773話 枯渇した体力を……
〜アスタリアside〜
中心部で暮らしている他の神々に、「<コマンダー>による転移」を見られて怪しまれぬよう、一旦<ボッチ>を過疎地まで離し……
そこから私がいる僻地まで<コマンダー>で戻して、闇神城の中で多少の荒事が起きても耐えられるよう、軽い休憩を取らせる。
「モグモグモグ……。アスタリア先輩、明石焼きも好きですが私はタコ焼き派でした。あと、やっぱりご主人様の肉巻きおにぎりが一番です。心が温かいので」
「そう。眠くならない程度にガッツリ食べておきなさい。闇神城の中へ入った後は、何があるか分からないんだから」
「は〜ぃ。ハグハム……」
すでに私は限界ギリギリまで式神を使役しており、ポーションを飲んでもなおHP残量がヤバイ。
モンティート・ゴーブル・ルノーブルの基礎ステータスを借りているとはいえ、ほぼ一人で偵察・誘導・指示出し……全てをこなしたのだ。
ここまで大規模に展開した経験もないし、エネルギーが枯渇するのも仕方ないだろう。
「(だけど、今からが一番危険な難所! どうにかして、ポーションを飲みHPを補わなきゃ!)」
とはいえ……敵に見つかったら自力で逃げないといけない地獄世界で、スティーブ君みたいに管だらけになるのは、「殺して」と言っているようなもの。
それにポーションの腹溜まりもヤバイけど、何より……液体の飲み過ぎで疲労感が出始めたのよね〜。
要するに"低ナトリウム血症"一歩手前だから、これ以上「気合いと根性」でガブ飲みするのは危険だわ。
「ボッチちゃんは、スタミナ大丈夫? 中級神達の気配に晒されながら動いたわけだし、消耗したんじゃない?」
「そうですね。しましたけど、まだ死ぬ程じゃないので平気です。それに、ゆっくり休んでいたら確実にチャンスを失いますので」
「まぁ、そりゃあそうか」
とりあえず、悪あがきだろうと「体内のナトリウム濃度」を戻さないといけないし、以前メグミ君が買ってくれた赤塩でも舐めてミネラルを補給しましょう。
あと……あまり得意な系統じゃないんだけど、水魔法で血中の水分を抜き取って、体内の水分量を減らす!
それから……
<−−− ピロリロリーン♪ −−−>
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モンティートから、「お前も"生贄チーム"に強制編入!」って命じられた〜。
アスタリア、一旦コッチに戻ってきて僕の基礎ステータスを受け取れ。
あと、サーシャちゃんもスタンバイしているぞ!
ストッパーのメグミがエロエロ攻撃で完落ちして爆睡中だから、「首輪外れました! メグミ君が起きるまで限定で、基礎ステータス貸します」だってさ。
それと<ボッチ>にも、スティーブから貸付の申し出がきた。
こりゃあ友情というより、「<水の職人>ギフトでエンドレス・ガチャする日々から、逃れるための生存本能」って解釈が正しいな。
でもまぁ何にせよ、追加のHPタンクを渡せる事に代わりないし、「Mr.ストッパー」が起きて事態を把握する前に、急いで仕事を済ませて証拠隠滅しちゃおうぜ。
byナーティー
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うん、こりゃあ助かる。
メグミ君が起きたらショックで大泣きしそうだけど、この瀬戸際に基礎ステータス2人分のアシストはありがたい。
「ボッチちゃんも、これでいいわよね?」
「はい。モンティート様から箝口令を敷かれたので、ご主人様に直接尋ねられるまでは答えずに済みますし、"チャンスは今だけ"なので助かります」
「OK。じゃあ早速、補充を済ませて作戦に移りましょう!」
「はい」
一旦<サルトー区・ポルカト界>に戻って、マサル君に<器移し>のギフト玉を補充してもらい……
その後、ナーティー&サーシャちゃんから基礎ステータスを借りて復活!
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〜器移し〜
己がもつ「HP・MPの99%および全スキル」を、任意の相手へ渡すことができる。
あくまでも渡すだけなので、相手が強化されている間、移した側のステータスは「その分がマイナスされた状態」になり、1%しかHPが残らないので命の危機にさらされる。
渡したステータスは、返還アクションがなくても、相手が死ぬか30日が経過したら自動で戻ってくるが、もし相手が死ぬ前に渡した側が死んでしまった場合、そのステータスは相手のモノとなり、渡した側は来世以降も激弱状態で転生することになる。
なお渡した相手がステータスの返還を拒否した場合、遅延損害金15%がかかるものの、返還は30日間猶予され、渡した側は激弱状態が継続されてしまう。
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<ボッチ>もスティーブ君から基礎ステータスを借りて、「行ってらっしゃい。あぁ、これでしばらく僕は自由だ! ありがとう!」という叫びで見送られ……
地獄世界に帰ってきてすぐ、「あの人、着実にご主人様の後を追っていますよね? いつ社畜狂人になるんでしょう?」という毒を吐いた。
「ボッチちゃん。人には、"触れちゃいけないところ"があるのよ。さぁ、貴方は闇神城へ行ってらっしゃい。メグミ君が眼を覚ます前に終わらせないとね」
「はい。途中でストップがかかる展開は一番マズイですし、ご主人様のためにもバリバリ働いて、ショッキングな話は全て事後報告で済ませます!」
「えぇ。そうしてちょうだい」
体力が戻り絶好調の<ボッチ>を見送った私は、精神統一してコントロール力を高め、彼に貼り付けた式神を起動させる。
「(上手くやらなきゃ。ミスは許されないわ)」
2人分のHPを追加で借りたことで、最悪の状況からは逃れられたものの……豪快にエネルギーを使って最後まで保たせられるほどの、余裕はないのだ。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






