721話 <小鬼>男子の復活
〜メグミside〜
人生ゲームに興じている間も、僕・スティーブ・カルマの肉体には精霊が張りつき、回復を促してくれるうえ……
滋養のある食べ物も、自販機にお金を入れれば好きなだけ買えるので、時間経過とともに身体のコンディションが良くなっていくことが、感覚で分かった。
そもそも元神狩りでHPが爆伸びしており、以前より明らかに丈夫になっているうえ……
僕はスティーブ&カルマと違い、サーシャに喰われ過ぎて復活に時間がかかってしまっただけ。
つまり根本的な原因(=夜の格闘技)を断って、心安らぐ環境で穏やかに養生すれば、体調なんて半日で戻るのだ。
なお……いくら身体の調子が戻っても、サドとマゾが混在しているカオスなステータス欄や、創りあげてしまった数多の黒歴史は消せないので……
成果だけ享受してマイナス面は全部チャラ、みたいなハッピーエンドは生涯来ない。
「うふぉ〜。『常夏の島でバカンス。女の子が生まれる』だって! 今回の俺、もう子供6人目だぜ! 嫁さんとラブラブデートで赤ちゃんフィーバー!!」
「現実は、嫁さんどころか彼女もおらず……そのうちセカンド童貞の仲間入りをする、禁欲系ギフトの恩恵受けまくり魔王だけどね」
「テメェ、現実を直視させるんじゃねぇよ! 職場にフリーの同世代女子がいないんだから、仕方ねぇだろう! ゲームの中でくらいハメを外させろ!!」
「あ〜うん、ドンマイ!」
それでもゴシップ誌で世界中に「虚偽の悪行」を流されて、記憶どころか記録まで真っ黒に染まってしまった、マサルよりはマシだ。
というかマサル……「臭い系男子」に豹変したり、<禁欲の破壊王>みたいな禁欲系ギフトの恩恵を受けまくっておいて、まだ彼女を諦めていなかったの?
もうとっくに開き直って、「メグミの自販機で買える"大人グッズ"だけが、俺のパートナー!」マインドになっていると思っていたよ。
皆で仲良く遊んだり、サーシャが作ってくれた滋養飯を食べているうちに、身体だけでなく心のコンディションも回復した僕は……
慰労パーティーが終わる頃には完全復活を果たし、またバリバリ働ける状態になった。
スティーブとカルマは、デスマーチから解放されたのが僕より遅い分、回復にもう暫くかかるけど……
それでもモンティート先輩の見立てでは、明日の朝には"コキ使える状態"まで戻るそうだ。
僕達のレベリングを支えつつ、ライバル魔王の"足引っ張り攻撃"を防いでくれた先輩方も、老齢なので「それなりに疲れた」とは言っていたが……
彼等は元のスペックがバグっているうえ、エリート基準の「疲れた」であって一般的な価値観だと「超元気な爺婆」なので、身体にガタがくる心配はない。
日常的に殺し合いが起こる魔王業界で、初期の頃から生き残りランキング上位を独占してきた実力は、伊達じゃないのだ。
そして完全回復した僕は、これまでのお礼も兼ねてサーシャの日常業務を引き受け、彼女が鍛えるための時間をつくっている。
僕達は「一方だけが得する関係」ではなく、多少歩みが遅くても二人で支え合い、「互いに尊敬できる人生のパートナー」になりたいから。
サーシャが100尽くしてくれたら僕も110返せるように、自分ができるやり方で彼女に貢献するんだよ。
それでもサーシャは、(過剰"据え膳"のマイナスを差し引いても)すごく出来た人で、息を吸うように僕を支えてくれるので……
「ちゃんとお返しできているか?」「そんな彼女に相応しい男になれているか?」と、日々悩んでしまうのだけど。
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メグミが「過労地獄&無限ハッスル」からの完全復活を果たし、無自覚にリア充ムーブをかましている頃……
闇神はようやく"中級神狩り"の仕込みを終えたものの、「萎れてしまった<ピー>問題」は未だに解決しておらず、虚無感のなかでスッポンを食っていた。
「栄養素として、スッポン100匹と生き血5Lを摂取した。ここまでやれば、さすがに成果は出ると思ったのだが……何故だ? どうして元気にならない?」
実はすでにスッポンの効果は出ており、闇神の<ピー>は多少回復している。
しかし……それ以上に、無理やり搾り出して枯らしてしまう日々が続いているため、パッと見だと効果があるように思えないだけだ。
「まぁいい。どのみち、中級神の粛正は時間との戦いになるからな。下級神をシバいた時のように、粛正と子作りを兼務する余裕などない」
そう自分に言い聞かせて、己を正当化する闇神だったが……いくら言葉を尽くしたところで、漬物のように萎びてしまった<ピー>が復活する訳じゃない。
男のプライドに直結する精力を失い、心にポッカリと穴が空いてしまった闇神は、口から出る言葉とは裏腹に、絶望感あふれる表情で立ちあがり……
「最後の足掻き」と言わんばかりに、粛正中に飲むために用意した"水筒の中身"を、「スッポンの生き血」に変えて神殿を出た。
なお……彼の部下が地球から調達してきたスッポンは、そこら辺の川で直接釣ったものであり、適切な泥抜きがされておらず臭い。
そして衛生管理も酷かったが、闇神は毒をガブ飲みしても全く効かないくらい体が強いので、スッポン料理(笑)を食った程度じゃ腹は壊さなかった。
もちろん、味はお察しである。
読んでくださり、ありがとうございます!
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






