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730話 当事者だからこそ気づかない


〜メグミside〜




 仕事が終わったら食べようと、密かに楽しみにしていたサーシャの手作り弁当を無断で食べられた挙句、「マズイ」と言われた僕はキレそうになったが……


 作った張本人のサーシャに、「落ち着いて! メグミ君にもヒッキーにも、また作ってあげるから」となだめられて、黙るしかなくなった。



 「マズイ」なんて暴言を吐いた相手に、サーシャが時間をかけて料理を作ってあげる必要など、ないと思うんだけど……


 ショックを受けるでもなく、冷静に「そりゃあ冷めていたらマズイでしょう」と分析して、ヒッキーにも情けをかけてあげる優しさと強さ。


 咄嗟の対応でその人の本性が分かるというが……やはりサーシャは、僕なんかには勿体ないくらい素晴らしい彼女だ。



<−−− コンコンコンッ! −−−>


『マスター。お忙しいところ大変恐れ入りますが、地獄世界の最新データをいただけないでしょうか? 先程から、ヒッキー様の催促がですね……』



<−−− ガチャッ −−−>


「はーい。ゴメンゴメン! このデータを渡してあげて」


「かしこまりました」



 ヒッキーの奴……マジでサーシャを見習って、少しは空気を読めるようになりやがれ!


 「手作り弁当」とか「温かい手料理」じゃなくて、サーシャの爪の垢を煎じた茶でも飲ませてやろうかな?






 怒りが再燃しかけたものの、シワのよった眉間をサーシャに指でつつかれ、「ここに線が入っちゃうよ?」と言われたので、また黙るしかなくなった。


 加えてモンティート先輩にも、「怒っちゃダメだよ。彼は優秀な大駒なんだから、ダンジョンマスターなら上手く使いなさい」と真面目に叱責されては……



 僕も反省して従うしかなく、ヒッキーが二度と外部の人間に余計なことを言わぬよう、彼専用の仕事部屋を増設。


 そして部屋の中に、最高級の「机・イス・PC設備・ベッド・冷蔵庫」を置き、ヒッキーがストレスなく引きこもれる環境を整えた。



「でも、これって贔屓になりませんかね? 古株のモンスター達や、現場で命を張っている眷属が怒るんじゃ?」


「大丈夫、これを見て怒る子なんていないから。(だって、内装は豪華だけど実質"牢獄"じゃん。引きこもり気質の子以外は、羨ましくも何ともないよ)」



 清潔で空調設備も整っているし……僕は、もしこの環境で暮らせるなら、誰かの指示を受けながら働く生活でも、よろこんで「やる」と言うだろう。


 だけどモンティート先輩の言うとおり、嬉々として専用部屋に入ったヒッキーを見ても、羨ましがるモンスターは誰もおらず……


 地獄世界で任務中の眷属5体も、「良かったね。これで今まで以上に働けるじゃん!」と、労働環境の改善を祝うだけだった。






 僕から見れば、ヒッキーの環境はメチャクチャ羨ましいし、恵まれていると思うのだが……


 皆が「違う」と言う以上、ズレているのは多分僕なので、「不当な優遇」ではなく「必要な労働環境を与えただけ」と結論づける。



 そして……僕が「引きこもり部屋」を用意してすぐ、ヒッキーは目にみえるほど仕事の効率が上がり……


 マップ作製どころか、ダンジョンマスターとしての僕の仕事まで次々と巻き取り始めた。



『マスター。ヒッキー様から、養殖ビジネスで非効率な部分があり、そこがボトルネックになっているから、改善してもよいか? と提案がきています』


「ふむ。失敗したとき戻せるなら、やってくれてOK。あとで変更前後のデータを提出して、どのくらい効果があったか僕に報告するよう、伝えてくれ」



『かしこまりました。改革に多少費用がかかるそうで、それを使う許可も求められております』


「分かった。費用対効果が合うのであれば、総資産の1割までなら好きに使っていい。それ以降は、改革で儲けた金で自走するように」


『承知いたしました。そのようにお伝えいたします』






 ヒッキーの開花に伴って、僕の仕事の粗もゴリゴリ発掘され、「あそこまで空気を読めないヒッキーに、負けたのか〜」と悔しくなったが……


 僕は会社で言うところの「社長」なので、自分より実務ができる部下がいるなら、裁量を与えて任せる。


 それこそが役目だし、ヒッキーを生み出したのも僕だから、彼に負けたところで恥ずべきことじゃない!



「(って、分かっているけど……やっぱりメンタルにくる。僕より優れている人なんて沢山いるから、負けること自体は"仕方ない"って思えるんだけど……)」


 やはり対人面で致命的欠陥のあるヒッキーに負けると、無いと思っていたプライドがうずき、複雑な気持ちになってしまうのだ。



「そりゃあヒッキーは、メグミ君の"引きこもり属性"と"実務能力"を抽出して、それだけで構成したような子だからねー。同族嫌悪は、どうしたってあるさ」


「えっ? どういう事ですか、先輩?」


「あぁ、メグミ君はまだ気づいていなかったのか。くくくっ! 当事者だからこそ、近すぎて気づかないものなんだね」

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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