726話 親の心子知らず
(主に評判の面で)不安要素しかない眷属チームを送り出し、ストレスによる腹痛でトイレに駆けこんだ、メグミの嫌な予感は的中し……
<ノルマ><タスク><カロウ><ガッツ><キアイ>の5体は、カルマのダンジョンで早速その"社畜っぷり"を披露した。
「君達も、危険な御役目を背負わされて大変だと思うけど……頑張ってね。僕も、できるだけアシストするから」
「ありがとうございます! 命をかけてノルマをこなしご主人様に満足いただくのが、我等"眷属"の使命ですので、死んでも地図データは確保いたします!」
「ご主人様の手足となり危険なタスクを遂行してこそ、我々にも価値が生まれ、次の仕事を与えていたく栄誉に預かることができる。死ぬ気でやり遂げますよ」
「えっ……? う、うん。ガンバッテネ。(この感じ……メグミ先輩がノルマ・トリップした時と、同じニオイがするんだけど……。えっ? これ、マジ??)」
運搬と補助を担当するカルマに、眷属達の本性がバレることに関しては、メグミも「避けられない」と諦めていた。
だが運悪いことに、眷属チームがカルマのダンジョンに到着したとき、彼はスティーブ&マサルと打ち合わせをしており、目撃者が3人に増えてしまったのだ。
「ギャハハハハハハッ! マジか! そうか……<眷属創造>って、主人の特性を一部だけ受け継いで、それを増幅したヤバイ奴を量産する神力なのかよ!」
「アレは強烈ですね〜。メグミ先輩、今頃腹痛でトイレにこもって泣いていそう」
<スキル図鑑>で多種多様な能力を使えるため、能力の本質を把握するチカラがズバ抜けて高く、メグミより先に<眷属創造>の詳細を理解したマサル。
そして、執事家系出身者ゆえ他者の気持ちを読むのに長け、メグミの現状をドンピシャで言い当てたスティーブは……
ドン引きしつつも、「面白すぎる眷属チームの爆誕」に笑いを堪えきれず、カルマが<コマンダー>で5体を送り出すのを見届けてすぐ、膝から崩れ落ちた。
「あぁ〜、こりゃあヤベェな。笑いすぎて、腹筋崩壊しちまった。しかも、回復させるだけムダなやつだ」
「癒したところで、どうせまた思い出し笑いで腹筋死にますしね。当分、お腹の筋肉痛は諦めるしかないな」
「やっぱりメグミ先輩は、"見習いたくない先輩No.1"ですね。もうダントツ! だって、ブラック気質の格が違うもん!」
酷い言われようだが、軍隊のように5体揃ってピシッと整列し、一瞬でも先に生まれた先輩であるノルマを立て、彼の指示で動く眷属チームの様子は……
「ブラック労働を極めて社畜の花を咲かせ、ノルマ・トリップしていた頃のメグミ」を彼等に想起させ、笑いを誘発するのだから仕方ない。
酷使されて崩壊した腹筋をさすり、定期的に思い出し笑いで離脱しながらも、何とか打ち合わせを済ませた3人は……
カオスな状況を撮影していた監視カメラの映像を、スマホで「メグミ以外の仲間」に拡散して、各自持ち場へ戻った。
そしてメグミは……料理中に届いた映像を見て油をこぼし、キッチンが惨事になったサーシャの愚痴メールと共に、転送されたブツを見てトイレの中で発狂。
半日ほど外へ出られなくなり、トイレの中から大きな声で執事オートマタに指示を出して仕事を代行させる、惨めな時間を過ごす。
テンション沈みまくりの主人の心情などつゆ知らず、社畜体質の眷属5体は、やる気に満ちあふれた表情で地獄世界へ侵入。
効率重視&リスクヘッジのためバラバラに別れて、各々「与えられたノルマ」をこなすべく、<駒つくりの筆>で下僕を量産しマッピング作業を始めた。
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〜駒つくりの筆〜
この筆にマナを込めて生物を描くと、その生物が実体となり、描き手の指示に従って動いてくれる。
かなり細かい指示も与えられるが、衝撃を受けると実体を維持できなくなり、崩れてその場で滅びてしまうので、何でもかんでも任せるのは難しい。
なお"衝撃"と認識されるボーダーラインは、描くとき込めたマナに比例するため、用途によってマナの量を変える必要あり。
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彼等が「<駒つくりの筆>で生み出された下僕」に与えた指示は、「死ぬ気で駆けずり回り、得た情報を持ち帰って地図に記せ。敵と遭遇したら消えろ」だけ。
細かい指示を与えようにも、土地勘がなさすぎて全て手探りなので、とにかく数を描いて仕事量でカバーする"物量作戦"をとった。
幸いにも彼等が調査中の場所は、下級神粛正後ということもあり閑散としていて、マッピングは順調に進んでいく。
「「「「「ノルマ……ノルマ……ノルマ……ノルマ……ノルマ…………!!」」」」」
目に見える形で成果があらわれ、ノルマの達成率が上がっていくことに、エクスタシーを感じて脳内絶叫しても、探知する敵はいないので問題ない。
もしいたとしても、こんな(ある意味)危ない奴等に「近寄りたい」と思う勇者はごく稀なので、当分"命の危険"はなさそうだ。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






