826話 転移二毛作
〜メグミside〜
マサル達が誰一人欠けることなく闇神領から撤退して、充分なリソースを持ち帰ってくれた事で、<農民><小鬼>同盟の士気は上がった。
もちろん現在は、過労でパンクして指一本動かせなくなってしまったカルマとマサルが、気絶するように爆睡。
僕も一生懸命働いてくれた眷属達を労い、ルノーブル先輩の眷属のご機嫌取りをしているため、すぐ再起するのは難しいけど……
引っ越しビジネスに移行する前、<ボッチ>を闇神城まで突撃させてくれたアスタリア先輩もほぼ回復したし、2人が起きればまた動き出せるはずだ。
だからと言って、あんな治安の悪い地獄世界で戦ったり、闇神にケンカを売って目をつけられるのは嫌だけどね。
僕等は神様を基準にすると"弱者"なので、弱者らしく「他派閥の神々が闇神を潰してくれる」のを願い、陰ながらソレを応援して静かに暮らす!
<−−− ピロリロリーン♪ −−−>
なんてことを考えつつ、ルノーブル先輩の眷属達に「骨を丈夫にするサプリメント」を献上していたとき、メールの着信音が響く。
他派閥の窓口である中級神<エース>が、僕の眷属<キアイ>をとおして、<農民><小鬼>同盟に新たな取引を求めてきたのだ。
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中級神<エース>様が、他派閥の闇神領侵略時の時間短縮のために、<コマンダー>による転移の使用許可と自販機の設置を求めています。
各派閥に「生物を収納できる巨大な亜空間持ち」はいるので、<コマンダー>は数回使わせてもらうだけでよい……とのこと。
一方……ご主人様の自販機については、エナジードリンクやスポーツドリンクを中心に、戦闘中のスタミナを維持できる幅広いメニューをご所望でして。
「闇神領の各地に置き、敵が使えず自分達だけが使えるようにしてくれたら、褒美は弾む」と仰られています。
お忙しいところ申し訳ないのですが、闇神領侵略の作戦にも響く事案ですので、早急にご回答いただきたい……と。
byキアイ
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なるほど。
そりゃあ他派閥の神々からすると、タクシー代わりに<コマンダー>と<亜空間>のコンボを使って、時短移動する方が楽だもんね。
「悪い意味で再利用されぬよう、他派閥の領土側に設置した<コマンダー>の転移拠点は、入念に撤去しちゃったけど……まぁ、いけるか」
再登録用のデータはまだ残っているし、カルマもこれだけ寝た後なら、<コマンダー>数回使用の負担くらい耐えられるはずなので、この点は問題ない。
ここで好意的な態度を見せると、折りを見ていいように利用される可能性もあるけど、今は彼等が闇神を潰せるようサポートするのが優先!
他派閥の神々も性格は腐っているから、信用できる相手じゃないけど、だからといってこのタイミングで協力関係を断つのは悪手だ。
「転移機能の再利用はいいとして……僕が彼等を自販機でサポートするのは、どうなのだろう? ちゃんと採算とれるのかな?」
新たにきていた追記メールを見たところ、自販機の支払いには「クレジットカード&顔認証」で対応し、請求は中級神<エース>にまとめておこなう感じ。
また顔認証で除外するのは闇神だけなので、コチラが奴の現在地を把握していれば、"顔ブロック機能"はザルでよく……
他の「元闇神派閥で運良く自販機を使えちゃった奴」については、そのまま買わせてしまってもお咎めナシだそうだ。
「後払いで、報酬をちょろまかされたり支払い拒否されると困るから、小刻みに請求する必要はあるけど……そこさえ気をつければ、割りの良いビジネスかも」
大量に来るクレジットカードの請求は、<ヒッキー>に任せれば容易く処理してくれるだろう。
そして限界ギリギリのカルマや、現場へ乗り込んで働きまくったマサル、悲哀道を極めているスティーブに負担をかけず、報酬をゲットできるとなれば……
「自販機の価格を幾らにするか次第だが、応じていい話なんじゃないかな? いずれにせよ、価格交渉で納得できるラインを確保しないと話にならないけど」
安全地帯で顔認証システムも要らない、普通の自販機販売と同じ価格では、コッチの負担が増えるだけで得がない。
そんなビジネスで疲弊するくらいなら、人間の街に自販機を出現させて、そこの権力者をボコって黙らせ荒稼ぎする方がマシだ!
逆に危険地帯価格でいいなら、ボッタクリビジネスで荒稼ぎできるチャンスだし、場合によっては「僕等が闇神と戦うハメになったとき」の練習にもなる。
あくまでも万が一の可能性であって、極力「神様は神様同士で潰しあっていただきたい」というのが、僕等"弱者"の望みなんだけど。
「とりあえず、<キアイ>経由で中級神<エース>と交渉してみよう。危険地帯料金の上乗せ込みで、定価の3倍以上なら……話に乗ってもいいかもな」
自販機は闇神に見つかってボコられても、不壊特性付きだから壊れないし、もし壊れても「僕が弁償しなきゃいけない」なんてルールないから、安全だもん。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






