティグマ>だ。護るほど損することになるが、それでもいいのか?』


『やむを得ないかと。別の視点でとらえれば、闇神を一時的に<サルトー区・ポルカト界>に封印する対価……とも言えますし』



『そうか。闇神が<サルトー区・ポルカト界>を攻める隙を利用して、こちらも闇神領を完全に乗っ取り、奴の退路を断つ。これさえ出来れば勝負は決まるな』


『それまで、メグミ達が持ち堪えられるかは疑問ですがね。こちらの手助けがないと、秒で滅んでしまい時間稼ぎ要員にすらなりませんから』






 ナチュラルに見下している相手を"後方支援の要"として組み込み、かつそれを疑問にすら思わない神経は、ある意味"一級品"と言えるだろう。


 そんな強者思考(笑)を持つ彼等は、話を進めるうちに「下等生物が、私財の管理もできておらずスッカラカンで詰んだ」という認識を共有し……


 怒りが呆れに変わり、超上から目線で「仕方ない。護ってやろう」と、自分達が受けた恩を棚上げして方針を切り替えた。



 なお……闇神と違って"致命的に痛い目"を見たわけじゃないので、彼等の搾取ムーブは健在であり……


 <サルトー区・ポルカト界>の防衛費は、自腹ではなく、捨て駒として使い潰した神々の私財から捻出される。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ