785話 ストレス慣れした男
「ご主人様のため、そしてお味方の勝利と生き残りのために、我々は全身全霊で探索をおこない、闇神以外の派閥領域を見つけ出す! 行くぞ〜!!」
「「「「「「「「「おぉ〜〜!!!!」」」」」」」」」
カルマの屍を踏み付けて、元気いっぱい闇神領外へ飛び出した眷属達は、互いの健闘を祈って円陣を組んだ後、バラバラの方向へ散っていく。
幸いなことに、闇神が<シュッセ>の拷問と処刑を終えて我に返り、事態の深刻さに気付いて闇神領全体を探知ギフトで調べたのは……
眷属達が探知範囲外である「結界の外」へ出た数十分後であり、彼等は闇神に目をつけられずに済んだ。
また闇神領を包みこむ結界も強化されたが、今後彼等は結界外の拠点を使って、<コマンダー>で送り迎えしてもらう予定なので……
カルマがくたばって地獄世界に取り残されることはあっても、闇神に探知されて存在がバレ、命を奪われるリスクはほぼ無くなったと言っていい。
要するに彼等は、<ボッチ>と同じく「命を賭けるフェーズ」を脱して、一息つける状況になったのだ。
もちろん探索中の虚無空間も100%安全という訳ではないが、闇神領域内とは「敵の密度」が違う以上、彼等の価値観では「寝られるくらい安全」なのである。
さて、そんな彼等の持ち物はというと……
何も無さすぎてマッピング不可能な虚無空間を、エンドレス探索するのに備えた、「大量の食料&アイテム」漬け状態。
時間経過のないリュック型マジックバッグを持ち、その中に「水・おにぎり・サイコロステーキ串」等の、手軽に美味しく食べられる食料を入れている他……
一人用テントやタオル等の生活物資も持っており、連勤が続いてもコンディションを落とさないだけの、生活水準を確保できるようにしてある。
またメグミの自販機で購入した、多種多様な「危な過ぎる武器」や「取り扱い注意の薬品」、スティーブお手製のアイテムも所持しており……
"ちょっと格上"程度の敵なら、万が一遭遇しても(装備のチカラで)何とかなる可能性が高い。
そんな中でも、彼等がわざわざ"予備"を持ち胸ポケットに潜ませている物……それは、仲間達と連絡を取り合うことができるスマホだ。
目印となる建物や特徴など何もない虚無空間で、完全な無音のなか探索を続ける苦しみは、想像以上であり、それゆえに「仲間との繋がり」が重要となる。
一応GPSもオンにしてあるので、「やらかして迷子になってしまった時、迎えに来てもらえる可能性が上がる」メリットもあるが……
それ以上に、「危険性は低いけど刺激皆無で精神が狂いそうなほど何もない、虚無空間」の探索中に、励まし合える仲間の存在が必要なのだ。
この時点で、探索チームに参加している眷属は……
<ノルマ><タスク><カロウ><ガッツ><キアイ><ツヨガリ><ゲンキ><ハヤイ><コンジョウ><ドウテイ>と、全員とにかく暑苦しい。
そんな彼等を強制ボッチにしたうえで、スマホを与えれば……当然やることは、探索しながらの雑談とこまめな報・連・相であり……
その影響をもっとも強く受けるのは、眷属10体のメールが一斉に届くメグミとなる。
<−−− ピロリロリーン♪ ピロリロリーン♪ ピロリロリーン♪ ピロリロリーン♪ ピロリロリーン♪ ピロリロリーン♪ −−−>
メグミのスマホは絶えず鳴り続け、働きすぎで熱をもってしまい……特にネットサーフィンした訳でもないのに、カイロくらい熱々になった。
なぜメグミは毎度、「報・連・相」爆撃でスマホをブッ壊されるのか?
それは彼が全眷属に対して愛情をもち可愛がっているため、律儀にメールを返してしまい、無意識のうちに彼等の依存度を引き上げているから。
なお……同じメグミ配下の眷属でも、わざわざメールして来ないタイプの<ヒッキー>は、常時ダンジョンに篭っており……
極度に残業嫌いな<ギャラ>も、「働きすぎたから」という理由で後方支援部隊に回り、"後方待機"という名の"サボり"で帳尻を合わせている。
つまり「メグミの胃は痛めるけど、現場班としてはカウントされない状態」となっており、メールの代わりに行動で彼にストレスを与えていた。
また……自発的に「地獄世界行き」を希望したにも関わらず、あまりにも「裏切りそうなタイプ」の"真っ黒眷属"だったため、却下された<ブラック>は……
"干された"事に気付かせぬよう、メグミが「スティーブの補助(という名の監視)任務」を任せたため、彼なりに頑張り成果を出した。
そしてスティーブが、<ボッチ>に基礎ステータスを貸し出して、「アイテム作りできない状態」になったことで、晴れてお役御免となり……
現在は「虚無空間探索チーム入り」を熱望して、<恵のダンジョン>内で手書きの嘆願書をしたためメグミに渡すことで、直接ストレスをかけている。
形式やタイミングは違えども、数多の眷属からストレス弾を乱射され、ストレスフィーバーモードに入ったメグミは……
慣れた様子で胃薬・頭痛薬・鎮静剤を一気飲みして、サーシャにハーブ系のアロマを焚くよう頼み、襲いくるストレス弾全てを笑顔で受け入れた。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






