749話 ボッチvsシキヨク
空気の読めない<ボッチ>に、「事実だけど言葉にしちゃダメなこと」をストレートに言われ、発狂した<シキヨク>は……
格下のキングデーモンでしかない<ボッチ>を、力尽くで押さえこみ、凌辱の限りを尽くして殺そうと、筋骨隆々とした腕を振り上げ殴りかかった。
<−−− ゴゥッ!! −−−>
人格面に難があるのは同じでも、堕落した生活をおくっていた<タイダ>と違って、<シキヨク>は肉体労働要員としてこき使われていたため……
神見習いのスペックを存分に活かせる肉体を持っており、その拳も「通常のキングデーモン」なら一撃でミンチにできる程の破壊力がある。
<−−− ヒュンッ −−−>
だが<ボッチ>は、キングデーモンの中でもトップクラスのスペックを誇る個体かつ、マサルの基礎ステータスが丸乗りしている状態。
ゆえにカウンター攻撃を繰り出す余裕こそないものの、<シキヨク>の攻撃を避けること自体はでき、初撃を無傷で乗り切った。
「チッ、"穴"の分際で!」
「顔面偏差値も品性も最底辺の、脳筋オカマ? なんか、闇神の眷属って変なのばっかりだなぁ〜。どうして、こんなゴミばかりなんだろう?」
この一撃で勝負がつくと思っていたのに、楽々かわされた<シキヨク>は驚きと怒りで声をあげ、それを聞いてボッチも即反撃。
肉弾戦でカウンター攻撃を繰り出す余裕はないものの、得意の口撃なら、余裕で「殺傷力100倍」のカウンターをブッ放すことができる。
「なっ、ナメてんじゃないわよ!!!!」
そして怒りでさらに筋肉が盛りあがり、肉ダルマ度が増した<シキヨク>の二撃目も、冷静に軌道を読んでかわしカウンター口撃を叩きつけた。
「うわっ、強烈〜!! 風圧と共にワキガの激臭が飛んできた! 目に染みて涙が出ちゃう……。これって、慰謝料とかもらえないのかなぁ?」
「テメェ、マジでいい加減にしろよ」
怒りの感情が限界突破して、口調を取り繕う余裕すらなくなり、素が出てしまった<シキヨク>は、本気で<ボッチ>を潰しにかかるが……
回避に特化した<ボッチ>を仕留めることができず、時間ばかりが過ぎていく。
とはいえ、回避のみじゃ<ボッチ>に勝機はなく……スタミナ勝負に持ちこむのも、負けた時の蹂躙リスクが怖すぎる。
そんな一見すると<シキヨク>有利な状況の中、<ボッチ>は後ろ手でスマホを操作して、カルマ経由でメグミにメッセージを送り、とある催促をしていた。
そして、本気で悩んだ末……"恥"よりも"親バカ感情"を優先して、<遠隔通商>で<ボッチ>所望のアイテムを送った、メグミの尊厳と引き換えに……
彼は、ヒッソリと反撃を開始する。
「(ご主人様が要望どおりのアイテムを送ってくれたとすると、目・鼻・口etc.の粘膜を結界でガードして、さり気なく敵にかませばいい!)」
メグミが<ボッチ>の要請を受けて渋々送ったもの……それは、特殊な素材をふんだんに使った上級貴族御用達のスプレー型媚薬。
「(失敗すると、コイツの前で感度Maxとかいう地獄になるけど、<シキヨク>……要するに、性欲のバケモノなんだろ? なら、我慢比べをやれば勝てる!)」
<ボッチ>は<シキヨク>最大の欠点である、「己を滅ぼすという事を理解していてもなお、性欲を我慢できない」ところを突き、デスマッチを仕掛けたのだ。
そして……<シキヨク>の攻撃をかわしつつ、<水の職人>製当たりアイテムでわずかな傷をつけ、スプレー型媚薬を噴霧し続けること15分。
しっかり腰を入れて攻撃していた<シキヨク>の動きが、明らかに鈍くなり、息も絶え絶えになり始めた。
普通なら「うっすら効く」程度のモノでも、<シキヨク>は元の性欲が強すぎるがあまり己を抑えられなくなり、戦闘中に発情してしまったのだ。
「この……っ!」
さすがの彼も、この状況で体の力が入らなくなり鋭い攻撃ができなくなったら、キングデーモンに逆襲されて詰むことくらい理解している。
だが理解していても、己の魂に刻まれた深すぎる業に抗うのは不可能だ。
それができたら、彼は<シキヨク>などという名前になっていない。
「あっ……あぁ…………」
そして<シキヨク>が腰砕けになり完全に動けなくなったところで、攻守が入れ替わり、<ボッチ>が彼をタコ殴りにし始めた。
<シキヨク>も結界を張り魔法で応戦しているが、得意の肉弾戦を封じられ、繊細なマナコントロールも「エロで頭がいっぱい」でできないため……
余分にマナを注いで辛うじて魔法を成立させ、結界の維持に努めるしかない。
結果として<シキヨク>は、媚薬の効果が切れて復活を果たす前にマナ切れとなり、さらに倦怠感が押し寄せて動けなくなったところに……
<ボッチ>の生皮剥ぎ攻撃をくらい、「自分が蹂躙される側の殺害プレイ」で人生の幕を閉じた。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






