720話 平和すぎて頭トロ〜ン
〜メグミside〜
「はい、どうぞ〜。見た目はグロテスクだけど、実は食べると美味しいスッポン鍋ですよ〜。今回のは、市場で買ったメチャ新鮮なやつ! さぁ召しあがれ!」
「「「「「「「いただきます!」」」」」」」
サーシャが慣れた手つきで作ってくれたスッポン鍋を、コタツで暖まりながらいただき、完食後は「生き血ジュース」でさらに元気になる。
僕は子供舌だから、「スッポンの生き血」はリンゴジュースで割らなきゃ飲めないんだけど、こういうのが好きなマサルは、そのまま何杯も一気飲みした。
「じゃあ次は、コッチの世界のスッポン……デリシャス・タートル鍋をどうぞ〜! 異世界のスッポンと食べ比べてみよう♪」
「「「「「「「おぉ〜〜!」」」」」」」
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デリシャス・タートル
ランク:B
詳細:捕獲難度が高く希少なモンスターだが、一口食べるだけで蕩けるほど美味いため、富裕層の間で高値で取引されている。
古の勇者が「スッポン」と名付けて、色を嗜む前に好んで食べたことでも有名。
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生息場所が限られているうえ捕獲難度が高く、自販機に金さえ入れれば手に入るスッポンより、はるかに入手困難だけど……
一応この世界にも「"スッポン"そっくりのモンスター」は存在するため、次はそれをいただき、贅沢な食べ比べをすることに。
「うん。こっちも普通に美味い! マサルはどう思う?」
「そうだなぁ〜。身が分厚いせいで若干ダシの染みが足りねぇけど、元々の味はそっくりだと思う。圧力鍋とか使えば、マジで違いが分からなくなるぞ」
自販機で買えるスッポンとデリシャス・タートルの違いは、サイズ感と入手難度だけであり、味の面では元日本人のマサルも"大差ない"と認めた。
つまり……デリシャス・タートルの養殖に成功すれば、将来……僕の自販機を日本に置けるようになったとき、スッポンビジネスで大儲けできるということ。
現時点では妄想同然の話だけど、カルマの<コマンダー>ギフトもSランクになったし、カタログスペック的には可能なので……
闇神を倒した後、平和になった世界で金を稼ぐ手段の一つとして、現段階から準備しておきたい。
「スッポンビジネスもいいけど、人生ゲームで"大富豪になった気分を味わう"のも楽しいよ〜。皆、車をスタート位置まで戻して! もう一回やろう♪」
リアル世界での金稼ぎばかり考えていた僕とは違い、モンティート先輩達は公私を分けて、子供のように人生ゲームで遊び大騒ぎしている。
「はい、スティーブ君。約束手形4枚ね〜」
「…………僕、ゲームの中でも借金まみれなんですけど」
リアル世界だけでなく、先輩に巻き込まれて遊び始めた人生ゲームでも、微妙な職業についたあと、運悪く大量の出費イベントに襲われ……
場の約束手形が足りなくなるほど借金を重ねて、債務者ゲームに切り替わってしまったスティーブはともかく、他の参加者はおおむね楽しそうだ。
「見て、僕こんなにお札を貰ったの! 今回は僕の勝ちだよね?」
「ふふふっ。モンティート先輩、いい歳して成金感を出していると、次やったときに集中攻撃されちゃいますよ! というか、私は次狙います!」
「そんなぁ!?」
札束のオモチャをピラピラさせるモンティート先輩、<農民>同盟の紅一点であるアスタリア先輩共に、「リアルお金持ち」だから……
「偽物のお札なんかじゃ刺激が足りないかも」と思ったけど、案外楽しめるものなんだね。
たしかに自腹投資と違って、「オモチャの紙」を不動産や株に投資して稼ぐだけだから、プレッシャー皆無だし……
"止まったマスの指示"以外で理不尽な目に遭うこともないので、プライベートのお遊びとしては丁度いいのかもしれない。
「ほのぼのですね〜」
「そうだね〜。ここ最近大変だったし、ずっとコタツでみかんを食べながら、こうやって人生ゲームしていたいよ」
「ですね〜」
腹いっぱいになったので僕もゲームに混ぜてもらったのだが、リアルと比べるとあまりにも平和すぎて、脳が緊張感をなくしトロ〜ンと溶けた。
本来、「代わり映えしない人生」に飽きた人々が、刺激を求めて遊ぶために、開発されたはずの人生ゲーム。
それが「メチャクチャ平和! こんな人生がいい!」となってしまう現状に、多少思うところはあるけど……仕方ないよね、それが僕等の運命だもん。
「ところでモンティート先輩。まだ下僕魔王は150体ほど生き残っているんですよね? 其奴等は喰わなくてもいいんですか?」
「うん。決まったルールに従っておく方が、最大票数をもつ僕達への反発も少なくなるし、構造改革を求めるクーデターも起きにくい」
「ですね。私とアスタリア先輩で選別したから……現在残っている元神は、闇神がステータスの没収処理をミスらず、全ての力を奪われた"抜け殻"ばかりだし」
たしかに。
よくよく考えると、「サーシャ達が選別してくれた後の"残りカス"」が現存している150体なのだから、そのスペックも"お察し"だよね。
それに……現実を直視したくはないけど、元中級神のポイ捨てが始まってしまうと、また怒涛の殺処分生活に戻るわけで……
そのとき外野から「ルールで決まった数より少ないし、もう少し様子を〜」云々言われぬよう、下僕魔王の数は150体ギリギリを維持しておく方がいい。
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
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作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






