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822話 残された者達




 信用している身内相手だと流されやすいタイプのメグミを、上手いこと言いくるめて、「無限労働可能な社畜」にする許可をとったマサルは……


 そのためにも充分なリソースを確保するべく、再び闇神領へ飛び、我儘クライアントの引っ越し作業を再開した。



「(現時点で、闇神城の中に入っていった"呼び出し組"は8神……なんだよな。つまりあと2神処理されたら、闇神が外へ目を向けるかもしれねぇってこと)」


 現状、マサルとルノーブルの眷属達が一心不乱に仕事をこなし、転移担当のカルマも力を絞り尽くした甲斐あって、22組の引っ越しが完了している。


 つまり「生き残っていた中級神達」の過半数が、すでに闇神領を出て他派閥へ旅立ったので、闇神が城の外へ目を向けたら隠し通すことは不可能なのだ。



「(しかも有事の際に逃げやすい"田舎の仕事"は、地方組からセールスをかけ始めたこともあって、もう一件も残ってねぇ。あるのは、中心部での仕事だけ)」


 中心部と言っても、「闇神城の目と鼻の先にある区画」は全て闇神の直轄領なので、闇神との距離が一切とれない訳ではなく……


 また呼び出し組とのバトルで消耗したのか、徐々に闇神の探知範囲が狭まっている状況なので、探知範囲から外れた場所で働けばまだバレない。



 だが呼び出し組とのバトルを終えた闇神が、再び城外に意識を向けたとき、逃げきれず惨殺されてしまうリスクは、城に近付けば近付くほど高まるため……


 ここからは命を賭けた、「どのタイミングで逃げるか」のチキンレースとなる。



 もちろん、内心そんな事を思っていても顔には出さない。


 現在もマサル達は、ワガママ放題の顧客相手にビジネスをしている最中であり、もし本音が漏れてしまうと、不安に駆られた顧客に罵倒されかねないからだ。






「おぃ! 書類確認などする暇があったら、さっさと儂を引っ越しさせろ! 貴様のせいで逃げ遅れて闇神に狙われたら、タダじゃおかんぞ!!」


「申し訳ございません。契約書にある条件が、営業担当と合意いただいたものと些か異なりましたので。この報酬額ですと、アフターフォローは致しかねます」



「チッ。細かい奴じゃ! 仕方ない。それで構わぬから、急げ!」


「かしこまりました。では書類の修正が終わり次第、引っ越し作業に移らせていただきますね」



「はあぁっっ!!!?」


「あいにく、そういうルールになっておりますので。書類が揃っていないと、御転移先の担当者様も困惑なさいますし」


「…………チッ」



 自力脱出するでもなく、かといって最初から助けを求める事もできず、ギリギリになって他派閥との契約をまとめ、引っ越しサービスを利用した無能神。


 残っている顧客はそんなのばかりなので、マサル達への態度もより酷いモノとなっており、条件を誤魔化そうとするのは当たり前。


 中には、偽金ならぬ偽リソースを支払おうとして、移籍先の他派閥でシバかれた詐欺神もいた。



 とはいえ……もし顧客が善良な神様なら、「闇神の脅威が迫っている」からと依頼をブッチして見捨てる際、罪悪感に駆られるが……


 こんな顧客ばかりだと見捨てる気まずさなど湧かず、「その時が来たらスパッと切り捨てよう。コイツ等が死んでも構わん」とビジネスライクな思考になれる。


 そういう意味では、ある種「ありがたい属性のお客様」なのかもしれない。






 そして淡々と仕事をこなすこと4時間……ついに、その時が訪れる。


 闇神城へ"呼び出し組"最後の一神が入り、闇神が体制を切り替えるカウントダウンが始まったのだ。



 もちろん一仕事終えた闇神が、疲れ果てて爆睡したり……アドレナリン噴出で、収まりきらない猛りを沈めるため、囚われの女神達と<ピー>した場合……


 外へ目を向けるタイミングは数時間遅れるが、闇神城内部を探ることができない以上、「そういう事は起きない」想定で動くしかない。



「(メグミ経由で、水分身共にメールを! 現在こなしている依頼が終わり次第、速やかにダンジョンへ撤退させる。次の依頼をこなす時間的余裕はねぇ)」


 現場の司令官であるマサルは、そう判断して速やかに分身達へ指示メールを送り、自身も"最後の依頼"にとりかかった。



 その最後の顧客も……当然のように契約条件を誤魔化したうえ、格下のマサルをさり気なく威圧して、報酬の支払いから逃れようとする。


 だが……



「ちなみにですけど、多分もうすぐ闇神様が動き出しますよ。呼び出された中級神様の最後の御一人が、闇神城へ入られたので」


「…………チッ」



 丁寧な言葉で、「ゴネていると闇神が来て殺されるぞ」と脅すと、アッサリ解決。


 威圧的な態度こそとられ続けたものの、契約書の内容はマトモになり、報酬もバックレられずに済んだ。



 なお……使えない配下が「置き去りリストラ」で放置され、(稼げるとはいえ)殺しを伴う残業が発生したのは、言うまでもない。


 逃げられなくなるギリギリまで他派閥との契約締結を渋り、状況をわきまえず引っ越し代までケチろうとした無能神が、配下を大事にする訳ないのである。

読んでくださり、ありがとうございます!


私が以前なろうで連載していてた「落ちこぼれ国を出る」のコミック第9巻が、3月12日に出版となりました。

我ながら面白いと思うので、興味ある方はぜひ読んでくださいm(_ _)m


下のイラストから詳細ページへ飛べます(^_^)

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― 新着の感想 ―
結果的にみれば闇神の狩りはそこそこ成功した形か。 数自体は現時点で3分の1くらいで、その内前半は骨折り損のくたびれ儲けだけど、騙し討ちで殺った奴はちゃんとリソース回収できてるだろうし。 なお、狩りの準…
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