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817話 ファーストペンギン




 マサル達が監視体制の変化に気づき、喜んでいた頃。


 闇神城に呼び出された中級神達は、不自然にならない範囲でトロトロと歩みを進め、ファーストペンギンになるのを回避しようとしたものの……


 いよいよ闇神領の中心部に入り、時間的猶予がなくなった状態で、「最初に行って犠牲になる生贄」を生み出すべく、<神電話>で条件交渉をおこなっていた。



『私が管理している世界のうち、ルオタージュ界とラトフィル界をやる。だから、ファイン。御主が先に行け!』


『ふざけんな! どっちも不採算世界ではないか。そんなゴミなどタダでも要らん! ロブラ、儂の管理する世界を3つやる。其方が行け!』


『名前すら列挙できぬ時点で、渡される世界は"ゴミ"に決まっているではないか! そんな狡い罠に、引っかかる奴がいると思うなよ!』



『まぁ落ち着いて。ここは公平にジャンケンで決めない?』


『ラッキー。お前……平等と言いつつ、自分だけ<豪運>のチカラで勝ち抜けようとしておるな!? <豪運>持ちとのジャンケンの、どこが平等なのじゃ!』



 使っている<神電話>は、闇神でも盗聴できない高ランク神力。


 話に出てくる報酬の規模感も、人間から見ると「デケェ」と思うモノばかりだが、内容がしょうもない。


 だがこの取引には、彼等の「生死」と「将来」がかかっているため、本人達は大真面目である。



 そしてここで、図体がデカイせいで歩幅も大きく、現状"呼び出し組の中で闇神城に一番近い"中級神<ガタイ>が、マトモな取引条件を提示した。


 このままだと、僅差とはいえ彼が「一番先に闇神城へ入る中級神」になってしまうので……


 ちゃんとした報酬を提示してでも身代わりを探さないと、自分の安全に関わるからだ。






『ゴヴォッホン! 俺より先に闇神城へ入った者には、後でホッツク界・モーティブ界・ルシナル界の管理権をやる。誰でもいいから、先に行ってくれ!』


『『『『『『『『『……………………』』』』』』』』』



 中級神<ガタイ>が提示した3世界は、「稼ぎ頭」という程ではないものの安定した収益を得られ、統治も楽な"当たり世界"。


 ゆえに獲得できたら美味しく、それまで子供じみた言い争いをしていた9神も、<ガタイ>の条件提示を聞き悩み始める。



『じゃあ、俺が行くわ。その代わり、もう少しお得なオマケも付けてよ!』


 そして呼び出された神の中で、一番若く欲深い中級神<ヨーク>が、「<ガタイ>の提案を受け入れる」と宣言。


 ついでにオマケも強請り、命を張ってファーストペンギンを務めるリスクと引き換えに、"成功時の栄達"に繋がる報酬を得た。



 一度交渉がまとまった以上、優秀な神である<ヨーク>は覚悟を決めて歩みを速め、<ガタイ>よりも先に闇神城へ到着。


 所定の手続きを済ませて闇神から入城許可が出るのを待ち、失礼にならない程度に「何かあったとき逃げる準備」を済ませて、中へと入る。



<−−− ギイィィィィ…… −−−>


 「中に入った<ヨーク>の安否」および、「闇神城で待ち受けている運命」を知ろうと、外にいる9神は全力で探知するが、城中の様子はつかめない。


 遠方の探知に割いていたリソースのほぼ全てを、「城の探知妨害」に充てた上級神の闇神と、中級神の彼等とじゃ実力差が大きすぎたのだ。






 一方、闇神城の中へ入った<ヨーク>はというと……普段なら絶対に招かれない本丸に通されて、逆にビビっていた。


「(うわっ、謁見の間よりさらに悪趣味じゃん! というか、何故に本丸? もしかして、闇神城の中央にあるから"獲物が逃げにくい"ってこと?)」



 <ヨーク>が悟って血相を変えたところで、闇神城・本丸の扉が全て閉まり、獲物を中に閉じこめる"牢屋仕様"になる。


「チッ! やはり罠だったか。ワープ!! あれ? ワープ!! クソッ、転移妨害が施されてやがる! これじゃ、逃げられねぇ!!」



 他の呼び出し組と比べると、やや慎重さに欠ける<ヨーク>が、なぜ闇神に召集されたかというと……Sランクの神力<ワープ>を持っていたから。


 これは「カルマとは違ったタイプの転移系能力」であり、「アイツを地方で野放しにしておくと、容易く脱出される」と判断されたのだ。



 そのため<ヨーク>が逃げられぬよう、隠蔽を施した転移阻害陣を本丸中に張り巡らせ、そこに本人を閉じこめて狩ろうと、闇神は考えた。


 もちろん他の9神対策も、それぞれ練っており……


 今回<ヨーク>を本丸へ通したのは、「闇神城の中央にあって獲物が逃げにくい」からではなく、単に「<ヨーク>を閉じこめるのに適した環境だった」から。



「クソッ! ここから出せよぉ!!」


 機動力こそ高いものの、それを封じられて「防御ガチガチの空間」に閉じこめられると、火力低めの<ヨーク>は脆い。



 そして長所を封じられて"籠の鳥"となった<ヨーク>の前に、闇神が現れる。


「待たせたな。気分はどうだ?」


 その顔は、諸々の準備で忙しく多少疲れの色が見えるものの……「これから"優秀な獲物"を甚振れる喜び」にあふれていた。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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