743話 敵との遭遇
どちらがより相手の嫉妬心を引き出す飯テロに成功したか……というガキ臭さ極まる勝負を、メグミとマサルが真剣におこなっていた頃……
カルマの<コマンダー>で新規開拓した、地獄世界のポイントに乗りこみ、そこから空白地帯の調査をしていたボッチは無双し始めた。
「<駒つくりの筆>で生み出した下僕だっけ? ソイツ等、本当に敵の存在を認識して消えたのかよ。敵なんて何処にもいないじゃん!」
端の方にある空白地帯から調査したため、下僕がニアミスした敵はすでに其処にはおらず、他派閥の支配領域へ逃げこむか自滅してしまったのだ。
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〜駒つくりの筆〜
この筆にマナを込めて生物を描くと、その生物が実体となり、描き手の指示に従って動いてくれる。
かなり細かい指示も与えられるが、衝撃を受けると実体を維持できなくなり、崩れてその場で滅びてしまうので、何でもかんでも任せるのは難しい。
なお"衝撃"と認識されるボーダーラインは、描くとき込めたマナに比例するため、用途によってマナの量を変える必要あり。
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「ネズミとか蛇しか生み出せないんだろ? たぶん乗せられるマナの量も少なくて、適切な判断ができるほどの知能はなかった。そういう事だよね?」
そして……ボッチの言葉を聞いてブチ切れ、後輩に鉄拳制裁をかます先輩眷属もいないため、ボッチの毒舌は加速していく。
元々、恐怖を感じにくい体質かつ、生まれたばかりで世間の恐ろしさを知らない彼は、自分が大好きな「暗く静かな環境」で働けて……
彼本人も気付いてはいないが、地味にテンションが上がっているのだ。
だが……何も起きないまま1日目を終え、2日目の空白地帯調査に入ったところで、メグミが恐れていた事態が起こる。
<駒つくりの筆>で生み出された下僕がニアミスした敵が、移動中の逃亡者ではなく、神殿に住む中級神だったのだ。
「あっ、コレ超絶マズイやつだ! 童貞さんのステータスが乗っているから、逃げ出すくらいの事はできるけど……真面目に戦ったら負ける」
生意気すぎて、「プライドが限界突破している」と周囲から評されるボッチだが、自分の実力は正確に見積もれており、勝てないことを認める能力もある。
そのため、中級神の神殿があることに気付いた僅か0.3秒後……すでに彼は「空白地帯の外」まで逃げており……
侵入者の存在に気付いた中級神が出てくる前に、カルマに「別地点への転移」を依頼して、余裕をもった回避まで披露した。
「あの中級神が僕の存在に気付いてどう動くか、結構興味あるけど……今戻ったら、最悪バッティングからの即死だよね? 諦めるしかない」
こうして、「ボッチと敵の遭遇:第一弾」が終了。
だが……脳筋ノルマ野郎化した現場調査チームが、次々と新しいエリアの調査をおこない、それに伴って調査不可の空白地帯も増えていくため……
ボッチは、休む間もなく次の仕事へとりかかる。
そして次の現場でも、"敵との遭遇"を果たしてしまうのだった。
「誰だ、お前。キングデーモンの分際で、<神見習い>だった俺様に頭を下げないなど、あってはならぬ事だぞ!」
ボッチが遭遇したのは、かつて闇神が<眷属創造(SSランク)>生み出した<神見習い>であり、下級神討伐のさいコソ泥をはたらき……
そこで吸った甘い汁が忘れられず、比較的綺麗なまま残っていた下級神の神殿跡に住みつき、「下級神ゴッコ」を始めてしまった奴だった。
もちろん彼の生みの親である闇神が、そんな事を許すはずもなく、この<神見習い>は中級神狩りの途中で見つかり、即時ひねり殺される運命にあった。
だが、その前に空白地帯調査中のボッチと出会ってしまい、メグミと闇神の「眷属による前哨戦」が幕を開けたのだ。
「<神見習い>は初めて見た。"敬うべき存在"だとインプットされた知識にはあったが……アンタを見る限り、一概にそうとも言えない感じか?」
「何だとぉ!?」
「私にケンカを売る前に、鏡に映る自分の顔と腹を確認しろよ。そのランクの個体のくせして、腹も頬肉もブヨブヨなんて……どれだけ鍛錬をサボったんだ」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
ボッチの先制口撃を受けた<神見習い>は、絶句し怒り狂ったが……彼の発言はおおむね正しい。
この<神見習い>は、使用人として闇神より派遣された時代から、主人代行の下級神が文句を言えない立場にあったのをいい事に、好き勝手に飲み食いし……
ロクに働きもせず怠惰な生活を続けたため、デブ化する事など滅多にない上級悪魔でありながら、見るも無惨な体型になってしまったのだ。
とはいえ個体のスペックは、マサルのバフが乗っていない状態のボッチより高く、戦えばそれなりに強いので……
格下にバカにされる事など殆どないのだが、そういう空気が読めるボッチではなかった。
「童貞さんからは、"危なかったら躊躇わず逃げろ"と言われたけど……コイツ相手なら大丈夫だよね? デブで、私の前に自重と戦わなきゃダメそうだし」
こうして、ボッチの口撃は続いていく。
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






