862話 魔王チーム、大活躍してしまう
〜メグミside〜
僕がサーシャに<ピー>を吸い取られ、カラッカラに干からびている間、闇神もまた先輩方に足を引っ張られ、リソースを消耗させられていた。
特に、アスタリア先輩の攻撃がエグい!
敵のカウンターを避けつつダメージを与えるために、もっとも気を遣う攻撃のタイミングで、組みあげたエネルギーの一部をコソ泥とか……
闇神視点だと、「防ぐ余裕がないうえ逆探知も難しく、攻撃の土台を狂わされるテロ行為」そのものだ!
外部から仕掛ける一般的な方法なら、身の回りを防呪結界とか防魔結界で覆うことで、回避できるけど……
アスタリア先輩が「闇神のマーキング」に利用しているのは、髪や爪より遥かにDNAとの相関が深いとされる、まだ死滅していない<ピー>だからねー。
死滅済みなら、ただのタンパク質だから「マーキングの杭」としては格が落ちるけど……女神様達が頑張って保管した結果、未だにブツは健在。
つまり格落ちのアスタリア先輩でも、好き放題"不意打ち攻撃"を仕掛けられるほど、深くリンクできる状態であり……結界程度じゃ防げないのだ!
「要らないと思うけど、メグミ君も"現物"見る?」
「見ません! 本能が拒絶して、大切な"ターゲティング用のDNA情報"をゴミ箱に投げ込んでしまいそうなので」
「だよね。僕等も、触れなくて済むように厳重保管したし……何が起きたかだけ、話ベースで知っておいてくれれば十分だ」
しかしまぁ、こんな穢らわしいブツを保管してまで闇神への復讐を願うとか……女神様達の恨みは、ものすごく深かったんだな。
サーシャは良い娘だし、僕も裏切るつもりなんてないから、こんな地獄みたいな展開にはならないと思うけど、同じ男として聞くだけでゾッとするよ。
「でも、これだけ足を引っ張られてもなお闇神は健在なんですよね〜。本当に強いんだな」
「うん。超強いよ。マサル君の<巣食う花>が機能して、討伐軍の死者からリソースを回収しづらい状況にも関わらず、全然スタミナの底が見えない」
そう言って、モンティート先輩が手渡してくれたノートを開くと、<巣食う花>による「殉職者のリソース回収履歴」と闇神の補給割合が記されていた。
毎回<巣食う花>の近くで討伐軍メンバーが殉職してくれる訳じゃないし、闇神との取り合いに花が敗れる事もあるので、回収率は100%じゃないけど……
それでも60%は超えており、「闇神が戦闘に利用したと推測されるエネルギー量」を遺体からの回収でまかなうのは、不可能な状況だ。
「だが討伐軍視点だと、捨て駒の中級神と戦わせることで削れると思っていたリソースが、想定より削れていないっぽい。闇神のことをナメていたんだろう」
「あぁ、試算が甘かったのね。使い捨てられる討伐軍の神々は御愁傷様だけど、現場の人間がケツを拭かされるのが世の常。犠牲者、増えそうだね」
だがそんな状況では、<巣食う花>で討伐軍のエネルギー効率を上げて底支えしているマサルや、自販機で補給を担っている僕。
そして<巣食う花>の機能を拡張して、犠牲者が増えるほど高まる討伐軍側のヘイトを、闇神領外からも集めてくれるアスタリア先輩の評価は高まるはず。
全てが終わった後、超絶ブラック条件での就労スカウトが来るのはゴメンだけど、闇神戦の途中で僕等が裏切られて詰む心配はなさそうだ。
「よしっ。退場中に溜まっちゃったノルマの処理、完了! あとは小まめに自販機の品目を調整して、現場で戦う討伐軍メンバーをサポートすればいいだけ!」
「お疲れさん。現地で戦う連中だけじゃなくて、後方にいるのにいいようにコキ使われている、中級神<エース>にも恩恵の雨を降らせてやれ。哀れだから」
「あっ、ハイ。了解です」
男相手の場合、大抵のことを「自業自得」で片付けるマサルが、格上の神様に対して「哀れ」という表現を使うなんて……
中級神<エース>は、どんなブラック労働を押し付けられているんだか。
ブラックの道を極めすぎて、その名を冠する神になっちゃった僕が言うのもアレだけど、程々にしないと壊れて復活できなくなっちゃうよ〜。
「(そうは言っても、ブラック上司達に逆らうと殺処分される立場にいる方だから、無理か。えぇと……その場しのぎに使えるタイプの、おクスリは…………)」
マサルいわく、神様は人間とは比べ物にならないほど丈夫だから、副作用とか用法・容量は気にしないと言っていたし、効果だけ見て選べばいいだろう。
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こうして、久しぶりかつ昇進に直結するゆえ手を抜けない戦争で、心身共に疲弊した、中級神<エース>および討伐軍メンバーの元へ……
メグミが副作用の概念を無視して選んだ「ガツンと効くおクスリ」が、自販機越しに届けられた。
その中には、極めて依存性が高いブツも含まれていたが……説明書も読まずにラムネ感覚で食っている神達は、そんな事など気にせず口に放りこむ。
彼等にとって依存性の問題など、その気になれば魔法治療で即消し飛ばせる程度の些事なのだ。
それよりも「どれだけガツンと効いて、ここ数日のパフォーマンスを上げられるか」……
昇進につながる成果を上げるべく、コレのみを求めて自販機に高額課金し、経費を使ってクスリを貪り続ける。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






