715話 メグミは現実を突きつけられる
〜メグミside〜
僕がサーシャに搾られて干からびている間に、カルマの<コマンダー>ギフトがSランクになり、彼は地獄の修行から解放。
Aランクへのランクアップでは望まれた機能を引けず、急遽Sランクに到達するまでシゴかれる事が決定した、"不運君"だったのだけど……
無事、死ぬ前にルノーブル先輩の眷属モンスターから肉体を返却され、半日ほどで意識を取り戻すことができた。
現在は、修羅の世界を経験しすぎたことによる絶望で半分廃人となり、ボーッと土壁を眺めながら精霊による治療を受けているけど……
先輩いわく「この程度なら余裕で回復する」そうなので、カルマ配下のモンスター達が主人の様子を見て、トラウマを刻まれるリスク以外は危惧していない。
「(だって、僕の方がずっとヤバかったんでしょ? なら大丈夫だよ。僕、このとおり元気?に生きているし。まだ自力じゃ立てないけど)」
肉体的な治療は精霊達がやってくれるものの、カルマには"メンタル面のケア"も必要ということで、ナーティー先輩が動いた。
誰かがビデオカメラで撮った「僕のトリップ映像」をカルマに見せて、ショック療法で無理やり復活させにかかったのだ。
『ノルマ! ノルマ! ノルマ! ノルマ! 数字は人権! 数字は人格! ノルマを達成せしものは神であり、未達成者は"死"あるのみ!! ノルマ! ノルマ! ノルマ! ノルマ!』
『24時間・365日、僕の存在は働くためにある! 日々ノルマをこなして組織に貢献することこそ、僕の本望であり存在意義なのだ!!』
「(うわぁ〜、トリップ中の僕ってこんなにイかれていたんだ。でも流石に、こんな映像ごときであの状態のカルマが復活するわけ……)」
「ギャアァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!? お願いですっ! どんな修行でも受け入れますから、メグミ先輩みたいにするのだけは止めてください!」
復活したし。
つーか、なんだよ……ちょっとイっちゃったとはいえ、そこまで嫌悪する必要ないだろう。
ルノーブル先輩の眷属に肉体を乗っ取られて、本物のゾンビみたいになっていたお前も、大概だぞ。
<−−− シュウゥゥゥゥ…… −−−>
「ただいま〜。皆聞いて。朗報です! カルマ君に続いて、スティーブ君も<水の職人>ギフトがSランクになったよ! はい、これが説明ページのコピペ」
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〜水の職人(Bランク時点)〜
HPを半分捧げる代わりに、1日1つ水属性のアイテムを生み出すことができる能力。
アイテムのレア度はギフトランクによって変わり、ギフトランクは能力者の職業ランクと相関する。
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〜水の職人(Sランク)〜
HPを最大量の50%捧げる代わりに、水属性のアイテムを生み出すことができる能力。
ポーションを飲んで回復し、繰り返しアイテムを生み出すことも可能。
ただし……たとえHP残量が50%以下であっても、この能力を行使すると「最大量の50%にあたるHP」を奪われるので、回復量が足りない場合、HP枯渇による死に至る。
アイテムのレア度はギフトランクによって変わり、ギフトランクは能力者の職業ランクと相関する。
Sランクの場合、最低でも国宝級のアイテムを生み出すことができ、運が良ければ神話級のアイテムが生まれることも。
よりレア度の高いアイテムを求める場合、生み出すアイテムに細かな条件をつけず「100%お任せ」にすることで、僅かだが出現率を上げることができる。
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ふむ……生み出せるアイテムのレア度が上がるのは当然として、「1日1個」の制限が外れたのがデカイ。
これならアイテム生産担当として朝から晩までポーションを飲み、アイテムを生産することで、「30個/日」は作れるだろう。
その代わり……常時ポーションでお腹タプタプだから、戦闘要員としてはカウントできないうえ、本人はオムツ強制着用で地獄を見るけど。
とはいえ、地獄なんて今回の修行で嫌ってほど味わっただろうし、一日中トイレにこもって生きるよりはマシなので、諦めて生産マシーン化するはずだ。
「スティーブ君は、カルマ君よりずっとヤバくて詰みかけていたけど、メグミ君のトリップ映像を見せたら正気に戻ったよ」
ちょっと待ってよモンティート先輩、スティーブもですか!?
「スティーブ君が最期の山場を越えられたのは、メグミ君が自ら"より酷い状態"になって、反面教師として彼を導いてくれたおかげ。本当にありがとう!」
「ドウイタシマシテ」
なんだろう……お礼を言われるのって基本「嬉しいこと」のはずなのに、ものすごく世の不条理を感じる。
ステータスの称号欄に載ってしまった、「見習いたくない先輩No.1」という珍妙な文字列を見たときは、「何かの冗談だろ?」と思ったけど……
この感じ、二人ともガチで「僕のトリップ映像」を反面教師にしてやがったな!
読んでくださり、ありがとうございます!
この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)
モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!
作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)






