753話 闇神派の支配領域
〜メグミside〜
すごく微妙な気分になったが、僕の特性が受け継がれているなら、勝算のない無茶はしないと思うし……
もう創っちゃったもんは仕方ないので、諦めることにした。
生き恥感が半端ないが、皆いい子だから「ちょっと変わった方法で生まれた子供」と割り切り、育てていこう。
「皆が頑張ってくれたお陰で、地獄世界のマッピングも順調に進んでいるしね。とはいえ、まだ全容は見えない。どのくらいの規模なのか……」
<−−− ガチャッ −−−>
「マスター、サーシャ様。お忙しいところ失礼いたします。<ヒッキー>より、地獄世界の全体図が推測できるようになったので、データを送る……と」
「えっ? ありがとう。さっそく見せてもらうよ」
ちょうど考えていたところに、<シツジ>君が答えを持ってきてくれたので、<ヒッキー>と現場班の努力の結晶を見せてもらう。
「おぉ〜、こんな形になっているのか!」
<ヒッキー>が推測した闇神派の支配領域データは、中央に闇神<スティグマ>の神殿があり、その周りを配下の中級神・下級神が囲むような形で……
端の方に行くほど神殿の密度が低くなっており、その中にも濃淡があって、人間社会の「都会と地方」に近いイメージとなっていた。
「でも、これってどうやって推測したの? まだ闇神の神殿はおろか……中級神の神殿とも、ほぼバッティングしていないのに……」
「魔素の濃淡と、<ボッチ>が神見習いの皮を剥ぎながら喋らせた情報。これまでに発見された神殿跡の位置関係を総合すると、こうなったそうです」
そうか!
<ボッチ>が戦った神見習い2体は、闇神が創り出した"失敗作"だから、自分が生まれた場所である、闇神の神殿についても知っているんだ。
それに神殿跡の位置関係を見れば、「外周部がどうなっているのか」くらいは把握できるし……
キングデーモンが感じとれる「魔素の濃淡」まで踏まえると、全体図を推測することも可能。
「もう少しかかるかと思っていたよ。シツジ君。頑張ってくれた皆に、"ありがとう"って伝えてちょうだい」
「かしこまりました。闇神派閥から離脱した神の支配領域や、その他の派閥とやり合っている領域もあるかもしれないので、完全とは言えないそうですが……」
「それでも充分助かるよ! 今後はこの推測データに沿って、外周部や弱点になりそうな場所を探る感じ?」
「はい。やる気のない中級神もいるようなので、そういう"通りやすい所"から調査して、カルマ様の<コマンダー>の拠点を可能な限り内側につくる流れです」
予測データに刻まれた「<コマンダー>の転送可能拠点」は、現在のところ「下級神しかいない最果て領域の、やや内側」に数十ヶ所置かれている。
今後の課題は、それを「中級神の支配領域の内側。闇神の直接支配領域に入るギリギリのところ」まで中央に寄せ、急襲しやすい状況へもっていくことだろう。
この予想マップを見る限り、闇神は隙のない布陣を敷いているが……それはあくまでも、配置的な隙がないというだけのこと。
下級神の総入れ替えでガッタガタになっており、かつ中級神にも不信感を抱かれている状況じゃ、到底"完璧"とは言えない。
「でも……それを成すためには、コチラも危ない橋をたくさん渡らなきゃいけないね。迷惑をかける」
「勿体ないお言葉でございます。ご主人様の駒として働き役に立つことを、生き甲斐にしている現場の眷属達は、喜ぶと思いますよ」
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メグミと<シツジ>が会話を交わし、主従の絆を確かめ合っていた頃……闇神もまた、己が生み出した眷属の変化に気付いていた。
「おかしい。立て続けに2体消された。別に消されたこと自体は構わない。<タイダ>も<シキヨク>も、私自ら殺そうか迷ったレベルのゴミだ。だが……」
メグミはまだ、己の眷属を失ったことがないので知らないが、<眷属創造>の使い手は「自らが生み出した眷属の死」を察知できる。
つまり<タイダ>と<シキヨク>を生み出した闇神も、彼等が死んだ瞬間、その消滅を察知していたのだ。
「<タイダ>の死は理解できる。あのゴミは、格下にも負けそうな失敗作だからな。しかし、気持ち悪くて近寄りたくもない<シキヨク>まで連続とは……」
眷属と視界や感情をリンクしていなかったので、闇神は「2体の死の経緯」を把握できていない。
だが冷静に考えて、<シキヨク>に近付き貞操の危機を感じながら彼と戦い殺すなど、余程の理由がなければやりたい奴なんていないだろう。
なんせ、戦っている最中も下半身をジロジロと見られ……好きあらば尻を狙われるのだ。
極太の腕で貫かれ、惨めに死んだ魔族達の末路を知っている闇神は、主人のくせに一歩引いてしまうほど、<シキヨク>に対して深いトラウマを抱いている。
「偶然? それとも誰かが、私への叛意を眷属に向けたのか?」
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






