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836話 メグミの自販機依存症




 さて……戦闘がおきた訳でもないのに、ゲロ臭が充満してヤバイ<過労トリッパー>もいる、地獄空間になってしまった後方支援側はさておき……


 眷属達が派遣されて次々と設置されていく自販機は、ゲロを被っていたり悍ましさを纏っていたりしないので、闇神討伐軍から大歓迎されていた。



「おぉっ、これが例の自動販売機か! まさか前線で、温かくて美味いスープが飲めるとは思わなかったわい」


「ゴミ箱が付いているのが、何気に助かるな。食後にそのまま捨てると、痕跡を残すことになるから、いつもは持ち運ばざるをえないが……」


「うむ。回収した物がすぐ何処かに消えるゴミ箱付きの自販機なら、痕跡残しを気にせずその場で好きなだけ飲食を楽しめる!」



 その辺にポイ捨てすれば嵩張らないと思われがちな、食後の簡易食器や包み紙には……DNA情報がたっぷりと付着しているため、実は安易に捨てられない。


 もしポイ捨てしたのを実力者に拾われて、「ターゲットに呪いをかけるための媒介」にされたら、それだけで詰んでしまうからだ。



 だがメグミの自販機は、お客様用のゴミ箱が併設されており、そこに捨てられた物も数十秒で異空間へ回収されるため……


 敵に残置物を利用されず安全に飲食できるという意味で、非常に喜ばれていた。



 なお……現在の一番人気は、フリーズドライにお湯を注いでその場で作られる、「具沢山の高級インスタント豚汁」である。


 味だけならカニ汁の方が美味いが、前線に出ているという事もあり、アッサリしたカニ汁より食べた感のある豚汁の方が好まれたのだ。






 そして……ひとしきり腹を満たした後、デザートに手を伸ばした神々は、一口サイズにカットされた甘くて瑞々しい高級メロンに魅了される。


「美味い! こんな食べ物、平時でも食べたことないぞ!」


「この摩訶不思議な箱は、前線だけでなく日常生活でも利用されるべきだ。自販機の常時設置は、我々の生活を豊かにする!!」



 もしメグミがこの発言を側で聞いていたら、「コッチの都合を確認する気ナシかよ。というか、他人の財布でタダ飯食って美味いのは当然じゃん」と……


 容赦ないツッコミを入れるところだが、「購入に必要な資金は下の者から搾取すればいい」とナチュラルに思っている、神々には届かない。



 また冷静に考えると、神々からボッタクリ価格で利用料を毟り取ることで、メグミも彼等の搾取の恩恵を受けられる訳だから……


 そこはかとなく湧いてくる"不愉快さ"を無視すれば、彼等がくだした自販機への評価は「悪くない」のだ。



 また高級フルーツだけでなく、メグミはマサルの入れ知恵で、「食べると依存しやすいジャンキーな飲食物」も自販機のラインナップに組み込んでいる。


 それに加えて、用法・容量を守って慎重に使わないと人間なら壊れてしまう"お薬"や、社畜の味方"エナジードリンク"もあるわけで……


 一度"快楽の味"を知ってしまった神々が、「メグミの自販機依存症」から抜け刺すのは、並大抵の意思力じゃ困難だろう。



 なんせ一見すると自販機は、彼等の気持ちに寄り添ったカタチになっている。


「この歯ブラシという物も、素晴らしいな。口の中がスースーするが、チューブの磨き粉をつけて擦ると、食後の口腔環境が劇的に改善されるぞ!」


「替え用の下着まで売られている。サイズが合わぬ奴もいるが、7割の神はより快適な前線生活をおくれるはずだ!」



 この裏に潜む「マーケティングという名の"悪意"」を見破り、意識的にシャットアウトするのは、下界の民を見下しまくっている神々には難しい。


 そして彼等が自販機三昧した結果は、「予想を遥かに超える請求」という形で、早くも担当者である中級神<エース>の財布を蝕んでいた。






「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ! いや高いな! たしかに自販機は便利だが、まだ乗り込んだ直後だというのに……こんなに使われたのか!?」


 驚いて明細を確認するが、詐欺られている訳でもなく、延々と「奢られ生活」を満喫する現場班の贅沢三昧が確認できるだけ。


 それゆえエースは、今後想定される支払額を修正して「予算を大幅に超えること」に頭を悩ませつつ、とりあえず初回の支払いを済ませた。



 そして「現場の神々がストレスから浪費に走った」と上司に報告し、「自分には一切責任ナシ。全て現場が悪い」ムーブをとった訳だが……


 彼も彼で自販機沼にハマって、(特にエナジードリンクやお薬を中心に)高い商品を買いまくっているので、他者を責められる立場じゃない。



 だが仕方ないのである。


 普段ケタ違いのリソース明細ばかり見ていて、金銭感覚が根本からブッ飛んでいる神々に対して、「自販機での些細な浪費」を咎めたところで……


 自覚できないのだから、「便利なのになぜ制限をかける? 命を張って働いているんだから、労われよ」という、不満しか返ってこない。



 その「微妙に高いボッタクリ商品を、無意識かつ日常的に買わせる」事こそ、自販機ビジネスのマーケティング戦略なわけだが……


 <エース>自身も中級神であり、ナチュラルにメグミ達を下に見ているので、「自分はカモられているかもしれない」と思い至れないのだ。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
なるほど 高山での高い値段設定で飲み物を売ってる自販機みたいなもんか
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