792話 生贄生活=パラダイス
〜メグミside〜
中級神<エース>を介して、闇神を良く思っていないライバル上級神達の派閥と、引っ越しビジネスの契約を結び……
最寄りの3領域付近に、<コマンダー>の拠点を置かせてもらえることになったため、僕はその根幹を担うカルマのダンジョンを訪れた。
なぜか彼配下のモンスター達が、到着するなり僕を警戒してカルマを護っていたけど、僕は優しい先輩だし暴力なんて振るわないよ。
ただちょ〜っと忙しくなるから、それに備えて精をつけさせるために、サーシャお手製のスタミナ鍋を持ってきてやっただけだ。
「なんだ、スティーブもいたのか。お前も……なんか死相が浮かんでいるから、一緒にコレ食ってスタミナを補充しろ。というか、マジでどうしたんだよ?」
「いえ、何でもありません。ただ<器移し>で<ボッチ>に臨時貸しした、基礎ステータスが戻ってきてしまい、またアイテム創りの日々に戻っただけです」
あぁ、そうか……コイツは<器移し>で<ボッチ>の生贄になって、HPが99%減り「実質<水の職人>ギフトを使えない状態」になっていたから……
<ボッチ>が地獄世界で大活躍している間、己のダンジョンに引きこもり仕事をサボって寝る、"束の間の休息"を楽しんでいたんだな。
それがステータス返却で元の状態に戻され、また胃に管を通して朝から晩までポーションを飲み、アイテムを量産する生活が始まってしまったので……
辛すぎてストレスで死相が浮かび、かと言って「もう少しサボらせて」と要求することもできず、絶望していると。
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〜水の職人(Sランク)〜
HPを最大量の50%捧げる代わりに、水属性のアイテムを生み出すことができる能力。
ポーションを飲んで回復し、繰り返しアイテムを生み出すことも可能。
ただし……たとえHP残量が50%以下であっても、この能力を行使すると「最大量の50%にあたるHP」を奪われるので、回復量が足りない場合、HP枯渇による死に至る。
アイテムのレア度はギフトランクによって変わり、ギフトランクは能力者の職業ランクと相関する。
Sランクの場合、最低でも国宝級のアイテムを生み出すことができ、運が良ければ神話級のアイテムが生まれることも。
よりレア度の高いアイテムを求める場合、生み出すアイテムに細かな条件をつけず「100%お任せ」にすることで、僅かだが出現率を上げることができる。
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「スティーブ、安心しろ! 引っ越しビジネスの下準備がもうすぐ終わり、本格的な"闇神潰し"が始まりそうなんだ。その時がきたら、再びお前は贄になれる!」
「……………………!!!? そうか。前線で使いモノにならない私は、また<ボッチ>の贄としてステータスを献上できる。つまり、あと少し頑張れば……」
「あぁ、次の"実質休暇"はすぐそこだ! そこまで耐え切れば、あとは好きなだけ寝ていいしポーション地獄からも解放されるぞ!」
「はい。なんか元気が出てきました! あと数日なら耐えられそうだし、もう少しだけ頑張って"アイテムの苗床"生活をおくります!」
僕の励ましの言葉を聞いて悟りを開いたスティーブは、サーシャが作ってくれた「スタミナもつ鍋」を恐ろしい勢いで食べ……
食後の休憩をはさむこともなく、アイテム創りを再開するために、自分のダンジョンへ帰っていった。
「メグミ先輩。なんか社畜を"三途の川"にブチ込むの、上手くなっていません? 僕は一度気絶して休めたので、スティーブ君みたいな慰めは要らないっス」
「気のせいだよ。というか……お前はスティーブと違って、闇神派閥が他の上級神に壊滅させられるまで、休みなく働くわけだし……慰めるネタすらないじゃん」
「あぁ、そうでしたね」
今度は、スティーブに代わってカルマの顔に死相が浮かび、現実逃避し始めたが、お前には急ぎの仕事が山程あるの!
あと数分すれば、サーシャがスタミナ鍋のお代わりを持ってきてくれるから、それを食べて英気を養いモリモリ働いてくれ!
「ところで、後ろでオロオロしているモンスター達はなに? お前がブラック労働させられるのなんていつもの事だし、今さら慌てる必要もないと思うけど」
「言い返せないところが泣けてきますが、彼等は……よく分からないんです。この前気絶して目覚めたときからずっと、こんな調子で……」
「ふ〜ん。"主人の死=ダンジョンの滅亡"だから、気絶されたのが怖くてトラウマになっちゃったのかな?」
「そうなんですかね〜。初期の頃から何度も滅亡しかけたので、耐性はある方だと思うのですが……落ち着くまで彼等の献身を甘受しようと、考えております」
なんとなく、以前僕がノルマ・トリップしてしまい……ようやく正気に戻ったときの配下達のリアクションと、似ている気もするけど……
まだカルマはその扉を開いていないから、違うだろう。
<−−− ピロリロリーン♪ −−−>
「おっ、<タスク>から目的地到着の報告だ。カルマ〜。とりあえず、サーシャがスタミナ鍋のお代わりを持ってきてくれる前に、<コマンダー>を一発頼む」
「かしこまりました。逃げても隠れても限界を超えて搾られるのは同じですし、最初の一発逝ってきます!!」
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






