847話 花咲き乱れる獄舎
格下の魔王でしかないメグミが創り出した自販機によって、翻弄され時間と労力を消費させられた闇神は、「ざまぁ」でしかないものの……
闇神が領内のリソースを回収したせいで、実力格差が浮き彫りとなり、そのメグミやマサル以外、誰も「闇神を消耗させる」事ができていない状況に。
慌てた上級神達は出撃を急ぎ、使い潰しの駒でしかない討伐軍の中級神達にも、「命懸けで動け!」と指示を出すが……
側で格差を目の当たりにしたせいで、ここにきて命が惜しくなり足がすくんでしまう者も現れ、討伐軍の陣営は崩れかけていた。
マサルが咲かせた<巣食う花>が、各所に散らばる怨念の残渣を吸い上げて、それを栄養源に変換し、近くにいる討伐軍の疲れを癒しているものの……
ハッタリだとバレぬようにするため、マサルは<巣食う花>を闇神がいる近辺のエリアには咲かせていない。
ゆえに一番疲弊している特攻班と、いつ攻撃を受けてもおかしくない場所にいる援護班が、<巣食う花>の恩恵を受けられておらず……
「無いよりはマシだけど痒い所に手が届かない、日本の弱者支援みたいな状態」になっていた。
しかし討伐軍が恩恵を受けられずとも、<巣食う花>によって癒しを受け回復し、ジワジワと動く力を蓄えつつある者達もいる。
闇神がコストカット策により居城の結界を解除したことで、囚われの身ではあるものの半ば枷が外れた、陵辱の被害者である女神達だ。
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〜巣食う花〜
ターゲットを定めた後、供物と血をマナに混ぜて相手のテリトリー内に植えると、ターゲットに対する他者の憎悪を餌として、水面下で静かに増殖していく。
もし増殖中に種の存在に気付かれて核の命脈を絶たれた場合、それを植えたギフト保持者も連動して命を失うが……
種の存在に気付かれることなく"開花"まで持っていけると、それ以降は攻撃されてもペナルティーを受けずに済み、花のみが命を散らすことになる。
開花した花は、栄養分として接種した「ターゲットへの憎悪」を宿しているため、探知されたとき「ターゲットを憎む知的生物」と勘違いされやすくなり……
現地に行って実物を確認しない限り、ターゲットは「無数に散らばる"自分へ向けられた害意"」に怯え、その結果、重要な局面で判断を誤る可能性も。
また開花した花はターゲットへ向けられた害意に反応して、その相手に栄養を分け与えることで、間接的にターゲットを害そうとするため……
花を根絶させるか自分のテリトリーを捨てて逃げない限り、敵にバフがかかり続ける"修羅の場"で暮らすハメになる。
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闇神の横暴にさらされて不本意な最期を迎えた、元闇神傘下の男神達も、闇神を恨みガッツリ怨念を残して逝ったが……
魂ごとリソースを回収されてしまい、存在を抹消される確率が高かった彼等より、陵辱されこそすれ生かされ続けた女神達の方が、怨念の蓄積量は多かった。
ゆえに<巣食う花>が一番派手に咲いたのは闇神城内であり、彼女達が漏らし続けた怨念は、水面下で栄養となり複利増殖して……
花を咲かせた直後から、「闇神への濃密な害意」を持つ彼女達に反応してその栄養を分け与え、憔悴させられた心身を癒やし始めた。
『ふふふふっ。優しいお花さんね〜。ありがとう』
『私達を助けてくれるの? ふふふふふっ。何故かしら? 貴方達の発するオーラ、とても心地がいいわ〜』
地獄の底で苦しみ続けて闇神への恨みを醸成した女神達と、「ターゲットへの悪意や害意」に反応する<巣食う花>の相性は抜群で……
女神達の心身が回復して、より濃密な復讐心を漏らすようになるほど、彼女達の側には多くの花が咲き乱れ、その思いを栄養に変えて支援を加速させていく。
結果として、女神達が囚われていた獄舎は花畑となり……場外で死んだ神々や、呼び出されて騙し討ちされた中級神の怨念をも、栄養素として引き寄せ……
神格を維持できる最低ラインまで搾り取られ、カラッカラに干からびて弱っていた女神達を、アッという間に獄舎から自力脱出できる程に回復させた。
そして式神経由で闇神の動向を見張っていたアスタリアも、結界が解除され女神達が回復していくのを察知して、それが<巣食う花>の恩恵だと知り……
長期間、狭く暗い獄舎に閉じ込められていたせいで、外部の様子や脱出ルートが分からない女神達を救うために、式神を闇神城へ向かわせる。
「見張りの獄卒共は、闇神が結界を解除したと同時に不利を悟って逃げたからいいとして、のほほんと居座っている子神達が厄介よね〜」
なんせその子神達は、闇神のDNAを受け継いでいるため高い潜在能力を持つうえ、女神達にとっては「我が子」なのだ。
アスタリアから見ると「汚物の血が半分混ざったハーフ・クズ」だが、「自分の腹を痛めて産み落とした女神達は、そう簡単に割り切れないだろう」と……
同じ女性ゆえに悟っており、「両者を引き合わせぬよう配慮しつつ、女神達を場外へ脱出させなければならない」と考えていた。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






