754話 狩りは続くよ、どこまでも
数秒間迷ったものの、以前<マヨイ>に最後っ屁として付与された<悩み増幅><迷い増幅>は、もう封印されており……
あくまでも「下級神より格下の、神見習いが2体殺られただけ」なので、闇神はすぐに切り替えて、次の中級神狩りに移った。
中級神狩りは「時間をかけられない戦い」であるうえ、彼は四方八方から恨まれているため、犯人を探そうにも「思い当たる節」が多すぎて……
どれだけ真剣に考えても、「何が原因か」短時間で答えを導き出す事などできないからだ。
そもそもの話……<マヨイ>を殺した後、同じ中級神の<ムコウミズ><フウン><サギ>の神殿も急襲し、彼等を狩りリソースを奪ったものの……
この3体も中級神だけあって一筋縄ではいかず、三者三様の最後っ屁をかまされ、闇神は疲れ果てていた。
そんななか、「答えの出ない問い」に時間を使って消耗し、未来の己をさらに追い詰めるようなマネは出来なかったのである。
「たとえ叛意を持つ者がいたとしても、リソース源を"発酵した肥溜め"の中に隠して、回収しようとした私を糞尿まみれにした、<フウン>よりはマシだ」
<マヨイ>と同じように、「慎重さを欠く性格になってしまう神力」を、最後っ屁で闇神に押し付けた<ムコウミズ>。
メグミさながらの糞尿攻撃で、闇神を物理的に"不運"にした<フウン>。
殺害前の拷問中に、闇神が以前投資した案件が「巧みに仕組まれた詐欺」であり、「大損確定」という事実を暴露した<サギ>。
全員、部下として仕えたくないタイプの神ではあったものの……中級神だけあり一筋縄ではいかず、潰すたびに闇神の心も擦り切れていく。
結果として、中級神狩りを始めたばかりの頃は"使いすぎて干からびた"だけだった<ピー>が、ストレス性の勃起不全になってしまった。
「次のターゲットは、中級神<シュッセ>。出世欲がとにかく強く、自分が成り上がるためなら他者を貶めてもいいと、本心から思っているクズだ」
まさに「劣化版<闇神>」であり、闇神は彼のことを嫌ってはいたものの、比較的使い勝手はいいので、側に置き仕事をさせていた。
しかし……一旦劣勢になった以上、<シュッセ>は必ず闇神を裏切り他派閥へ移籍するので、そうなる前に仕留める必要がある。
「隣の領域を治める中級神<ホラフキ>と、ルート上にいる中級神<ナルシスト>は、無視していいだろう。動きが鈍いタイプだから後からでも間に合う」
そう考えて、ボロボロに傷ついた身体と心を引きずり、<シュッセ>の神殿までやってきた闇神は……
そこで支配領域を捨てて他派閥へ移ろうと企み、リソースを回収して神殿を閉じたばかりの<シュッセ>と遭遇。
「えっ、闇神……様? まさか、もう魔の手が……っ!? チッ! 一歩遅かったか!」
<シュッセ>は<マヨイ>に比べると決断が早く、以前から他派閥への渡りもつけていたので、いつでも逃げることができる状態だったが……
貯め込んだ財産や、支配領域から得られたリソースを失うのが惜しくて、夜逃げ支度に時間がかかり、ギリギリのところで闇神に見つかってしまったのだ。
「クククッ! 許可もなく神殿を閉じ逃げようとするなど、赦されることではないが……此度ばかりは大目に見てやる。今すぐ滅びて我の糧となれ!」
自分を裏切った<シュッセ>を見て、ブチ切れるかと思われた闇神だが、意外にも彼は<シュッセ>を赦した。
すでに神殿には封印が施されており、キレイな状態で奪い取ることができるうえ、リソースも「持ち運び可能なかたち」でまとめられているため……
<フウン>の神殿で肥溜めからリソースを引きあげた時のように、悲惨な目に遭うことなく、楽々全てを奪い取れる……と判断したからだ。
もちろん自分自身を何より優先するタイプの<シュッセ>が、そんな理不尽な命令に従うはずもなく、何とか闇神から逃げようと足掻く。
「惜しいが……っ、命には代えられん! リソース砲、発射!!」
持ち運べるよう整えて背負っていたリソースを、ケチることなくブッ放ち、そのエネルギーの反動を利用した超高速移動を試みたのだ。
「なっ!? クソッ! テメェ、やりやがったな!」
一ヶ所にまとめられて「楽々手に入る状態」だったリソースを、ジェット噴射で散らされ台無しにされた、闇神としては堪ったもんじゃない。
すぐにリソース捕捉用の網を用意して、ジェット噴射されたリソースを密度が濃い部分だけでも回収し、その後<シュッセ>を追いかける。
だがその作業でロスした時間が、<シュッセ>にとって大きなアドバンテージとなり、「クズ上級神vsクズ中級神」の追いかけっこは長引いた。
そして、彼等が命がけの追いかけっこに興じている頃……<サルトー区・ポルカト界>でも動きが起きる。
メグミから「探索が新たなフェーズに入った」ことを聞き、元巫女であるベテラン魔王<アスタリア>が、「自分も動く」と宣言したのだ。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






