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788話 邂逅




 <キアイ>の読みどおり、彼を探知圏にとらえて間合いをはかる状態になった相手は、敵対する意思などなく……


 所属している派閥の上級神から、「闇神派閥所属の中級神の亡命を手伝え」と命じられ、派遣された穏健派の中級神だった。



「ふむ。この先にいる個体はキングデーモンだな。どこの所属だ? おそらく、飼い主がいる眷属だと思うが……」


 その中級神<エース>の仕事は、「亡命を望む中級神を、安全圏まで連れていく」というものであり、それを阻む者以外と戦う必要性などない。


 ゆえに邂逅した<キアイ>が格下だろうと、即座に殺したりボコって情報収集する事はなかったが、彼の所属は気になっていた。



 もし<キアイ>が「亡命を望む中級神の眷属」で、主人のために逃げ道を探しているのであれば、直接話して交渉に持ちこむこともできるし……


 逆に「闇神を崇める下っ端眷属」なら、ここで可能な限り情報を抜いて始末し敵戦力を削るのが、<エース>に与えられた役目だから。



「しかしこの距離では、相手の詳しいステータスを把握できない。もう少し近づいて探ってみよう」


 圧倒的格上の<エース>と遭遇しても逃げない時点で、彼は「邂逅したキングデーモンは敵じゃない」と予想していた。






 その予想は正解で、たしかに<キアイ>は「<エース>の敵」ではなかったが、彼の"飼い主"については想定外すぎる人物で、戸惑いが生じる。


「神ではなく、下界で暮らす魔王が主人……だと? 稀に、有能な魔王がスカウトされて神見習いになる事もあるゆえ、一概にデタラメとも言えんが……」



 ステータスを覗ける位置まで近づいて、<キアイ>の所属を調べたところ、出てきたのは「魔王<メグミ>の眷属」という情報。


 本来、下界で暮らす下等生物でしかない魔王よりも、キングデーモンの方が上位の存在であり、彼等が「魔王の眷属」として生み出されることはない。



 だが、実際にそう表示されているし……仮に<キアイ>がステータスを偽装したとしても、もっとマシな嘘データを載せるはずなので……


 <エース>は一旦「この情報=本物」と仮定して、<キアイ>と直接話し、「なぜ彼が下界ではなくこんな所にいるのか?」を探ることにした。



「プライドの高い闇神が、己のために働く眷属の所属を、こんなショボイ属性で誤魔化すなんてあり得ない! つまり、あのキングデーモンは敵じゃないのだ」


 味方かどうかはともかく、<キアイ>が「闇神領がある方角から来たキングデーモン」である以上、<エース>にとっては「話すに値する相手」だった。






 そして<キアイ>の方も、メグミから「一度面と向かって話をした方がいい」と言われたことで、<エース>とコミュニケーションをとる理由ができ……


 本来なら誰一人訪れることのない虚無空間で、「キングデーモンと中級神が互いに接近し、声が届く距離まで近づく」という、珍しい現象が起きる。



「そこのキングデーモンよ。念のために確認するが、お前は"闇神の手下"ではあるまいな?」


「違います! 畏れ多いですが、私も一つ確認させていただきたい。貴方様に、害意はありますか?」



「いや。闇神の手下でないなら、現時点で私が"お前"や"お前の主人"を害する理由はない。これも何かの縁だ。少し話そうではないか」


「はい! 望むところです!」



 もし中級神<エース>と相対したのが<ボッチ>だったら、出会うなり失礼攻撃をかましまくり、無礼討ちされていたかもしれない。


 だが幸いにも、<キアイ>は「暑苦しいものの、ガッツがある体育会系コミュ強」なので、格上の<エース>に気に入られるタイプだった。


 ゆえにヘイトを買うことなく握手を交わし、対等とまではいかないが、五体満足で重要人物の<エース>と話すことに成功する。






「まず、互いの目的を確認したい。私は上司の命令により、闇神派閥で粛正対象になりそうな神々を、安全圏へ逃すために派遣された。お前は?」


「私も、闇神派閥の中級神様を逃すために動いております! 現在ウチでは、"中級神様から引っ越し代をもらおうキャンペーン"を企画しておりまして……」


「ほう? "中級神から引っ越し代をもらおうキャンペーン"とな?」



 もし<ボッチ>なら、仲間内で共有されていた文言そのままに、「中級神から引っ越し代をボッタクろう!」と表現してしまい……


 メグミ達の「神を敬う気持ちが1ミリもない属性」を晒すところだったが、幸いにも<キアイ>はその辺に配慮できる眷属だったため、オブラートに包んだ。



 そしてキャンペーンに興味を示した<エース>に対して、必要最低限の情報のみ開示しつつ、自分達の狙いを明かしていく。


「〜〜〜〜〜〜〜という事で、現在は下準備のために動いております!」



「なるほど。つまりお前達と手を組めば、我々は闇神の結界を自力突破させずとも、アチラ所属の中級神を逃がせるのだな」


 話を聞いた<エース>も、メグミ達のボッタクリ臭は感じるものの、自分達にも利益のあるビジネスだったため……


 嘲笑うことなく<キアイ>の話を受けとめ、咀嚼を始める。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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