824話 闇神、気づく
時間制限から解き放たれ、かりそめの「無限労働しなくてもいい時間」を堪能しているメグミ達。
そんな彼等に見捨てられ阿鼻叫喚の残留組と、メグミから"サ終報告"を聞いて即座に続いた、他派閥の担当者。
勝ち組と負け組がよく分かる構図で、移籍まわりがカオスな事になっているなか、注目の的である闇神が最後の呼び出し組を殺し終え、フリーになった。
もちろん欲望の塊である闇神が、中級神相手に10連戦して平常心を保てるわけなく、最後の3戦はムダに猛ってしまい戦闘の障害になる有り様。
呼び出し組の中に、闇神が好むような美形は一神もいなかったが、彼の性癖は加虐欲と密接に結びついているため、敵を甚振るとこうなってしまうのだ。
「くそっ! こんな事をしている場合ではないと分かっているのに、猛りがおさまらない。仕方ない……手早く<ピー>して、冷静さを取り戻そう」
主張させっぱなしで思考を巡らせたり、中級神狩りを再開する事などできないので、闇神は己の欲を発散するべく一旦女神達の元へ。
そして陵辱の限りを尽くし、女神達の心身の安寧と引き換えに気持ちをリセットして、ようやく一息つき城の外へ目を向けた。
「…………? おかしい。どういう事だ? 中級神共の気配が、やたら少ないではないか!」
すでに引っ越しサービスを提供したマサル達は、現場から立ち去り、移籍プロジェクトの担当者も見捨てているため……
残されているのは阿鼻叫喚の「残留組」と、運良く逃げられた「放置リストラの被害者」、そして野良の闇属性生物だけである。
想定していた「残っている中級神数」と現実の間に、25もの乖離がある状態では、<ピー>したばかりで疲れている闇神でも……
違和感から目を背けるわけにはいかず、真剣に「どういう経緯でそうなったか」調査し始めた。
<−−− カタカタカタカタカタカタ……。ヴィーヴィーヴィー……カタカタカタカタ………… −−−>
「チッ! 他派閥の連中が茶々を入れやがったんだな。そして機序こそ不明だが、私の結界をすり抜けてこのスピード感で中級神共を逃した魔王。許さぬぞ!」
緊急事態ゆえケチる事なくリソースを使い、自分が探知範囲を狭めていた間に起きた出来事も含めて、幅広く神力調査した闇神。
その甲斐あって、「誰がどういう形で関わっていたか」の詳細までは分からぬものの、マサル達がおこなった"引っ越しサービス"の大まかな内容を掴んだ。
マサル達本人は撤退済みだが、見捨てられた残留組の神殿に残された「営業パンフレット」に、あらましは記されているし……
占いを絡めた調査も併用すると、その一段階奥まで調べることだって可能なので、「大雑把に把握するだけ」でいいなら、やりようはあるのだ。
とはいえ現在の闇神に、<サルトー区・ポルカト界>へ引きあげたマサル達を追い詰め、報復する余裕などない。
格下相手に時間を使ってそんな事をする暇があったら、残された中級神達を一神でも多く狩る方が、たっぷりリソースを稼げるし……
他派閥を率いるライバル神達が、大義名分を引っさげて乗り込んでくる可能性もある状況で、<サルトー区・ポルカト界>へ出張するなど愚行もいいところ。
ゆえに貴重なリソース源を奪われてもなお、闇神がマサル達にできる報復は、遠方から「既存の呪いアイテム」で嫌がらせする……程度である。
もっとも、その対策はマサルとアスタリアが十二分におこなっているため、嫌がらせされても、「アイテムが分解されて闇属性リソースに戻るだけ」なのだが。
だがマサル達に報復する事はできなくても、逃げきれず闇神領に取り残された中級神達を狩ることは可能だった。
なんせ彼等はまだ闇神城の近くにおり、引っ越しサービスを利用する前提で荷造りを進めていたため、自力で遠くへ逃げるには時間がかかる。
そのうえ本人達の能力も、さっさと逃げた中級神達に比べると相対的に低く、狩れば潤沢なリソースが手に入るので、今後のためにも狩らない理由がない。
また彼等は「離反しようとした者達」なので、闇神からすれば報復対象であり、多少時間と労力をかけてもより残虐に嬲り殺す価値があった。
彼等はただ、闇神に殺される可能性を鑑みて離反を考えただけだが……そんな事情を汲んでくれる派閥主なら、闇神派閥はこんな事態に陥っていない。
闇神視点だと、彼等は「<サルトー区・ポルカト界>管理の件」で不義理な態度をとり、それを咎めようとしただけで移籍をたくらんだ……
格下の分際で許しがたい行動をとる、「存在自体が害悪な無能神」なのである。
「さてと……何奴も此奴も、能力的には似たり寄ったりのゴミばかり。誰から狩るのが効率的か……」
気持ちを切り替えて、ひとまず報復対象を「付近にいる逃げ遅れた中級神達」に絞った闇神は、データ片手に獲物を物色し始めた。
一神も漏らすことなく彼等を全狩りし、彼等が保有していたリソースを余すところなく回収して初めて、今後のことを考えられるのである。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






