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813話 分身利用の代償


〜マサルside〜




 休憩の概念を忘れて忙しく働いていたところ、<ブラック>との食事会を終えて復帰したメグミから、一通のメールが届いた。


「なるほど。アンデッドの王であるルノーブル先輩の眷属なら、瘴気耐性があるから地獄世界でも通用する……ねぇ。アリだな」



 先輩の配下を借り受ける以上、万が一の場合に備えて、転生アイテムである<血道の刃>は5体全員に持たせないといけないけど……


 このアイテムは、スティーブが<水の職人>ギフトを使って大量生産してくれたし、在庫不足という事はないだろう。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〜血道の刃〜


この刀を使って自刃すると、魂は輪廻に戻るのではなく主人の元へ行き、「主人が創った器」に入ることで、記憶を引き継いだまま転生できる。


ただし転生前のスペックは引き継げず、能力値は「新しい器のスペック」となるため、記憶を引き継げるからといって、必ずしも恵まれた来世を歩めるわけではない。


なおこの刀は、「記憶の媒介役」として自刃者の魂と共にその主人の元へ向かい、役目を終えたあと"刃こぼれした状態"で顕在化する。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜






「俺の方は、以前メグミもらった<スキル図鑑>収載の<水分身>で5体の分身を生み出して、先輩の眷属につけ"接待担当"を担えばいい……と」


 メグミは、<水分身>ギフトのランクアップに力を入れていなかったから、未だにCランクで機能面もショボイ。


 とはいえ……最悪、顧客に殴られても消滅するだけだし、その間に先輩の眷属が逃げてくれればソッチは無事で済むから、「使い捨ての駒」としてはアリだな。



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〜水分身〜


水と自身の細胞を媒介にして、「自我を持った分身」を創り出すことができる。


水分身の戦闘力は低いうえ、外部からの衝撃で形を保てなくなると壊れるが、「危険な場所を調査するとき」など使える場面も多い。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「消滅時に、"分身が経験した情報"が本体に共有されて疲労も蓄積されるのが、玉に瑕だが……他に手はないし、さっそく導入しよう」


 覚悟を決めた俺は、水分身を5体創ってカルマのダンジョンへ送り、ルノーブル先輩の眷属につけて、山のように積まれた引越し依頼の消化にあたらせた。



 モンティート先輩がメールで、「空気読めないタイプ」かつ「プライドTAKEEE系」と言っていたので、多少のトラブルは承知の上だったが……


 いざ現場へ放り込んでやらせてみると、とんでもない事に!






「むっ。そこの亡霊よ、この儂にケンカを売っているのか?」


 <ボッチ>や<ヒッキー>程ではないにしろ、全身から「プライドTAKEEEオーラ」が漏れ出していた、ルノーブル先輩の眷属は……


 顧客の前に立つなり、一言も喋っていないのに「ケンカを売った」と勘違いされ、相手をキレさせかけたのだ。



「いえ、ご安心ください。この者は、他の依頼者様がよく使うアフターサービスをこなすために、同行させている"猛者"です。お客様と争う意思はございません」


 そこで俺の水分身がとった対策は、笑顔でへりくだりゴマを擦りまくった後、ルノーブル先輩の眷属に「キョンシーのお札」を貼り付けるという……


 仕事終了後に本体の俺が、TAKEEEプライドを木っ端微塵にされた先輩の眷属から、集団リンチされること間違いなしの鬼畜技だった。



 何がヤバイって、水分身5体とも「怒られるのは本体だし、まぁいいか」という思考で、同じ結論に辿りつき……


 ルノーブル先輩の眷属を、全員揃ってキョンシーにしたこと!



 1体だけなら、まだ「正座説教+ゲンコツ」とか「嫌味三昧」程度で済むかもしれないけど、5体同時に怒らせるとか……


 自分達は仕事が終わったら消えるからって、勝手すぎるだろう!?


 一人残された俺の"詰め"事情を、少しは考えろよ!!






 もちろん、メグミからの報告メールでこの事態を知らされた俺に、抗う術などなく……


 6チームに分かれて処理してもなお終わらない引越し依頼を、目から血の涙を流して片付けるだけ。



「(ルノーブル先輩からも、メール届いちまった。うわぁ〜。キョンシーにされた眷属達が、無言で怒り狂っている動画……。動画なのにオーラ見えるし)」


 眷属達は、出発前にルノーブル先輩から「お前達は和を乱すゆえ、一言も喋ってはならん。何があっても黙って耐えろ」と厳命されているので、喋らない。



 しかし、それは"現場で働いている時間"限定の話であって……仕事が終わって帰還したら、俺を言葉責めするも殴るも自由なので……


 「本来、分身達が自己責任で受けるべき罰」を先延ばしにして、俺に押し付けているだけだ。



「(ハァ〜、帰りたくねぇ。とはいえ、顧客の中級神共も総じてワガママだし……。もしかして俺、公私共ヤバイ環境に置かれてねぇか? 理不尽すぎだぜ)」


 せめてもの願いは、「仕事途中で水分身達がマジギレされて殴られ、消滅→本体(俺)に記憶共有されたりせず、最後まで平穏無事に働けること」である。


 もし"仕事中に記憶共有"なんて事になったら、俺はストレスで吐血して現場仕事ができなくなり、顧客の中級神を怒らせて二次被害をくらいかねない。



 というか……先輩の眷属をキョンシーにして怒らせたのは、お前等"水分身側"なんだし……仕事が終わったら、せめて一発殴られてから消えろよ。


 あっ、でも……アイツ等が殴られて消えても、「殴られた痛み」の記憶は共有されて結局俺が苦しむわけで……意味ないんだった…………ハァ…………。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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