745話 子は親に似る
〜メグミside〜
くだらないプライドで飯テロ合戦を繰り広げた僕とマサルは、胃が油でテロッテロになるまで肉を食い、双方ダウンで引き分けた。
焼肉で、「どっちが多く美味しい飯を食えるか競争」はダメだ。
競っているうちに胃が限界を迎えてリバースしかけ、ゲロの香りに包まれた未消化の肉を、根性で無理やり飲みこむこと3回。
写真データは"映えるもの"だけを使っているので綺麗だけど、僕の口内はまだ微妙にゲロ臭が充満している。
「僕よりマサルの方が、ヤバイかもしれないけど。ニンニクの食べ過ぎでトイレ直行って……下手したらアイツ、体力消耗でHPが0になって死ぬぞ」
普段なら「ざまぁ」と言いつつ笑っていられる展開だが、さすがにHPが通常時の1%しかないと、死亡リスクが出てくるので心配だ
悲惨な死因で笑えるのは、「死んだ奴が敵の場合」と「ギャグの中」だけだからね。
「メグミ様。ボッチより緊急連絡が入りました。戦果を得られたので、一旦<恵のダンジョン>に戻りたい……と」
「了解! マサルも"トイレ籠り中"で使いものにならないし、遠慮なく戻ってくるよう伝えてくれ」
「かしこまりました」
眷属達にとっても<ボッチ>と<ヒッキー>の性格は衝撃的なのか、二人を普通に迎え入れただけで、なぜか僕は彼等から「温厚な主人」扱いされるように。
自分で生み出した眷属を自分で管理するのは、当然だと思うけど……
世の中には部下をポイ捨てしまくるクズもいるので、彼等の価値観だと、案外そうでもないのかもしれない。
<−−− ヴーーンッ! −−−>
「ご主人様、ただいま戻りました。敵と遭遇して直接戦闘になり、其奴のリソースを丸ごと奪えたので、それを詰めこんだ<御霊水筒>を処理してください」
そんな中、焼肉臭いダンマス部屋に戻ってきた<ボッチ>は、開口一番に己の手柄を宣言し、リソース入りの<御霊水筒>を僕にさし出す。
だが視線の軌道を見た感じ、「<御霊水筒>の件」は大義名分であり、実際は「手柄を褒めて欲しかっただけ」の可能性が高く……
そして焼肉の香りを嗅いで興味がそちらへ移り、「自分も食べたい」と思い始めたってところか。
「ボッチ、良くやった! お前も疲れただろう。あまり長時間の休憩はとれないかもしれないが、そこにある肉は全部焼いて食べちゃっていいよ」
「…………!! ありがとうございます。遠慮なくいただきます」
言葉どおり遠慮のカケラもなく、食い倒れている僕と直立不動で隣に立つ<シツジ>君を横目に、ボッチ焼肉を始めた<ボッチ>は……
見事に「グラム単価が高い肉」から平らげていき、わずか30分で僕が残したお肉の8割を食べ切った。
彼の承認欲求を満たして、より気持ちよく働いてもらうために、食事中にさり気なく聞き出した自慢話によると……
<ボッチ>は空白地帯の調査中に、格上である神見習い<タイダ>と遭遇。
常識的に考えると"逃亡一択"の場面だが、<タイダ>の体が贅肉に包まれているのを見て「いけるかも」と思い、勝負を挑んで仕留めたそうだ。
<御霊水筒>の他に、証拠として提出された「神見習い<タイダ>の生皮」および「皮を剥かれた首級」は……
グロすぎて、焼肉で腹が膨れた僕には"催吐剤"にしか見えなかったけど、<ボッチ>が一生懸命戦って勝ち取った成果だもん。
大袈裟なくらい褒めて彼の自尊心を満たしつつ、次からは無理しないよう注意しなきゃね。
「ボッチ。命を張って勝ち取った初めてのリソースだし、お前に使い道を決める権利を与える。どう使う?」
「そうですね。ご主人様の勢力は、敵と比べると貧弱だと思われるので、そのリソースを使ってもっと多くの眷属を生み出し、駒の数を増やすべきかと」
「そうか。望むなら、お前自身の強化に使ってもいいけど……」
「私も強くなりたいです。だけど私個人の戦闘力が上がるより、私と同格の眷属がもう一体増える方が使い勝手がいいので、増員をオススメします」
「うん、分かった。<ボッチ>は、深く知るとすごく良い子なんだよなぁ〜」
自分の損得より味方全体の利益を優先でき、それを「当然のこと」と思える者なんて滅多にいない。
毒舌が酷すぎて、「内面を知るフェーズ」までたどり着いてもらえないタイプだから、ボッチになってしまうだけで……
もし内側の素直な面まで見たら"ギャップ萌え"で悩殺されるし、「普段の毒舌くらい許せる」って人も出てくると思う。
<−−− ヴーーンッ! −−−>
「メグミ〜。<ボッチ>が神見習いを倒したって本当か!? 快挙じゃねぇかよ!!」
「うわっ、臭っ!! えっ? 童貞さん、ちゃんと手洗いました? というか、ズボンにウ○コ付いていません?」
「あっうん。やっぱり、ボッチはボッチだな。あと、手は2度洗ったからキレイだぞ」
このとおり、本当に素直で思ったことをそのまま言ってしまうので、彼の良き理解者が現れる日は遠そうだが。
あとマサル……手は洗ったんだろうけど、僕でも分かるくらい服に汚臭が染みついているから、ここのソファーには座らないでくれ。
<恵のダンジョン>の備品は、サーシャも頻繁に触れる物が多いし……そのままエロいムードに突入することもあるから、汚染されると困るんだよ。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






