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863話 ウルトラCの打開策




 まるで日本の社畜のように、エナジードリンク代わりに薬をキメて、心身を覚醒させ擦り切れるまで働く討伐軍の神々。


 すでに疲労で理性など飛んでいるため、自分がどれだけ粗雑に扱われているか……見るからに"捨て駒"である事も、理解できておらず……



 ただぶら下げられた「戦後の出世」というニンジンを求めて、闇神相手に戦功を立てようと足掻いている。


 しかし背後にいる上級神達は冷静であり、"捨て駒"の将来など全スルーしたうえで、今後の方針について話し合っていた。



「予想より、中級神共の消耗が激しいな。闇神<スティグマ>のスタミナも徐々に削れてはいるが、我等の"駒"が尽きる方が早いぞ」


「仕方なかろう。奴の"近視眼的な立ち回り"を、予測するなんて不可能だ。あくまでも、"テリトリーの防衛機能"を維持したうえで……という試算なのだから」



「闇神領を覆う結界は半ば負債になっていたから、理解できなくもないけど……戦後の立ち回りをガン無視して、闇神城の護りを解くとは思わなかったわ」


「それによって、闇神がこれまでにおこなってきたパワハラの証拠や汚職の証拠が、ガッポリ盗れた。奴は、戦いに勝って黙らせる算段だろうが……」


「私達を殺せば、全盛期の闇神なら可能だっただろうけど、もう無理よ。闇神自身の脅威が下がった以上、仮に私達が全滅しても後任から総スカンをくらうわ」



 自分達も現在進行形で、「要らない部下を使い捨てにして、命を含む全てを奪う」というパワハラ行為をかましている訳だが……


 彼等にとってソレは、「致し方ない犠牲」というキレイな概念に脳内変換されているため、罪悪感を持つ者など一神もいない。



 敵がやったら「責めるネタ」、自分や味方のときは「苦渋の末の選択」に、コロッと解釈が切り替わるあたり……


 彼等のメンタルは何処ぞの政治家達に匹敵し、「自分さえ良ければオールOK」の傲慢な神イズムを、体現した存在と言えるだろう。






「とりあえず、追加の"駒"を送りましょう。このままだと、闇神があと2回ターンを握った時点で均衡が崩れて前線が崩壊するわ」


「そうじゃのぉ。おぃ其方、仲介役の<エース>に指示を出せ! 魔王<カルマ>にコマンダーを使わせて、援軍を派遣するのじゃ!」


『はっ!』



 新たな捨て駒を派遣して時間稼ぎをしたものの、このままでは用意していた駒が尽きてしまい、本当に必要な神財まで増援としてすり潰すハメになる。


 その前に明確な方針を打ち出して試算ミスをカバーするか、リスクが増えるのを承知で彼等が前線へ出るか、決めなければならない。


 だが、そこは「無自覚なパワハラ」をかますプロである上級神達……一般的なセオリーから大きく外れた奇策が、提案された。



「戦場に置かれている自販機で買える、ハイになって無限に戦えるアレ……もっと使わせない? 対価さえ払えば無限に買えるわけだしさぁ〜」


「ふむ。現在でも十分な効果をあげてはいるが、我等が推奨することでより多量の接種を促し、前線の神々を"無限復活するゾンビ兵"に仕立てる……と」



「いけるでしょ? 殉職者が治めていた世界から緊急徴収すれば、魔王<メグミ>との契約で支払うことになっている報酬も、彼等の財布でまかなえるし」


「そうじゃな。カラッカラになるまで搾取してしまうと、後任者が大変なのじゃが……ちょうど闇神派閥から、"中級神見習い"も入ってきた事だしのぉ」


「奴等に任せて死ぬ気で復興させ、いい感じに戻ったところで"配置換え"。有能な後任者に引き継いであげれば、問題ないわよ」






 紛いなりにも戦いに貢献した殉職者の管轄世界を、ブースト薬無限購入の代金を払うための生贄にして、残りの"捨て駒"の活躍期待値をアップ。


 哀れにも生贄となり枯れ果てた世界は、受け入れた余所者に「正式な中級神への昇格」という餌をチラつかせて、労働力を搾取することで回復させる。


 そして回復した世界はまた、子飼いの中級神に管轄させて、「適度な搾取をおこなう畑」としてジワジワ搾取。



 ニンジンをぶら下げたり、後ろ盾を失った民から搾取することで、自分達の懐を一切痛めず、現在進行形で命を搾取されている中級神を強化するという……


 搾取とパワハラのプロらしい、ウルトラCの見事な策だ!



 もし戦費を増やすタイプの策なら、反対意見や別の策が出たかもしれないが、自分達の懐を痛めず「"下等民"の苦労」のみで遂行できる策。


 これに反対するプロなど、この会議の場にいるはずがない!



「だが、自動販売機への課金……高くつくのぉ。少しは値切れんのか?」


「無茶を言うな! 今、魔王<メグミ>を怒らせてあの箱を撤去されたら、飯と薬を心の支えにしている現場チームの士気が下がり、戦線が崩壊してしまう」


「左様。高いと言っても、原価を調べたところ法外な額ではない。魔王<メグミ>の自販機は、戦いの肝になっており代えが効かんのだ。削ってはいかん!」



 幸いなことに、彼等は経営を熟知しているベテランの神々ゆえ、いつの間にか「代えのきかない存在」になっていたメグミにも、搾取ムーブする事はなかった。


 何処の世界もパワーバランスは「需要と供給」で決まっており、「不愉快だから契約破棄!」と言われたら困る相手に、無茶な要求をする奴はいないのである。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
何だかマサルがエースに対してああ言う理由もわかる気がした(汗) いやマジでお前等も現場出ろや、クソ上司神(怒) もう捨て駒だけで追い込める戦況ちゃうで? そして奇しくも闇神からの寝返り組にポスト(不…
負け戦になりそうな気もしてきましたね
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