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762話 唯一の誤算




 アスタリアの調査結果はおおよそ正しく、闇神派閥の中級神達は「闇神が中級神<シュッセ>を狩っている」ことに気づき、「次は自分かも」と慌てていた。


 これまでの狩りは、神殿を急襲し探知妨害用の結界を張ってから粛正していたので、テリトリー外の神達に気付かれなかったが……


 <シュッセ>がリソース砲をぶっ放して逃げ回り、それを闇神が罵声を放ちながら追いかけている今回は、まぁよく目立つ。



 つい先日までの下級神狩りで、闇神に不信感を抱いた中級神は多く、連絡網に参加していたはずの<マヨイ>達とも連絡がつかなくなっていたため……


 中には警戒心をもって監視を強化した者もおり、その者達がこの追いかけっこに気づいて、連絡網に参加している中級神に広めたのだ。



 なお……追いかけっこしている事を知った神は多いものの、<シュッセ>を助けようと手を差し伸べる者は誰一人いない。


 出世の為なら他者を踏み台にしても良いという<シュッセ>の思考は、他の神々にも見透かされており、ナチュラルに嫌われていた。



 それに加えて、彼らは元々「僅かしかない上級神への切符を争うライバル」なのだ。


 そのライバルが闇神に目をつけられ殺されかけていても、手を差し伸べる必要など全くないし、むしろ「ざまぁwww」としか思わないのである。






 だがこの状況に至っても、中級神達はまだ「闇神が全中級神を粛正しようとしている」のか「単に<シュッセ>だけが怒りを買ったのか」判断できず……


 手持ちのリソースや管理世界を捨てて、着の身着のまま他派閥へ逃げるのを躊躇っていた。



 彼等は億年単位の神生活で「変化のない日常」に慣れすぎており、社畜として飼い慣らされたサラリーマンと同じくらい、"臨機応変な行動"が苦手なのだ。


 特に、これまで当たり前のように座っていたポジションを奪われ、中級神のヒエラルキー最下層……


 場合によっては下級神まで落ちる"亡命"を、パッと選んで遂行できる神はいなかった。



 誰しも、自分にとって都合の悪い現実は受け入れたくないし……実際問題、中級神まで全員粛正したら闇神も詰むと、彼等の誰もが思っている。


 そのため「もしかしたら自分は対象外かも」という淡い期待が、現実から目を背けさせて決断を鈍らせ、彼等の未来を刈り取ってしまうのだ。



 とはいえ、彼等もバカではない。


 <シュッセ>の惨状を把握して、「逃げ支度していたものの、逃げ遅れて闇神に襲われた」ことに気付き、慌てて自分達も逃げ支度を始めた。



 闇神が悪目立ちして居場所を晒している以上、支度さえしておけば襲われそうになってからでも逃げられる。


 という……往生際の悪さ全開の、「可能な限り何も失いたくない者らしい選択」だ。



 つまりアスタリアが導き出した結論は、「逃亡は時間の問題」というところ以外、ほぼ全て合っており……


 しかし我が身可愛さに「もしも自分が粛清対象じゃなかったら〜」という幻想に縋り、決断できていない中級神達の逃亡スピードのみ、読み違えていた。






 だが着の身着のまま逃げる判断を下せず、万が一の際にも全ての資産を持って出られるよう、下僕に準備をさせている中級神達は……


 通常時の何倍も感覚を研ぎ澄ませて、闇神の動きを注視しているため、素通りできそうなルートがあるように見えて全然ない。


 どのルートも一ヶ所は中級神の監視域に入っており、<ボッチ>を向かわせたらほぼ確実に見つかってしまう状況だ。



「だけど闇神のみを恐れている様子の中級神達が、テリトリーに潜りこんだネズミ一匹……気にするかしら? たぶん、スルーするわよね?」


 中級神の気持ちになって考えたとき、闇神に襲撃され奪われるかもしれない管理領域など、この状況で「本気で統治しよう」などとは思えない。



 そもそも、下級神狩りの影響で野に放たれた「彼等の元従僕」や神見習いが、安住の地を求めてウロチョロしているのだ。


 キングデーモンの<ボッチ>が管理領域の端をわずかに掠めたところで、「あぁ、また小蝿が彷徨っている」としか見られないだろう。



「つまり、<ボッチ>をより深く潜りこませるなら、今! 私が援護するとかえって悪目立ちしそうだし、アシストはさり気なくおこなった方がいいわね」


 そう判断したアスタリアは、メールでモンティート達に相談した後、<ボッチ>の主人であるメグミに彼の出撃を要請した。


 そして万が一に備えて万全の体調で臨むために、最低限の式神だけ現場に残して、一旦地獄世界から撤退する。






「メグミ君とサーシャちゃんは、いつラブラブタイムに突入してもおかしくないから、お婆も空気を読ませていただきます!」


 カルマのダンジョンから、イチャラブのリスクが一切ないモンティートのダンジョンに移ったアスタリアは、開口一番「明石焼きください」と言い……


 新鮮なタコと高級ダシで作られた、非常に美味しい明石焼きを熱々のまま3人前完食し、弁当箱にも4箱分詰めさせた。



「メグミ君の<セレクト自販機>って、本当に便利よね〜。保温できる水筒付きのお弁当箱なんて、この世界じゃ絶対手に入らないもん」


 材料および弁当箱代は全額モンティート持ちだが、そんなものは気にしない。


 決して恨んでいる訳ではないが、飯テロの落とし前は財布攻撃でつけるのが、<農民>同盟の"お遊び"の流儀なのである。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
となるとあと狩られそうな中級神はせいぜい1人か2人ってとこかな。危機感より願望優先させてるメンツでもシュッセの「次」が狙われたら速攻で逃げるだろうし、そこまでは注意深く闇神の動向を見ているだろうしなぁ…
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