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864話 原価率のオハナシ




 下の者にとって理不尽極まりない打開策ではあるものの、元々飛ぶように売れていた"おクスリ"が、さらにフルスロットルで回転し始め……


 自販機の持ち主であるメグミは、中級神<エース>から振り込まれた報酬を見て、目を丸くした。



「えっ、ちょっと待って。ゼロがいっぱい……。これ、計算間違えていないよね?」


「失礼な! その辺の脳筋連中はともかく、この私が空調付きの静かな空間で作業をしていて、報酬計算をミスるなんてあり得ません!」



「あぁ、ごめんね。ヒッキーを悪く言いたいんじゃなくて、こんな報酬額見たことないから驚いちゃって」


「ふむ。ならいいです。こちらにも明細が山のように届いていて、休んでいる暇などないので、私は作業に戻りますね」


「うん。ありがとう!」



 破格の報酬額が記された報告書を持ち、メグミ達が拠点にしているカルマのダンジョンへ、珍しく足を運んだヒッキーは……


 持ち前の社不ムーブを発揮してプリプリ怒りつつ、メグミがご褒美に買ってあげた「にんにくハラミ串」を、メグミの分まで平らげて帰っていった。



 メグミの自販機を戦争現場に置くことによって、討伐軍をサポートしつつ不労所得を稼ぐ計画は、「設置さえ終われば後はフリー」と思われそうだが……


 実際は、定期的に商品のラインナップを見直す必要があるのに加えて、会計処理を担当する裏方の負担がかかり続けるため、完全なる不労所得ではない。



 そして<恵のダンジョン>には、気合いと根性で働き続け、水代わりにエナジードリンクを飲むタイプの<ヒッキー>と……


 休憩を必要とせずエンドレスで働けるオートマタが存在するため、バックヤードは熱気がたちこめ、「24時間働けます!」という看板が掲げられている。






 そんな未洗脳者にとっては「この世の地獄」みたいな空間で、一生懸命働く事務処理班の助けもあって、メグミは莫大すぎる報酬を手にした。


 自動販売機は、「地球価格で仕入れた物に利益を乗せて提供する」ビジネスモデルゆえ、原価もエグい金額になっているのだが……


 今回の取引では、戦場に自販機を置く危険手当も込みで「定価の3倍で売っていい」という契約になっているため、報酬額の割に原価はかからなかったのだ。



 身内価格ならともかく、飲み交わしたこともないビジネスパートナー相手の商売なので、売価は一切値引いておらず原価の3倍。


 そこに危険手当て込みのボッタクリ係数が乗るため、戦地の神々が課金している商品の原価は、売価の1/9程度であり……


 リソース報酬に加えて、仕入れに使う貴金属での支払いもあるため、その辺の処理は全てバックヤードで完結していて、メグミに報告は上がっていなかった。



「すげぇな。お前、アスタリア先輩の寄生虫戦法より稼いでいるじゃん! しかも正攻法で! こりゃあ、秒で借金完済できるな」


「だねー。この分なら、ノルマ・トリップしたメグミ君を生き延びさせるために投じたリソースの補填も、今日中に終わりそうだ」



 口ではそんな事を言っているマサルとモンティートだが、実際のところ二人とも、メグミが稼いだ報酬を補填に充ててもらうつもりなどない。


 まだ暫くは"捨て駒戦法"が続きそうな状況で、今すぐメグミの稼ぎをむしり取る必要はなく……


 もう一段階メグミを覚醒させて、より自販機の仕事効率を上げた後、ゆっくり返済してもらう方向で、意見が一致しているのだ。



「うっ、その節は大変失礼いたしました!」


「「いえいえ」」


 ただ自販機無双でメグミが鼻を伸ばさぬよう、適度にイジっているだけである。






「そういえば、アスタリア先輩の方は順調なんですかね? DNAデータを悪用した寄生虫スキームは、上手くいっているみたいですけど……」


「あぁ、マサル君の<巣食う花>を利用して他神領でも稼ぐプラン? うん。絶好調って連絡があったよ〜」



 マサルの<巣食う花>で得たエネルギーは、彼やアスタリアの私腹を肥やすのではなく、僅かな手数料を差し引いたあと全て"支援者"へ送られる。


 そのため女神達が成果をあげても、マサルとアスタリアが儲かることはないのだが、支援者に届くエネルギーは着実に増えていた。



 女神達がどういう手段で"チン騎士"を量産して、純度の高い「闇神へのヘイト」を集めているかどうかは、遠方ゆえ送り出したアスタリアも把握していない。


 しかし<コマンダー>で脱出させた後、1時間たたずにエネルギーが仕送りされ始め、それがダルマ式に増えていく……。


 そんな現状を踏まえると、逃げた先で男神を籠絡できているのは確実であり、さらには「噂が噂を呼ぶ展開」も生み出せていると推察される。



「その支援込みでも、討伐軍の神々は闇神に勝ちきれない……どころかポロポロ殺されちまうんだがな」


 マサルはそう言うが、現場で戦っている神々は所詮"中級神"。


 しかもリストラ対象の"微妙な連中"であるため……彼等が(殺され気味とはいえ)闇神と渡り合え、戦線が崩れていないだけでも凄いことなのだ。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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