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833話 感情論は強い




 メグミが軽めのトリップ状態に入り、社畜ムーブをかまし出す少し前のこと……


 彼の要請を受けて、闇神領のギリ外にあるポイントに転移したアスタリアは、無言で式神を放ち領内の調査を始めた。



 自販機設置のためには、多数の眷属を現地へ派遣する必要があるので、アスタリアの護衛にメグミの眷属はつけられない。


 よってルノーブルの配下であるアンデッド眷属が、4体一組で彼女を取り囲んで護っており、「彼等に命令する権利」もルノーブルから貸し出されていた。



「(不思議なものね〜。リソースを大量注入される前はお婆ちゃんだったから、達観して見られたけど……今の状態だと、闇神へのヘイトが勝つなんて)」


 元巫女ゆえ地獄世界と相性が良く、引っ越しサービスで得たリソース報酬を使った強化対象に選ばれ、心身共に生まれ変わったアスタリア。


 その影響で、オムツ必須なほど衰えていた肉体も"美女"と言って差し支えないくらいまで若返り、巫女服が似合う「魔性のお姉様」に。



 潔癖な性格でガードも堅かったため、本人は自覚していないが、巫女時代の彼女は裏でファンクラブが結成されるほどモテており……


 巫女服からチラ見えするその肢体に惹かれて、煩悩で狂死する者がいたくらい、エロ美しかったのだ。






 残念ながらモンティート達は、<農民>同盟を結成した時点で恋愛センサーが死んでおり、誰一人としてアスタリアを女扱いしなかったため……


 彼女が自分の魅力に気付くことはなかったが、陵辱の限りを尽くす闇神の領内に入ると、嫌でも「目をつけられたら別の意味でも終わり」と察せる。



 そのためアスタリアの脳内は、無意識のうちに「キモ男(=闇神)へのヘイト」一色に染まり、式神の探索よりも高い精度で直感が働くようになってしまった。


「(大丈夫。キモ男がいるのは逆方向ね。私の存在には気付かれたけど、姿を見られたわけじゃないし……討伐軍の中級神に意識が向いているみたい)」



 げに恐ろしきは女の勘。


 マナを消費した訳でもないのに、「キモい」という拒絶感のみで闇神の居場所を割り出し、粗方の調査を終えてしまったのだから。



「(とはいえ、<根拠:勘>はさすがにダメだし……ちゃんと裏付けをしてから、メグミ君に報告しないと! 式神達、節約モードで裏を取りなさい!)」


 いくら「狩られそうな見た目」に戻っても、中身がお婆ちゃんなアスタリアは嫌悪感に屈することなく、その場に留まり淡々と調査を進めていった。






 結果として、わずか十数分で必要な調査を終えてメグミに報告メールを送ったアスタリアは、彼が100機の自販機を設置できるようサポートしつつ……


 密かに狙っていた、"もう一つの仕事"を始める。


 巫女として鍛えた結界についての知識を駆使して、闇神領を覆っている結界に干渉し、そこから「結界の礎となっているリソース」を搾取し始めたのだ。



「(引っ越しサービスで得たリソースを注いでもらって、強化されたとはいえ……私達の格じゃ、まだどう足掻いても闇神には勝てないもの。それに……)」


 彼女の脳裏に浮かんだのは、<農民>同盟のリーダーとして合理的な判断をくだし、彼女とルノーブルに「自分を超えろ」と命じたモンティートの姿。



「(理屈では分かっているんですけどね。私にとってはずっと"先輩が上"で……心が、現状を認めてくれないんですよ。だから、火事場泥棒で稼ぎます!)」


 自分達だけでなく、モンティート含む<農民><小鬼>同盟全員が、リソースの恩恵を受けて強化されるという、理想論を叶えるため……


 この機会を利用して、むき出しの結界から火事場泥棒でリソースを搾取し、そのための財源を確保することにしたアスタリア。






 闇神が直で管理している結界からリアルタイムで搾取をおこなえば、当然目をつけられるし、他派閥が闇神を潰せなかった場合は地獄を見るが……


 そんなもの、あれだけ派手に引っ越しサービスで荒稼ぎして、闇神が餌として喰う予定だった中級神を多数逃がした時点で、今さらだ!



「(どうせ闇神が生き残り、<サルトー区・ポルカト界>に干渉する余裕が生まれた時点で、私達は詰みなんだから……徹底的に搾取してやりましょう!)」


 お婆ちゃんに似つかわしくない妖艶な笑みを浮かべたアスタリアは、燃えたぎる闇神への嫌悪感と正義感を抑えて、淡々と結界からリソースを吸い取る。



 上級神である闇神と神ですらないアスタリアでは、リソースを受け入れられる容量も段違いなので、搾取は少しずつしか進まないが……


 寄生虫のように結界に吸い付いた彼女は、特筆したコントロール力でリソースを珠に加工して、護衛のアンデッド眷属に渡し帰還命令をくだす。



「カルマ君にはコチラから連絡するから、貴方は一度ダンジョンに戻ってソレを置いてきなさい。大丈夫。持ち帰れば、あとはメグミ君達が対処してくれるわ」


「承知いたしました」



 こうして、意図せぬところでメグミの仕事がまた増えた。


 とはいえ……彼の周りにはマサルもいるし、いざとなればモンティートに指示を仰げばいいので、大丈夫だろう。


 そう判断したアスタリアは、引き続き寄生虫モードで結界からリソースを吸い出し、僅かながらも着実に"ベテランの意地"を見せつけていく。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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