856話 カッコ良さゼロでも役に立つ
〜マサルside〜
サーシャちゃんに愛情を注いでもらい、ようやく正気に戻って(寝たきりとはいえ)帰還したと思ったら、メグミの奴……
あろうことか「トリップ中の自分」を、「非常識で迷惑な奴」扱いし、現在の自分を被害者ポジションに置きやがった。
「(いや、まぁ……トリップ中のメグミが"非常識で迷惑な奴"なのは、紛れもない事実なんだけど……。通常時のお前も、十分すぎるくらい非常識じゃねぇか)」
冷静さを取り戻して相対的に"マトモ度"が上がったからって、キチガイな事に変わりはないんだから、諦めて全てを受け入れキッチリ尻拭いしやがれ!
「でも、よくそんな暴走同然の"呪い"が歓迎されたね〜。名前だけ神の"何ちゃって呪い"が、上級神に効くわけないのに」
「…………。お前のアレは、万が一効いちまったらヤバイからな。誰だって避けると思うぞ」
「どういう事? そもそも僕がかけた呪いって……ブフォオッ!? 何コレ! 『ワーカホリックになり過労死コースへ一直線』って出てきたよ!」
「そういう事だ。いくら乾いていて靴に付かないように見えても、道にウンコが落ちていたら避けるだろう? それと同じ、嫌がらせ特化の呪いなんだ」
「うぅっ、どうせなら"豪快なビームを放つ"とか"灼熱地獄に落とす"とか……そういうカッコイイ呪いが良かった〜!!」
「無理に決まっているだろう。というか、そんな王道な呪いだったら闇神だって避けねぇよ。格違いすぎてダメージを受けないと、一発で分かるじゃん」
「そりゃあ、そうなんだけどさぁ〜。何というか、コレじゃない感がエグい」
「諦めろ。お前は、カッコ良さとは対極の存在。"白馬の王子様"と勘違いしてくれるのは、目に特殊なフィルターが入っているサーシャちゃんだけだ」
というか、ここまで三枚目コースを歩んでおいて今更カッコ良さにこだわるの……お前もしかして、まだ正気を取り戻せていないんじゃねぇか?
自分の現状を省みろ。
サーシャちゃんに愛されすぎて立てなくなった挙句、病院で患者が使う移動可能なベッドに乗せられて戻ってきた、超絶カッコ悪い「枯れキノコ」だぞ。
お前に常識を求めるのはもう諦めたけど、せめて認知能力くらい治そうな?
白馬の王子様に目覚めさせてもらうどころか、肉食女子に愛され倒して強引に生還させられたトリッパーに、カッコ良い役回りなんて回るわけねぇだろう。
「という事で、諦めてお前は"自販機に糞発射装置をつける依頼"をこなせ。お前にしか出来ない仕事なんだし、この程度なら横になりながらでもできる」
「グスッ。どうしてこうなった?」
分かりやすくショゲつつも、メグミは<働神>らしく呪いを練りあげて、該当箇所に設置された自販機に魔方陣を刻み……
闇神の攻撃を受けたら、いつでも自動カウンター攻撃で『ワーカホリックになり過労死コースへ一直線』の呪いを放てるよう、取り計らった。
闇神と討伐軍の戦いは、ぶつかっている現場だけ見ると上級神の闇神が優勢だが、討伐軍にも追加の鉄砲玉……と言ったら悪いか。
援軍の中級神が加わり、数の攻めは継続できているため、引いてみると「どちらが優勢とも言えない膠着状態」が続いている。
俺が仕掛けた<巣食う花>が死者のリソースを即時回収して、闇神の回復を妨害しているとはいえ、アチラも隙を見てリソースを摘んでいるし……
配下を殺され続けている討伐軍も、現場へ送り込んだ神々は「可能なら処分したかったリストラ候補者」ばかりだから、実質的な痛みはゼロ。
またリストラ候補者など無数にいるうえ、カルマの<転移陣>で移動も楽勝だし、いくらでも追加の鉄砲玉を送り込めるから勝負がつかないのだ!
そんな中で、レスポンスが止まっていたメグミの復活……闇神にとっては、うっかり「ウンコみたいな呪いを踏んで、自爆するリスク」が増えて地獄。
前線で戦っていた討伐軍の神々にとっては、「癒しの自販機」が別方向からも自分達を援護してくれて、万々歳だろう。
たとえ直接的なダメージを与える力はなくても、メグミの呪い『ワーカホリックになり過労死コースへ一直線』は、存在するだけで威圧になる。
誰だってそんな惨めな最期は迎えたくないし……闇神が「呪いにかかってしまった」と自覚する頃には、メグミみたいに過労トリップしていて……
正気を保てておらず、自分の頭で考えられない状態になっているかもしれないからだ。
そんな、一撃で頭も心もやられて神生終わる地雷型ウンコ……そこに存在するだけで怖いし、必然的に「余裕をもって避ける」よう動くわけで……
闇神の選択肢は狭まり、討伐軍が動きやすくなって更にストレスが溜まる、負のスパイラルに陥る可能性だってある。
「だからお前は、そのカッコ悪い呪いを自信を持って振りまけ! 見た目はウンコでも、"実益"って視点で見れば中級神数名分の価値はあるから」
「その、ウンコ味でもカレーはカレー……みたいな言い方、止めてくれない? マサルと違って、僕の心は繊細なんだから」
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






