860話 妨害工作が嫌ならコストを払え
〜メグミside〜
「〜〜〜という流れで、俺達はアスタリア先輩から"闇神のDNAデータ"を受け取ったんだ。バッチイから触りたくねぇけど、役に立つのは事実だしありがたい」
「なるほど。そりゃあ相思相愛の中だと思っていても、マサルの時みたいに裏切られる事もあるし、男女の交わりは慎重にしないとダメだよね」
よりにもよって「恨まれている相手」の体内に、呪術や魔術のターゲティングで使う「DNAデータ」を残すなんて、バカも大概にしろって感じだが……
闇神視点だと、配下を大量リストラした代わりに、都合のいい駒として使える子供をたくさん産ませないと、支配領域の経営が成り立たなかったのだろう。
だからと言って同情の余地などない自業自得案件なので、対岸の火事である僕からしてみれば、「ざまぁ」でしかないのだが。
「それでマサルは、そのDNAデータをどんな風に悪用したの? 勇者由来の聖気を流して、呪術の応用で闇神の魂を痛めつける感じ?」
「いや、そんな勇者みたいな立ち回り……超格下の、神ですらない俺じゃ無理だし!」
言われてみれば、そうか。
情けなさすぎて評価が地に落ちているとはいえ、闇神は上級神の中でもトップクラスの神格を持つうえ、粛正した神々のリソースを喰って肥えている。
つまり純粋なスペックなら、討伐軍の上級神達でもタイマンじゃ勝てないわけで……そんな相手の魂に直接攻撃など、DNAデータを持っていても無理筋だ。
「じゃあ、どうやって攻めたの?」
「ん? 魂に働きかける呪いは無理でも、聖魔法と<スキル図鑑>収載のギフトをかけ合わせて、特定の行為を戒めることは可能だからなぁ」
「…………?」
「もし戦闘中に性癖と結びついた加害欲が顔を出して、対象をそういう眼で見た場合、全身が硬直して反った体勢で"エクスタシー!"と叫ぶ戒めをかけた」
「なるほど。汎用性の高い攻撃は、その分コストも嵩むから実質不可能だけど、そんな特殊性癖持ち……闇神以外、そうそういないもんね」
「あぁ。闇神が特殊な癖持ちで助かったぜ。すでに3回"エクスタシーの刑"をくらって、それが原因で一度マジのピンチにも陥ったんだぞ」
「ざまぁ! さすがマサル。嫌がらせが堂に入っていてカッコイイ!」
「くくくっ、褒めたって何も出ねぇぞ。本当は"超絶便秘になって、戦闘中に腹に溜まった屁で悶絶"……みたいな、ゲスい戒めをかけたかったんだが……」
「それもいいね。どうして採用しなかったの?」
「アイツ、そういう所だけ神を気取っているのか……体内に糞が存在しなくて、戒めが不発に終わったんだよ。無念だ」
「なるほど。(僕は神様になっても、その辺り一切変化ナシだけど……調子にのってリソースを割き人体改造したら、闇神みたいになるのかもしれない)」
「僕はマサル君と違って闇神と相性悪いし、地力でも劣るから……土精霊の力を借りて、姑息な"妨害行為"をさせてもらったよ」
ふむふむ。
モンティート先輩は土精霊の血を引くハーフだから、リソースを割り振られた強化メンバー程じゃないけど、人間離れした立ち回りができる。
「DNAデータを依代に乗せたうえで、その子と僕の足をリンクさせてね。僕の足に、ほら……"魚の目"をいくつも作って、闇神の足と感覚共有したの!」
「うわぁ、えげつない。それって、戦闘中ゆえに思いっきり踏み込む場面がある闇神からしたら、踏み込んだタイミングで"魚の目"にチクチク刺されて……」
「うん。すでにリンクは切られて、反撃の呪いも飛んできたけど、2回"魚の目"を踏み抜いて表情を歪めていた。それに、呪いの防衛にはコストがかかる」
「なるほど。マサルも先輩も、本命は"足を引っ張る妨害工作"ではなく、闇神に"嫌がらせを防ぐバリア"を張らせて、余分なコストを支払わせる事なんですね」
「そうそう。いくらDNAデータを手に入れて、闇神をターゲティングできるようになったとはいえ、いつまでもリンクさせていたら僕等が殺られちゃう」
「俺もモンティート先輩も、呪術は専門外だからなぁ。本気で反撃されない程度に、チクチク足を引っ張る嫌がらせをして、バリアを張らせるのが限界だ」
じゃあ、そういうのを得意としているうえ「リソース注入されたTUEEE組」のアスタリア先輩は、どういう悪用を?
あの先輩の事だから、身を守りつつ上手く立ち回ったんだよね?
「アスタリアは、正攻法で攻めているよ。式神と闇神をリンクさせて、奴が攻撃時に発するエネルギーの一部をかすめ取る、寄生虫作戦・第二弾を展開中!」
「あー、言うのは簡単だけど実際にやるのは超ムズイやつですね。そうか、式神に闇神のDNAデータをリンクさせれば、出来なくはないのか……」
闇神から直接「攻撃時に発するエネルギーの一部をかすめ取る」のは、どう足掻いても不可能である。
仮にもアイツは上級神なわけで……肉体を覆うバリアだって強力だし、近付いたら即殺されるから、格下が寄生する隙なんてないもん!
だけど依代経由で、攻撃時という「一番余裕がないとき」をピンポイントで突いて、エネルギーをチューチュー吸うだけなら……
僕にはそんな特殊能力ないから無理だけど、アスタリア先輩のスキルセットを以ってすれば、リスク・リターン良く事を運べるのかもしれない。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






