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714話 挫けそうなときの特効薬


〜スティーブside〜




 …………あぁ……また……意識が…………浮上……して……きた…………。


 ……起き……た…………とこ……ろ……で……絶望感……しか…………ない……のに…………。



「(……ぅぅ、やっぱり身体が動いている。筋肉痛とMPの使いすぎで、怠くてもう指一本動かしたくないのに……。それでも、身体が動いちゃう)」


 先輩が言っていた、「ナーティーの眷属が自動でやってくれるから、最悪意識を飛ばしてもいい」って、真面目に"最悪の向こう側"へ行っていない?



 たしかに気絶している間も、絶えずレベルアップのために身体を動かしてくれるし、寝ていても関係なく修行できるから効率的ではある。


 だけど己の意思に関係なく延々と肉体を酷使され、食べ物は「マナポーションで溶かした固形食料」のみ。



 排泄も、「マジックバッグ機能がついたオムツ」とスカベンジャースライムを強制的に履かされ、自分が「修行するためのマシーン」になっているのは……


 時折意識が浮上してボヤッと理解できる程度でも、絶望感しかないし、ある種の拷問を受けさせられている気分だ。



「(そもそも僕、何故こんな辛い思いをしてまで強くなりたいとか考えたんだろう? もう辞めたい、逃げたい……よ…………)」


 やる前に何枚も同意書を書かされ、そこに迷いなくサインした過去の自分を思い出して、心底あの時の自分を殴りたくなる。






<−−− ガチャッ! −−−>


『う〜ん、やっぱり心が折れかけている。これは一発テコ入れが必要だな』


 この声は、モンティート先輩?



 お願いです、もう解放して!!


 ナーティー先輩の眷属に指示を出しているのは、貴方ですよね!?


 もう限界なんです、助けてください!!



<−−− カチカチカチッ…………キュィーーンッ! −−−>


『……ルマ……ルマ……ルマ……』



 えっ、何?


 何が始まるの?



『ノルマ! ノルマ! ノルマ! ノルマ! 数字は人権! 数字は人格! ノルマを達成せしものは神であり、未達成者は"死"あるのみ!! ノルマ! ノルマ! ノルマ! ノルマ!』


 うわあぁぁ〜〜〜〜〜っ、この悍ましいかけ声はメグミ先輩のやつ!?



 モンティート先輩・ナーティー先輩にシゴかれずとも、自らノルマ・マシーンとなり人格まで豹変し、マゾヒスト街道を突っ走った見習いたくない先輩!


 ノルマ達成後に帰ってきたと思ったら、奇声をあげながらノルマ踊りをして、完全に洗脳入ってイっちゃってる妄言を垂れ流していた、あの……。



『24時間・365日、僕の存在は働くためにある! 日々ノルマをこなして組織に貢献することこそ、僕の本望であり存在意義なのだ!!』


 ヤバイ、ブラックな宗教よりも悍ましい音声が流れてきた!



 そして目の前の巨大モニターに、メグミ先輩のトリップ映像が映し出され、真っ当だった頃の先輩と全然違うその哀れな姿を見て、背筋が凍る。


「(どうして白目をむいてヨダレを垂らしているんだ!? というか、何だよ……その糞ダサい"ノルマ鉢巻き"は! 黄色と黒って色のセンスまで酷い!!)」



 嫌だっ……メグミ先輩みたいに自発的にノルマ・マシーンになって人として終わるくらいなら、まだ幽霊に肉体を乗っ取られている方がマシ!


 お願いですモンティート先輩、ワガママ言わないから「お前もメグミと同じ道を辿れ」とか、残酷すぎる命令だけは勘弁してください!



 肉体乗っ取られレベリング、歓迎です!


 先輩方が僕等のためを思ってシゴいてくれているのも、理解しています!


 だから、お願いですから「メグミ・ロード逝き」だけは勘弁を……!!






<−−− パッパラ〜♪ −−−>


 あれっ、この脳内ファンファーレは……。



『おぉ、遂にスティーブ君も壁を越えたか! やっぱりメグミ君の衝撃映像は、どんな特効薬よりも効果があるね。潰れそうだったのが一発で持ち直した』


 …………先輩ィ……………………。



『そうはいっても限界スレスレだから、もう解放してあげて。"もうちょい"とか言って鍛えていたら、メグミ効果が切れた瞬間闇落ちしそうだ』


『かしこまりました。では、スティーブを解放いたします』



 あっ、肉体の制御が……半減していた感覚も戻ってくる!


 この瞬間をどれだけ待ち望んだことか、先輩……本当にありがとうございます!


 …………あれ?



『しまった。スティーブ君、意識あるじゃん。この状態で完全解放したら、肉体を酷使しすぎた反動が全部本人にいって、マジで精神壊れるかも』


「ギャアァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!?」



 これまで感覚の大部分を奪われて激鈍状態になっていたからこそ、鬼修行で肉体を酷使させられても耐えられていたのが、全て鮮明になってしまい……


 僕はあまりの苦痛とショックで発狂し、筋細胞やマナを流す経絡系がズタズタになっているにも関わらず、本能のままに暴れまわり傷を悪化させた。



 でも、そんな中でも思っていたんだよ。


 モニターに映る「トリップ状態で白目をむいた、ヨダレ垂れ笑顔でダンスをするメグミ先輩」より、はるかに自分は恵まれている……と。

読んでくださり、ありがとうございます!


この小説を読んで面白いと思ってくれた、そこの貴方(≧∀≦)

モチベーションUPの為の燃料……ブクマ・評価・感想・レビュー、待ってます!!

作者はお豆腐メンタルなので、燃料に引火させるのはやめてね(・Д・)

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― 新着の感想 ―
1日100個くらいは作れないと、泣けるな Sランクの製造物が、楽しみだ(目をそらしながら) コピペのような製造法とか、あるものを魔改造するとか ゴーレムやオートタマ、眷属誕生? Bでも1日1個しばり…
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