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849話 無慈悲な運命


〜モンティートside〜




「コソッ(いや、落ち着いたら矯正しないとダメでしょう! じゃないと、<ヒッキー>がメグミ君以上のマジモンに育っちゃうし)」


「コソッ(あっ、やっぱりそうっスか? というか、モンティート先輩……。メグミが"マジモン"って、ちゃんと認識していたんスね)」



 そりゃあ気づくに決まっているでしょう!


 メグミ君は、彼女であるサーシャちゃんや<小鬼>同盟の仲間達を大切にするいい子だし、先輩の僕等にも敬意を払ってくれる子だけど……


 一旦敵に回ると、「相手の人格」の存在を忘れているんじゃないかというほど苛烈な嫌がらせを繰り出すし、毒しか吐かないもん。



 <農民>同盟やマサル君も、敵に対して容赦がないと言われるけど……僕等は多少なりとも自覚していて、そのうえで自分達を守るために動いているだけ。


 だけどメグミ君の場合、根っこの部分に「敵=心身共に抹殺しないと、またイジメられる」という意識があって、対応が無意識のうちに苛烈になる。



 そして根性論が行きすぎて限界突破しちゃった、現在のように……何に対してもブレーキが付いていないから、それを自認できないのだ。


 もはや自認どころか本人に意識があるのか謎なほど、「キャハッ! キャハハッ!」とラリっているけど、それでもなお本能に刻まれた容赦のなさは健在だよ。



「(まぁそれでも、メグミ君は正気に戻せば人の皮を被れるからいいんだけど、得意な性質だけ受け継いだ<ヒッキー>はなぁ……)」


 ちゃんと周りの大人が躾けてやらないと、より磨きのかかった毒牙で誰彼構わずケンカを売って、最終的には組織内で孤立してしまう。






「でも、今のところは"ありがたい存在"っスよね〜。見てくださいよ。闇神の奴、冤罪混じりにこれまでの所業を暴露されて、地団駄を踏んでいます」


「だね〜。体質や性癖については嘘まみれだけど、自分の失態をカバーするために、我が子のオリジナル神籍を抹消して敵を擬態させた。この事は間違いない」



「オリジナルの神籍を消された子神、もう"本人"としては生きられないんですよね?」


「うん。僕等が持つ魔王籍もそうだけど……世界に記録された本人の所属情報を抹消したんだ。今後、彼等が自己を証明する手段はない」



 正確に言うと、他の上級神達が己の派閥に組み込んで、リソースを割き再登記してあげれば、(仮)的な感じで復活できる道もある。


 だが敵だった闇神の子を彼等が重宝して、わざわざリソースと労力を割き再登記してくれる訳ないし、実質的に戸籍復活は無理なのだ。



 そして神籍を失ったばかりか、中級神に擬態させられた子神達は、神界の法律である「神籍乗っ取り禁止」ルールに違反した。


 つまり悪気がなかったにせよ犯罪者として扱われるし、オリジナルの戸籍を取り戻して復活する見込みがない以上、一生"罪"を背負わされるのだ。



 子神達は弱いし生き抜く強かさに欠けるから、まだ今のところ粛正対象には入っていないけど、後ろ盾である闇神が滅んだらどうなるか?


 きっとライバルの上級神達が、嬉々として彼等を捕えて犯罪者として見せしめにし、娯楽目的の処刑イベントの贄として消費するだろう。






「(たとえ子神達がそれに気付いても、オリジナルの神籍が抹消されてしまった以上、もう取り返しはつかない。つまり、恨みや憤りは大きくなるわけで……)」


 ほら、さっそく中級神に擬態させられた子神達が、自身の悲哀を嘆いて周りに八つ当たりし始めた。



 子神達の中でも、神籍抹消の被害を受けたのは10神だけであり、あとの子はその気になれば「普通の神生」を歩めるかもしれないので……


 自分達だけ将来の芽を摘まれたと知った彼等は、身近にいて同格だった兄弟をまず憎く思い、内輪モメを始める。



「(そうなると皆命を賭けて対処せざるを得なくなるから、闇神城の反対側にいる囚われの女神達を、監視する余裕なんてなくなるよね〜)」


 自分が産み落とした子供達が争っている隙に逃げるなんて、普通の女性なら耐えられないかもしれないけど、多分まだ女神達に母性は芽生えていない。



 だって産んだ側から子を取り上げられ、新たに種をつけられて、エンドレス生産させられていたんでしょ?


 それに加えて暴力にも晒されたわけで……彼女達が冷静な状態になって、我が子の存在を認識し母性に気づくのは……


 ちゃんと安全地帯まで逃げ出せて他派閥の保護を受け、安全な生活を手に入れたあと、しばらく経ってからだ。



「(その時、我が子を思い苦しむ女神もいるかもしれないけど……敵の血が入った子神達……それも男神を、他派閥の上級神が生かすわけない)」


 きっと全員、人間社会でよくある、「敗軍の将の子弟」が公衆の面前で壮絶死させられるような、政治利用絡みの悲惨な最期を遂げるだろう。



「(哀れではある。だけど、申し訳ないが助ける義理はない)」


 僕等は神ですらないし、彼女達や子神達の命運を左右するほどの力なんて持っていないのだ。


 ボロボロに傷付いた女神達は哀れだが、彼女達とて政治闘争に敗れた結果そうなった訳で……少なくとも僕は、大切な身内を優先させてもらうよ。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
> 僕等は神ですらないし、 「僕ら」の治療行為の結果で神になったメグミが正気失ってて現状把握できてないんだよなぁ
元々闇神配下の女神だからロルカナ並の性悪も多いだろうし、マジで心痛めるのどんだけいるんだろうなぁ。 割と適当に割り切る気がする。
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