815話 哀れなジャンケン
闇神<スティグマ>が怒るのも、無理はない。
彼が呼び出したのは、(彼の目から見て)寝て起きて糞をするしか能のないウ○コ製造機とは違い、優秀ゆえに「地方領域の要」として置いていた神々だ。
放置された中級神達なら、たとえトロトロ来られようと「まぁ無能だしな。仕方ない」で済むのだが、有能な神々がソレをやるのは事情が違う。
「やはりアイツ等……私が、"逃亡を阻止する目的"で勅命を出し招集をかけた事に、気付いているな。そして、私の動きを見るために"後到着"を狙っている!」
単に無能で動きがトロい訳ではなく、裏があっての行動だと察した闇神は、舌打ちしたあと偽の勅書を書きだした。
そして成り代わりが得意な子神達を呼びつけて、彼等を洗脳していく。
「お前達、イスを奪うチャンスが来たぞ。もうじき僻地在住の中級神共が、この城に集まってくる。奴等に成り代わって、神籍ごと乗っ取ってしまえ!」
「「「「「「「「「「…………?」」」」」」」」」」
もし闇神が最初に到着した中級神を殺した場合、その神を注視しつつ後からトロトロやってくる中級神達は、「狩られた」ことを察して速攻で逃げだす。
派閥領の中心部に近付いている所から逃げたところで、逃亡成功確率などたかが知れているが、それでも四方八方へ逃げれば闇神は全員追えないし……
逃げたうちの半分程度は助かり、五体満足で派閥領外へ脱出するだろう。
またその際、地方でボケッと暮らしている"干され神"や、動向を決めかねている中心部在住の神々に、闇神の狙いがバレて……
中級神総出の脱出ゲームが始まり、"貴重なリソース源"を大量に取り逃してしまうかもしれない。
ゆえに闇神は、正攻法で「召集した中級神達」を狩るのを諦め、一計を案じることにした。
女神との間にできた数多の子神のうち「擬態に特化した子」を、ターゲットと同じ10神選抜して……
その子達を、神籍ごと中級神に成り変わらせることで、発覚までの時間を伸ばし、狩りの成功率を上げようとしたのだ。
「乗っ取りマニュアルはここにある。私が城の中でターゲットを倒すから、ターゲットが息絶え絶えになったタイミングで、神籍情報を抜き取って成り代われ」
「「「「「「「「「「かしこまりました!」」」」」」」」」」
たとえ神籍ごと擬装して成り代わっても、まだ幼い子神達の戦闘能力はたかが知れているため、「殺した中級神」の代役は務まらない。
とはいえ……神籍情報ごと乗っ取ってしまえば、丁寧に調べない限り「その神が死に、成り代わられている」事など、分からないし……
ライバルを急かしつつトロトロ移動しているターゲット達が、一人残らず闇神城に到着して狩られるまでの、時間稼ぎにはなるはずだ。
「幸いにも、奴等はファーストペンギンにならぬよう動いていて、バラバラのタイミングで一神ずつ城に到着する可能性が高い。その思惑の裏をかく!」
たしかにトロトロ移動してファーストペンギンを避ければ、いの一番に殺されるリスクは減らせるが……
闇神城内の探知遮断は優秀だし、闇神が一時的に結界を強化することで、外から何も調べられなくなる。
つまり、到着した神が城内で一神ずつ殺されていても、城外の神々は何も察知できない状態となり……
むしろ集団で来られない分、闇神が狩りをしやすい状況に持ちこめるのだ!
「とはいえ、優秀な中級神を短時間で連続10神狩るとなると……遠方の警戒や探知に割いているリソースは、削らねばならない」
さすがに「闇神領をおおう結界のリソースを削り、手抜きモードにする」事はできなかったものの、遠方探知に割いていたリソースを全カットした闇神は……
召集した優秀な中級神を狩ることのみに集中し、「闇神領をおおう結界」と「闇神城の探知妨害策」以外の全てを切り捨てた。
「ねぇ。僕達、この乗っ取りが上手くいったら中級神になるの?」
「そうなんじゃない? よく分からないけど、闇神様が仰ることは全て正しいし、きっと僕等にとっていい事なんだよ」
訳も分からぬまま突然呼び出されて、不可解なミッションを任されマニュアルを投げられた、子神達は……
闇神の思惑を理解することもないまま、ただ「命じられたから」とマニュアルを読みこみ、神籍乗っ取り計画に備える。
もし彼等がもう少し成長して、酸いも甘いも嚙み分ける年頃になっていれば、「神籍乗っ取り時に、自分の痕跡も完全に消されてしまう」事に気付き……
自分の為に我が子をも利用する、闇神の悍ましさに恐怖して、己の未来を奪われぬために足掻いたかもしれない。
だが彼等はまだ幼く完全に洗脳されており、闇神のことを素直に尊敬していたので、「自分達のために中級神のポストを用意してくれたんだ」と解釈した。
そして遺伝した出世欲が顔を覗かせ、「誰が最初に中級神に成り代わり、いい思いをするか」決めるため、ジャンケンを始める。
彼等のためを思い、その愚行を止めてくれる心優しき権力者は、闇神が支配する城内には誰もいなかった。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






