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837話 ゲロリアンの迫力




 ただ中級神<エース>にとっては不孝なことに、メグミは強かな性格であり、ゲロを吐きながらでも自分達の利益を最大化するために悪知恵を巡らせていた。


「(初動でかなり動いたな。とはいえ、このデータには"お試し"で買った商品も含まれているから、過信しすぎるのも良くない。それを踏まえて考えないと!)」



 彼が見ているのは、「設置した自販機で何が買われたのか」ほぼリアルタイムで分かる、分析データ。


 実際には、リアルタイムで出たデータを<ヒッキー>が処理して10分毎に仕上げているだけなので、<ヒッキー>の能力あっての産物だが……


 <ヒッキー>は部屋に他人を入れず、差し入れの高級飯さえケチらなければ、常時"圧倒的な"データ処理能力を発揮できるので、前提が崩れる可能性は低い。



「(逆に、この"ゴミ箱で処理された物"のデータは……ある意味、信用できるかもな。飯限定だけど、残飯が廃棄されていないって事は気に入られたんだろう)」


 解析された自販機の使用履歴を見て、人気の商品や飲み食いにかかる時間を推察したメグミは、それに合わせてマイナーチェンジの内容を検討する。



「(予想以上に、下着の選択サイズがLに集中している。Sの可能性は低いと思って外したけど、こりゃあ……Mも外してLLを加えた方がいいかな?)」


 その検討内容が正しいか、自販機に設置されたモニターで購入者を目視チェックしている、オートマタ達に確認を入れると……


 7割方メグミの推察は正しく、次々とマイナーチェンジの項目が増えていった。






 もちろん彼は配下だけ働かせて楽をしている訳じゃなく、トリップ状態でゲロをぶち撒けながら、ノルマの100台目指して次々と自販機を設置している。


 その様子は鬼気迫るものがあり、撮影された映像を<キアイ>経由で見せられたエースは、ドン引きで直前まで感じていた「高っ!」という感情を失い……


 「そりゃあ、これだけ身を削っているのだから報酬も相応になるだろう。予算オーバーだが仕方ない」と、無意識下で結論づけさせられた。



 メグミ自身の認識では、「<水の職人>ギフト乱用でイキかけたスティーブの方が、僕なんかより余程身を削っていた」と感じているのだが……


 彼の自己認識および<小鬼>同盟内の価値観が狂っているだけで、両者ともヤバイし、あえて比べるならメグミの方がより多くの仕事をこなしている。



 そして<エース>が、視覚情報で「メグミに高額報酬を支払う意味」を理解させられたのと、ほぼ同じタイミングで……


 突撃した闇神討伐軍と闇神が遭遇し、本格的な戦闘が始まった。



 幸いな事にその場にメグミの自販機はなく、悪目立ちしたり破壊のリスクに怯えずに済むため、「この機会に!」とアスタリアはより精力的に動き……


 式神を使って次々と場の安全を確認し、カルマの<コマンダー>を使ってメグミの眷属達をその現場へ移動させ、自販機設置可能ポイントを増やしていく。



 その代償として、短時間での<コマンダー>連続使用を強いられたカルマが、メグミのゲロ臭にやられたのも相まってゲロリアンになり……


 メグミも未だかつてないほど己に負荷をかけて、遠隔地への連続自販機設置とその他諸々の作業をおこない、額にビキビキと血管が浮き出た。






 そんな……本人達にとっては踏ん張りどころだが、ある種日常の"過労ライフ"をおくっているメグミ達と違い……


 己の命と戦後の栄達をかけて、格上の上級神である闇神<スティグマ>と戦い始めた闇神討伐軍の中級神達は、内心闇神の強さに驚愕していた。



『(クソッ! 下級神どころか中級神にも見捨てられ、地の底まで没落した筈なのに……なぜこれだけ動けるんだ!? 詐欺じゃねぇか!!)』


『(チームを組んで"多対一"にしたから、即死は免れたが……もし調子に乗って自分だけで突っ込んでいたら、アッと言う間に死んでいた。闇神、恐るべし!)』



 たしかに闇神は下級神を粛正し中級神にも逃げられたため、派閥を形成していた神々が(血縁以外)ほとんど消え去り弱体化した。


 しかしそれは「派閥全体で見たときの総リソース量」が激減しただけであって、闇神自身は「討伐した下級神」や「逃げ遅れた中級神」を狩って……


 彼等の魂が内包していたリソースや蓄えていた資産を奪い、以前より格段に強くなっていたのだ。



 もちろん闇神討伐軍の背後にいる上級神達は、その事を察したうえで現場に部下を派遣している。


 つまり……現在、己の栄達をかけて命懸けで戦っている中級神達は、上級神達にとっては"ただの捨て駒"であり……


 「彼等が闇神に殺されたら、残された彼等の管理世界とリソースを接収して我が物にしたり、より扱いやすい部下に振り分ける」という算段。



 だが自分達のことを「次世代を担うエリート神」と勘違いして、"命懸けの突撃部隊"を務める中級神達が、その残酷な真実に気づく訳もなく……


 ていよく利用され、闇神のスタミナを削る為に使い潰されるのだった。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
本編とは関係なくてすみません! 私、オアシスフロアの住民たちのお話も好きで……闇神VS他派閥・小鬼&農民が山場を迎えつつある中、オアシスフロアの住民、何も気付かず 概ね平穏に暮らしてて欲しい、と、急に…
腹黒と評判の割に理解のある上客だったわ、エース。 何だかんだで長い付き合いになりそうだわ。 ガチのクレーマー気質なら現場の苦労なんて知ったこっちゃないで無理難題ぶちまけるし。 雑に下へと丸投げするだ…
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