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733話 優柔不断な最後っ屁




『最初のターゲットである中級神<マヨイ>を殺しました、はい次へ行こう!』


 という訳にはいかない。


 闇神<スティグマ>の目的は、中級神達を殲滅することだけでなく、その後も派閥の格下げを最小限で食い止めて、他派閥の介入を防ぐことなのだから。



 その為には、ただ中級神を粛正するだけでなく……粛正後、その中級神が持つリソースを根こそぎ引っこ抜き、奪い取らなければならない。


 そうしないと、中級神を堕とせば堕とすほど「闇神派閥全体が持つリソース量」も減ってしまい、闇系派閥序列1位の地位を脅かされるからだ。



 ゆえに早く次の神殿へ向かいたいなか、闇神は中級神<マヨイ>の亡骸からリソースを引き抜き、彼の魂を貪り食った。


 そして神殿内に残された宝物や、彼が管理していた上納予定リソース等についても、奪いにかかる。



 しかし……


「おかしい。次の上納予定日まで間もないというのに、なぜこの程度のリソースしか貯まっていないのだ? マヨイは、上納をサボるタイプじゃなかったはず」



 中級神<マヨイ>は、闇神が想定していた程のリソースを神殿内に保管しておらず、もう殺した後ゆえ問い詰めることもできない。


 また……



「奪い取ったアイツの記憶にアクセスしようとすると、自動的に私の黒歴史が想起される。これは……アイツ、記憶にセキュリティーをかけていやがったな!」


 リソースの在処を調べようとしたのに、闇神の脳内で再生された記憶は、「後宮の女神達を陵辱しようとして、<ピー>が機能しなかった」黒歴史。






 そう……<マヨイ>は死ぬ覚悟こそ持っていなかったものの、「何かあったとき」に備えて、記憶領域に強固なセキュリティーをかけており……


 加えてリソースも、「もし己に何かあり神殿内の資産を奪われたとき」に備えて、神殿外にも分散保管していたのだ。



 その分散先は100を超え、全てを回収していたら時間が無駄に過ぎて、他の中級神達が「<マヨイ>の死」に気づき……


 闇神が中級神狩りを始めたことが序盤でバレてしまい、彼等にタッグを組まれるか、リソースごと派閥替えされて闇神派閥は没落してしまう。



「あのゴミ野郎……一息に殺すのではなく、神格を剥いで元下級神同様、<サルトー区・ポルカト界>へポイ捨てしておくんだった!」


 <マヨイ>の性格からその可能性に気付いた闇神は、激昂するが……後の祭り。



 彼に残された選択肢は、少量ずつ世界各地に分散保管された、何処にあるかも分からない「<マヨイ>の資産」を探して、時間を浪費するか……


 「<マヨイ>の資産」を全て奪うのは諦めて、次のターゲットを粛正しに行くかの、2つだけである。






「全てを奪うのには失敗したが……そうは言っても、<マヨイ>の魂とアイツ本体に格納されていたリソースは食えた。奪取率は50%を超えるだろう」


 そしてココでも、<マヨイ>が遺した最後っ屁が炸裂。


 なんと彼は、己の魂と内在リソースに「ウイルス型の神力」を仕込んでおり、彼本体のリソースを丸ごと奪った闇神は、それに感染してしまったのだ。



「しかし……だからと言って、中級神のリソースを半分弱逃すのは惜しい。もう少し丁寧に遺品を漁って、保管場所を特定し、大口だけでも奪い取りに行くか」


 普段なら5秒で結論が出る問題だが、神力<悩み増幅><迷い増幅>のせいで闇神は優柔不断体質になってしまい、ムダに迷い続ける。



 数時間、リソースを回収するでもなく神殿の後片付けをするでもなく、ただ突っ立ってムダな思考を巡らせた後……


 己の状態が、「<マヨイ>そっくりの優柔不断野郎」になっている事に気付いた闇神は、そこで初めて「魂内に罠を仕掛けられていた」ことを悟る。



「あの野郎……殺すっ、絶対に来世でも惨殺する!!!!」


 脳の血管が千切れるほど激昂し、「<マヨイ>を来世で惨殺する」と叫んだ闇神だったが、すでに彼の魂は食われているので二度と転生することはない。



 その事実に気づいた闇神は、怒りと悔しさでボロボロと涙を流しながら、己が感染してしまった「ウイルス型の神力」を封印し……


 自分が格下の中級神ごときに、ムダに時間・労力・精神力を消耗させられた事実を、正しく認識して愕然とした。






「ハァ〜。各地に散らばったリソースの回収など、無理に決まっているだろう。奴の遺品の中から金目の物を全回収したら、とっとと次の神殿へ行く」


 またしても黒歴史が増え、<マヨイ>の神殿に留まる事自体が嫌になってしまった闇神は、遺品の回収も最低限で済ませて神殿から立ち去った。



 目標としていたリソース回収を半分程しか達成できず、そのくせムダに時間をとられて、最初から躓いた闇神の中級神狩り。


 「中級神は下級神と違い、殺せはするが厄介」……上級神界隈で暗黙の了解となっているこの説を、身をもって立証したカタチである。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
うーん、やるねぇ、中級神。ただではやられず相手に無駄手間とらせる強かさがぐっど。 そして現状動かせる駒がないのが露呈したな、闇神。 分散させてるマヨイの隠し財産を人海戦術で探す余裕がないみたいだしな…
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