772話 結界殺し
〜アスタリアside〜
近付いたはいいものの、結界のレベルが高すぎて鉄壁かと思われた闇神城。
しかし主人がアレだと、技術的には完璧でも綻びは出るもので……<ボッチ>が接近可能なエリアの結界に、奇妙な"歪み"が見られた。
より詳しく調査すると、それは「闇神に陵辱され、出産マシーンにされた女神達の怨念」であり……
わずかなリソースを思念の強さで増幅させ、「誰でもいいから闇神を滅ぼしてくれ!」と願い、奴の足を引っ張る代物。
「(というより……そう願わないと心が壊れてしまうから、"最後の拠り所"にしたって感じね。無理もない。さすがに、アレはやり過ぎだわ)」
我々にとって彼女達は、「利害が一致していそうな存在」かつ、タダで味方につけられる可能性もあるため、是が非でも交渉を成功させなければならない!
その代償として、リソース・HP・精神的余裕……全部ゴッソリ持っていかれるだろうけど、ここでやらなきゃ名が廃る!!!!
『『『……憎いぃ…………殺したいぃ…………死ねっ! 死ねぇ…………アイツだけ……は…………』』』
『(うん。貴女達の気持ち、同じ女性としてよく分かるわ。ねぇ、私に力を貸してよ? 闇神が憎いんでしょ? 協力して立ち向かいましょう)』
式神を介して怨念と心を通わせ、「私は貴女達の味方だ」と伝えて、警戒心を解き協力をあおぐ。
闇神にボロ雑巾にされたとはいえ、彼女達は下級神であり、格でいうなら私のはるか上。
ゆえに「力不足」と見做されるかもしれないし、彼女達に神としてのプライドが残っていたら、「頭が高い!」と拒否される可能性だってある。
「(とはいえ、心身共ズタボロにされて藁にも縋りたい気持ちのはず! たとえ相手が神格持ちじゃなくても、"城外にいる者"であれば乗ってくるかも)」
近くにいて喋りやすいからといって、ここで<ボッチ>にバトンを渡した日には、彼女達を激昂させる禁句を連発し、間違いなく交渉がブッ壊れるので……
私は、己の精神にかかる負担を無視して限界まで怨念と心を繋げ、彼女達の心に語りかけた。
その怨念は、決して「知性ある独立体」ではなかったものの、コチラの気持ちを汲み取り「味方」と判断する事はできたのか……
私が語りかけるうちにコチラへの圧を弱め、懇願するように願いを浮かべるようになる。
『『『お願ぃ…………アイツ……を…………闇神を…………殺し……て…………!!』』』
『(うん。私達にとっても、闇神は殺すべき敵。協力してくれれば、きっと貴女達の願いは叶うわ。だからお願い、この結界を内側から壊して)』
『『『結界……ぅぅっ、結界ぃ…………』』』
結界というのは、基本的に外から壊すより中から壊す方が簡単だ。
外敵の攻撃から対象物を守るために張るのであって、味方に内側から壊されることなど想定していないもの。
闇神は元々人望がなく、とんでもない性格の眷属を生み出したり、派閥の配下に裏切られて傷つき、味方不信になっていたのか……
ノーガードとはいかなかったが、それでも「外から破るより、中から壊してもらう方が容易」と判明したし、必要なリソースも少量で済む。
『『『ぃぃよ……ぉ…………。だから…………アイツ……を…………』』』
『(えぇ、大丈夫。貴女達が協力してくれたら、きっと全てが上手くいき闇神を骸にできるわ! だから、私の言うとおりに動いてね)』
『『『…………ぅん……』』』
よしっ、説得成功!
闇神を始末した後、貴女達の精神が救われる保証はないけど……コチラに協力すると約束してくれた以上、私達も誠意をもってミッションを成し遂げるわ。
「(さてと、あとはどうやって<ボッチ>を内部に侵入させるかね。彼女達に私のリソースを渡して制御のもと暴れさせれば、結界は壊せる! でも……)」
城の周りをグルリと兵士が囲んでいる状況で、派手に結界を全壊……なんかしたら、たとえ内側に入れても即バレて殺されてしまうだろう。
「(なら、結界を破壊しない方向でいきましょう。そうね、わざわざ破壊する必要はないのよ。透明にさえできれば、あとは<コマンダー>で突破可能だもん)」
怨念に対して「今から動く」と伝えた私は、<ボッチ>を指定の場所へ移動させて、赤外線カメラを構えさせた。
そして式神経由で怨念にリソースを分け与えて、そのチカラを活性化させ、結界を壊すのではなく、カメラで中の様子を映せるくらい透明化させる。
「(これなら、結界を破壊したわけじゃないから衛兵にはバレない。そして一か八かの賭けだけど、中に<コマンダー>の転移拠点もつくれるわけで……)」
そこを足がかりとして<ボッチ>に闇神城を探索してもらい、可能な限り内部へ侵食すれば、勝率もグッと高くなるはず!
「(OK、撮影し終えたのね。なら3Dデータの編集が終わり、結界内部へ転移できるようになるまで、貴方は身を潜めなさい)」
"転移の瞬間"を敵に見られると、闇神に報告されて全てが台無しになる可能性もあるため、一旦<ボッチ>を引き上げさせた方がいいかも。
大丈夫。
もう「撮影した闇神城内部のデータ」はコチラの手の中にあり、転移先の安全こそ保証できないものの、結界越えの算段はついたのだから!
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






